土地売買契約書とは?契約内容や流れ・作成時の注意点を解説

更新: 2023-03-01 17:58

「土地売買契約書」とは、不動産の売買取引において、売主から買主に不動産(主に土地)の所有権を移転する際、金銭を支払う前に交わす契約書のことです。今回は、「土地売買契約書」の内容や作成時の注意点などを中心に解説していきます。土地売買を行う予定がある方は、ぜひ参考にしてみてください。

  • 目次

土地の売買を行う際には、売主と買主がスムーズに契約を締結できるように「土地売買契約書」を交付します。
「土地売買契約書」は専門的な用語が多く、理解することが難しいと感じる方も少なくはありません。しかし、きちんと内容を確認せずに署名をしてしまうと、思わぬトラブルに繋がる可能性があるため注意が必要です。
今回は、「土地売買契約書」の内容や作成時の注意点などを中心に解説していきます。

土地売買を行う予定がある方は、ぜひ参考にしてみてください。


「土地売買契約書」とは?


「土地売買契約書」とは、不動産の売買取引において、売主から買主に不動産(主に土地)の所有権を移転する際、金銭を支払う前に交わす契約書のことです。
他方で、宅地建物取引業法37条1項では

「宅地建物取引業者は、宅地又は建物の売買又は交換に関し、自ら当事者として契約を締結したときはその相手方に、当事者を代理して契約を締結したときはその相手方及び代理を依頼した者に、その媒介により契約が成立したときは当該契約の各当事者に、遅滞なく、次に掲げる事項を記載した書面を交付しなければならない。」

引用:(e-GOV)宅地建物取引業法
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=327AC1000000176

とされており、これは37号書面といわれています。

売買契約と「37条書面」は混同されがちですが、基本的に「37条書面」は「土地売買契約書」とは別のものです。
もっとも、37号書面に掲げる事項が記載された契約書であれば、この契約書をもって37号証の書面とすることはできます。
宅建業者によって交付が義務付けられている「37条書面」に記載が必要な事項は、売買契約書の内容と重複する部分も多いため、売買契約書と37条書面を兼ねて交付されるケースも少なくはありません。

土地などの売買は取引金額が大きいため、トラブルやすれ違いを防ぐためにも必ず契約書を取り交わすことが大切です。基本的には契約書に記載されている金額で、買主が売主から買い取ることを想定しています。

関連リンク
37条書面とは?その内容と35条書面との違い

「土地売買契約書」は誰が作成する?

「土地売買契約書」の作成には専門的な知識が必要となります。そのため、土地売買の際には個人間のやり取りであった場合でも、不動産会社に仲介してもらうことが一般的です。
宅地建物取引主任者の資格をもつ専門家に間に入ってもらうことで、スムーズに取引を行うことができます。

なお、仲介を依頼する場合、「土地売買契約書」は不動産会社が作成してくれるため、売主や買主が作成する必要はありません。

仲介業者を挟まない場合は個人で作成しなければならない

仲介業者を挟まずに土地売買契約を結ぶ場合にも、契約書は作成する必要があります。
不動産会社に仲介を依頼しない場合には、売主もしくは買主のどちらかが「土地売買契約書」を作成しなければなりません。

専門的な知識がない人が作成するとミスが生じやすいため、個人で契約書を作成する場合には弁護士などの専門家に依頼するという方法もおすすめです。

「土地売買契約書」とは?:仲介業者を挟まない場合は個人で作成しなければならない


「土地売買契約書」の必要性


土地の売買を行う上で、「土地売買契約書」は欠かせないものです。
「土地売買契約書」の作成を依頼する場合は、売主や買主に不動産取引の知識や経験がなくても心配することはありません。ただし、作成された「土地売買契約書」の内容はしっかり読み込んでおく必要があります。
ここからは、「土地売買契約書」の必要性について解説していきます。

