契約不履行とは、契約により発生した義務を、当事者のどちらか一方が正当な理由がないのにも関わらず果たさないことを意味します。この記事では「契約不履行」の具体例や対処法について解説するので、それぞれのケースに当てはめて参考にしてください。
取引先とのやり取りを進める中で、先方都合によって契約が果たされないケースもあります。
そんな時、今の状況が「契約不履行」にあたるのかどうかの判断で迷う人もいるでしょう。
この記事では「契約不履行」の具体例や対処法について解説するので、それぞれのケースに当てはめて参考にしてください。
最初に、契約不履行についての知識を深めておきましょう。
契約不履行とは、契約により発生した義務を、当事者のどちらか一方が正当な理由がないのにも関わらず果たさないことを意味します。
契約によって生じた義務を当事者それぞれが果たすことを「契約の履行」といい、これと逆の意味の言葉となります。
契約不履行について知るには、「契約」についての知識も必要です。
契約とは、二者以上の当事者がそれぞれに果たすべき義務を約束することを意味します。
この契約があってこそ、契約不履行という状況が生まれるのです。
契約は口約束だけでも成立しますが、口頭のみのやりとりでは後々トラブルになりやすくなります。
「言った言わない」の水掛け論になることも多く、契約した証がどこにもないためです。
契約不履行という状況は口約束による契約でもあり得ますが、契約内容が明確に残っていない以上トラブルが長期化しやすいでしょう。
これを避けるためには、契約書の作成が効果的です。
契約書の作成は義務ではありませんが、なかには契約書を作成しなければならない契約も存在します。
債務不履行は、契約の元で請求権を持つ「債権者」に対し、その履行の義務を負う「債務者」が、その義務を自ら履行しないことであると、民法によって定義されています。
契約不履行も基本的には同じ意味で使われますが、法律では「契約不履行」という言葉は使われず「債務不履行」が使用されます。
契約不履行には、「履行遅滞」「履行不能」「不完全履行」という3つの種類があります。
契約で取り決めた履行期限を過ぎても債務者が債務を履行しないことを、「履行遅滞」といいます。
ポイントは、債務者の故意や過失によって「履行できるのに履行が遅れていること」です。
この要件にあてはまるケースは、「履行遅滞」であると考えられます。
たとえば、売買契約で商品を受け取ったのに、故意に代金を支払わないなどが「履行遅滞」にあたります。
債務者の故意や過失が原因で契約の履行が不可能になることを、「履行不能」と呼びます。
「履行遅滞」との大きな違いは、「履行が不可能であること」です。
売買契約を例に取ると、代金を受け取った後、受け渡すはずだった一点物の商品を落として壊してしまった、などが該当します。
上記にあてはまるケースは、「履行不能」であるといえます。
契約は履行されたものの、債務者の故意や過失によって履行が完全ではなかったケースが「不完全履行」です。
不完全履行では、「契約内容と履行内容を比べた場合に不備や不足があること」が特徴です。
これは債務者の故意や過失ではなく、契約内容の認識のズレによって起こる場合もあります。
たとえば売買契約において、納品された本に乱丁があった、納品された本の内容が違ったなどのケースが「不完全履行」となります。
上記の要件にあてはまる場合は、「不完全履行」と考えられます。
実際に契約不履行があった際には、下記4つのどれかで対処することになるでしょう。
それぞれの内容を、ご紹介します。
契約した内容の履行を、再度完全な形で求める対処法です。
「追完」とも呼ばれ、これにより契約の履行となることが特徴です。
たとえば不完全履行で「納品された本の内容が違った」のならば、正しい内容の本を納品し直してもらうことになります。
ただし、履行不能な場合は、完全な履行を求めることはできません。
裁判所を通じて、強制的に契約を履行させる方法です。
強制履行は、債務者が契約を履行できる状態である場合のみ可能な対処法なので、履行不能のケースでは適用できません。
強制履行には、3つの種類があります。