ルールを明確にし、トラブルを回避する

契約後に「話が違う」「このようなことは聞いていない」という「言った・言わない」等のトラブルを防ぐためにも、土地売買契約書は重要な役割を担っています。
「土地売買契約書」には基本的な記載事項に加え、特別注意すべきことがある(土地の形状や立地が複雑である等)場合には、それらを明記する必要があります。

土地の売買は高額な取引になるケースが多いからこそ、お互いが安心して契約ができるようにルールは明確にしておきましょう。
なお、土地売買契約書に記載する基本事項に関しては、後ほど詳しくご説明します。

契約の証拠を残す

また、「契約したことを証拠として残す」という目的においても、契約書は重要な役割を果たしています。
口約束だけでは、どのような土地を・いくらで・誰から誰に売買したのかということが証拠として残らないため、後から誰が確認しても分かるように書面として残しておくことが大切です。
さらにそこに契約者全員の署名・捺印を残すことにより、契約書に記載された内容で契約が成立したことが証明されます。


「土地売買契約書」に記載すべき内容


土地売買契約の場合、金額・日付け・不動産の所在場所などの細かい部分は変える必要がありますが、
契約書に記載すべき基本項目は共通していることが多いです。
また、前項でも少し触れましたが、土地の形状や立地に特別な規定がある場合にはそれらもしっかり含める必要があります。

必要事項が記載されていないと契約後のトラブルにも繋がり、場合によっては損害賠償などが発生するケースもあるため、注意が必要です。
ここでは、「土地売買契約書」に記載する基本項目について解説します。一般的な内容を理解しておけば応用することもできるので、ぜひ作成時の参考にしてみてください。

【宅地建物取引業法37条1項】


宅地建物取引業者は、宅地又は建物の売買又は交換に関し、自ら当事者として契約を締結したときはその相手方に、当事者を代理して契約を締結したときはその相手方及び代理を依頼した者に、その媒介により契約が成立したときは当該契約の各当事者に、遅滞なく、次に掲げる事項を記載した書面を交付しなければならない。

引用:(e-GOV)宅地建物取引業法
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=327AC1000000176

「宅地建物取引業法37条1項」にはこのような規定があり、次のような基本項目の記載が求められています。

基本的な記載項目

  • 契約当事者の氏名(法人の場合は会社名)と住所
  • 売買される土地の所在、地番その他当該宅地を特定するために必要な表示
  • 土地の代金、支払い時期、支払い方法
  • 土地の引き渡し時期
  • 土地の所有者を変更するための「移転登記」を申請する時期
  • 土地の代金以外に金銭の授受に関する定めがある時には、金額・授受の目的・時期などを明確に記載
  • 契約の解除について(解除の条件や内容について明確に記載)
  • 契約違反があった場合、損害賠償や違約金に関する内容
  • 支払い時に金銭貸借のあっせんに関する定めがある場合に、金銭の貸借が成立しないときの措置(ローン審査が通らなかった時の措置)
  • 天災や事故による損害があった場合、保障や支払いについての内容
  • 引き渡し後に契約内容とは違う場合の契約不適合責任等の措置
  • 租税公課の負担がある場合、その内容


上記が基本的な記載事項です。「土地売買契約書」作成時のポイントや注意点については、以下で詳しくご説明します。

契約当事者双方の署名・捺印が必要

契約に合意したことを証明するために、「土地売買契約書」には契約当事者(売主と買主)双方の署名と捺印が必要です。
土地売買契約書へ捺印する場合は一般的に、印鑑登録をした「実印」を使用します。

不動産売買のような高額な取引の場合、印影を悪用されるリスクが考えられるため、細心の注意が必要です。役所に届け出をした「実印」を使用すれば、本人が契約に合意したという証明ができます。

なお、「土地売買契約書」への署名・捺印は法律で定められているわけではありません。
しかし、契約後のトラブル回避と、双方に不利益のないスムーズな契約を結ぶためにも、契約書には署名・捺印を行うことが基本であると認識しておきましょう。

「原本を2通作成する」「原本をコピーする」方法のどちらが安心?

「土地売買契約書」を取り交わす場合、売主と買主それぞれが1通ずつ契約書を保管しておく必要があります。
原本をコピーしたものでも原本と同等の効力があるため、どちらか一方がコピーを保管していても法的には問題ありません。

しかし、「原本を持っていた方が安心する」と感じる方も多いため、基本的には原本を2通作成して当事者それぞれが保管しておくことが、最も最適な方法と言えます。
その際には、作成する契約書全てに契約当事者全員の署名・捺印が必要です。

「土地売買契約書」に記載すべき内容


「売買契約書」と「重要事項説明書」の違い


土地だけでなく、建物を含む不動産売買契約を結ぶ場合、宅地建物取引業者は「契約書」の他に、宅地建物取引業法35条で「重要事項説明書」を交付して説明することが義務付けられています。
「重要事項説明書」には契約に対する重要な事項が記載されており、宅地建物取引士の署名・捺印がされた書面を確認しながら、口頭で説明が行われます。
「契約書」と重複する内容も多数ありますが、どちらも土地の売買には欠かせない書面です。
なお、宅地建物取引業法の条文番号から、重要事項説明書は「35条書面」、売買契約書は「37条書面」とも呼ばれています。


「土地売買契約書」作成時のポイント・注意点


「土地売買契約書」には記載すべき基本項目があることは前項でもお話しましたが、契約書に記載漏れやミスがあると、後々大きなトラブルに繋がる可能性があります。場合によっては損害賠償が発生するケースもあるため、注意が必要です。

ここからは、「土地売買契約書」を作成する際のポイントや注意点について解説します。しっかりと内容を理解し、スムーズな契約締結を心掛けましょう。

【1】「売買物件の表示」に記載する土地情報は正確に!

対象となる土地の情報は、「登記簿謄本」と照らし合わせながら正確に記載します。
住所は簡易的ではなく、番地や地目まで記載する必要があります。また、土地面積の情報も忘れてはいけません。

【2】宅地建物取引業法に基づいた手付金額にし、趣旨も明確にする

土地売買契約のように大きな金額が動く取引の場合、契約締結と同時に買主が売主に対して総額の一部を支払うよう定めることができます。これを「手付金」と言い、売買契約が締結した証拠となります(証約手付)。
手付金の授受がある場合には、その内容・金額・趣旨等を土地売買契約書に明記しましょう。

個人間での契約の場合、一般的な手付金は土地の代金の10%程度と言われています。しかし、買主・売主双方の合意があれば、この金額を引き上げることも可能です。
ただし売主が不動産業者の場合には、宅地建物取引業法の規定により、代金の20%を超える手付金の設定はできません。

なお、手付金の授受が完了した後にトラブルが発生するケースについても考慮しなければなりません。契約締結後に解除したい場合や、債務不履行が発生した場合の手付金についても明確にしておくことが大切です。

【3】支払い方法や支払日は明確に記載する

土地の代金は高額であることが多いため、買主が売主に一括で支払うというよりは、「分割払い」や「ローン払い」を選択する方も少なくはありません。
前項で「手付金」についてご説明しましたが、代金の一部を「手付金」や「頭金」として支払った後、買主本人またはローン会社から残金が一括で支払われるというケースが一般的です。

特に代金が分割して支払われる場合には、それぞれの支払い方法と期日を全て明確に設定する必要があります。
支払い方法や期日の記載がないと、万が一代金が支払われなかった時に買主に請求することが難しくなってしまうため、記載漏れがないか契約前にしっかり確認しておきましょう。

【4】契約金額に応じた収入印紙が必要

「土地売買契約書」を交付する場合、契約金額(土地の代金等)に応じた収入印紙の貼付けが義務付けられています。
契約内容によっても異なりますが、印紙税法では「収入印紙の代金は売主と買主の双方が平等に負担する」と定められています。そのため、契約書に特別な記載がなければ収入印紙代は買主と売り主で折半することが一般的です。