ものや金銭の引き渡しが必要な場合は、「直接強制」を行います。
履行すべき契約の内容に代替性があるケースでは「代替執行」が適用され、本来の契約とは違った形であっても結果的には契約を履行できる状態にするのが特徴です。
金銭の支払い以外の場面では「間接強制」を用いて、契約相手に履行を強制します。
たとえば騒音問題により「夜8時以降はギターを弾かない」と契約したにも関わらずこれが履行されないケースでは、「違反する度に10万円を支払う」などとすることで契約の履行を目指します。
契約不履行を理由に、契約で定めた解除要件に基づいて、契約を白紙撤回するのが「契約解除」です。
これにより契約内容は無効となるため、すでに履行された債務については、債務者に返還しなければなりません。
履行不能の場合には一方的に契約解除が可能ですが、履行遅滞では催告してからの契約解除となります。
契約不履行により損害が発生した場合には、「損害賠償請求」をするのも一つの手です。
ただし、損害賠償請求をする際には、下記3つの要件を満たしている必要があります。
損害の直接的な原因が契約不履行である場合のみ、損害賠償請求が可能です。
契約不履行に基づく損害賠償の請求権には、時効があります。
上記の時効を過ぎると請求権は消滅する点に注意が必要です。
ここからは、実際の契約不履行の具体例をご紹介します。
不動産売買契約を締結すると、買主は代金を支払う責務を負い、売主は不動産を引き渡す責務を負うことになります。
これにも関わらず約束の日になっても物件が引き渡されない場合、契約不履行となります。
引き渡すはずの物件を、売主の過失による火事で焼失させてしまい引き渡しができないなどのケースは「履行不能」となり、損害賠償請求が行われるケースもあるでしょう。
引越業者には、引越作業を請け負うにあたって物を壊さないように最善の注意を払う責務があります。
これを怠り物を破損してしまった場合、「不完全履行」として契約不履行となります。
破損した物についての損害賠償請求が行われ、これによって解決するのが一般的です。
また、引越業者が引越日に現れず作業しなかった場合は「履行遅滞」、指定した引越日に作業ができなければ意味がないのに作業しなかったケースでは「履行不能」と判断されることもあります。
契約不履行を防ぐためには、「契約は書面にして残す」ことと「具体的な内容の契約書を作成する」ことがポイントです。
口約束だけでも成立する契約ですが、内容を明確に残しておくためにも契約書を作っておくことが大切です。
契約書があれば、契約内容を双方がいつでも確認できます。
言った言わないの水掛け論も回避でき、契約に関するさまざまなトラブルを防ぐことができるでしょう。
また、契約書があれば、万が一契約不履行があっても対処しやすくなります。
契約書は、誰が見てもわかりやすい内容で作ることもポイントです。
表現が複雑で読む人によって解釈が異なるような内容では、契約する双方でも認識のズレが発生し、結果的に契約不履行につながるリスクがあるためです。
契約する内容や納期、金額などは特に具体的に記載し、トラブルに発展しにくい契約書に仕上げましょう。
契約書をゼロから作るとなると、何かと手間がかかるものです。
盛り込むべき内容を調べたり法律を調べたりする必要があるうえに、必要に応じて収入印紙を貼ったり署名捺印をしたりする必要も出てきます。
電子契約を取り入れると、これらの手間を大幅に減らすことができます。
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また収入印紙を貼る必要がなく印紙代もかからないため、業務負担の軽減とコストカットが見込めます。
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債務者の故意や過失によって発生するのが、契約不履行です。
これをできるだけ防ぐためには、事前に契約書を作成しておくことが重要となります。
契約書は具体的な内容で作成し、解釈のズレが起こらないようにすることも大切なポイントです。
「契約大臣」のテンプレートを利用して効率的に抜けのない契約書を作り、契約不履行を避けていきましょう。