なお、契約金額に応じた印紙税の相場は以下の表をご参照ください。
(※令和6年3月31日までの間に作成された契約書に関しては、印紙税の軽減措置によって税率が引き下げられています。)

土地売買契約書の収入印紙
引用:(国税庁)「不動産売買契約書の印紙税の軽減措置」
https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/inshi/08/10.htm

【5】所有権移転のタイミングや危険負担を明記し、トラブル回避

土地売買契約書には、土地の所有権を売主から買主に移転するタイミングも明記する必要があります。

上記したように、契約締結後すぐに代金が支払われるというわけではありません。代金未払いのまま所有権を移転してしまうと、万が一買主が支払いを拒否した場合に売主は土地を失ってしまうことになります。
そのようなトラブルを避けるためにも、「代金が全額支払われるのと同時に、所有権を移転する」等、売主の不利益にならない条項をしっかりと盛り込んだうえで、代金を全額受領したことを確認したうえで買主に所有権移転に必要な書類を交付する等の対応をしておきましょう。

また、契約締結後に天災や予期せぬ事故等で土地がなくなってしまった際に、売主と買主のどちらが責任を負うかという「危険負担」についても記載しておく必要があります。
契約書に「引渡し完了と同時に、危険負担は売主から買主に移転する」という特記があった場合は、引き渡し翌日に土地を失ったとしても、買主は売主に土地を返却することができません。
このように「危険負担」は作成者に有利に記載されていることが多いため、契約時にはしっかり目を通しておきましょう。

【6】契約不適合責任について理解しておく必要がある

土地の引渡後にに何かしらの不備や欠陥があった場合には、売主がその責任を負わなければなりません。これを「契約不適合責任」と言います。
契約不適合責任は、引き渡し日から1年以内といった責任を負う期間を設定することが一般的です。

なお、万が一契約不適合があった場合には、買主が売り主に対して「契約の解除」「減額請求」「損害賠償請求」などを行うことができます。
契約後のトラブルを回避するためにも、契約不適合責任についての詳細は明確に記載しておくことが大切です。

関連リンク
これって契約不履行?具体例と発生時の対処方法を解説

【7】契約違反による解除・損害賠償等も規定する

契約不適合責任だけでなく、買主と売主のどちらかが契約違反をした場合に対する罰則に関しても定めておく必要があります。
契約締結後にどちらかの契約違反により債務不履行となった場合には、相手に対して「契約解除」や「損害賠償」の請求ができるというものです。

契約違反による解除・損害賠償等も規定する


2022年5月から「土地売買契約書」の電子契約が解禁!


これまでは書面での契約が義務付けられていた土地売買契約ですが、2022年5月に宅地建物取引業法が改正され、「電子契約」が可能になりました。
土地売買に関わる「売買契約書」「重要事項説明書」などの電子交付が認められ、契約書の作成から締結までを対面ではなくオンライン上で行うことができます。

電子契約のメリットは?

電子契約が解禁されたことによる主なメリットは次の2点です。

1.コスト削減

これまで契約書作成時にかかっていた紙代や郵送費用、交通費や人件費などは、電子契約への以降によって大幅に削減することができます。
さらに電子契約の場合、収入印紙が必要ありません。収入印紙代だけを考慮しても、大きなコストダウンが見込めます。

2.契約書の管理がしやすい

「土地売買契約書」は、10年以上の単位で長期保存しておく必要がある大切な書類です。
保管場所の確保や、欲しいものをすぐに探すことが困難だった契約書も、電子化することで一気に管理がしやすくなります。
時間・手間・コスト面を考慮しても、電子化によるメリットは非常に大きいと言えるのではないでしょうか。


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また、契約書の作成から締結までをオンライン上で行えるシステムとなっていますが、取引先に『契約大臣』を登録していただく必要はなく、相手方に負担をかけるご心配もありません。
コスト・手間・人件費等を大幅に削減できる「電子契約」は、今後ますます一般化していくことが予想されます。
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