電子データとは?紙の文書を電子化する理由、電子データの保存方法を解説

更新: 2023-07-07 17:07

デジタル化の促進に伴い、これまで紙媒体で取り交わしていた契約書・請求書・領収書などの書類を電子データ化する企業が増えています。この記事では紙の文書を電子データ化で保存する方法、そのメリット・注意点、電子帳簿保存法などについて詳しく解説します。

  • 目次

ビジネスシーンでは、契約書・請求書・領収書・名刺などの重要な書類を取り扱う機会が非常に多く訪れます。
従来は紙媒体で取り交わすことが当たり前だったビジネス文書ですが、デジタル化の促進に伴い、様々な情報を電子データ化する企業が増えてきています。

今回は、紙の文書を電子データで保存する方法をはじめ、電子化のメリットや注意点、電子帳簿保存法などについて詳しく解説します。
電子ファイルの取扱いに慣れていない方や、今後電子データを取り入れていきたいとお考えの方は、ぜひ参考にしてみてください。


電子データとは?


「電子データ」とは、紙媒体ではなくパソコンなどのコンピューター上で処理されるデータのことです。
また、書類や写真などの情報を電子データに変換することを「電子データ化」と言います。

これまで紙の書類をメインに取り扱ってきた企業の中でも、コストカットや業務効率化の観点から、近年様々な書類を電子データ化する動きが強まっています。


電子ファイルデータに用いられる「拡張子」とは?


一口に「電子データ」と言ってもその種類は多数ありますが、書類を電子データ化する際にはその書類に適した「ファイル形式」で保存するのが一般的です。

なお、ファイル形式には「拡張子」と呼ばれるものがあります。
拡張子とは、電子ファイルの種類を識別するために用いられる単語のことです。ファイル名の末尾に付いている「.pdf」や「.jpg」などの部分を指し、拡張子を見るとそのファイルの種類が分かるようになっています。


「ファイル」と「フォルダ」の違い

上記したように「ファイル」はデータそのものの名称ですが、「フォルダ」はファイルを格納する場所を指します。つまりフォルダとは、データを保存しておく入れ物のようなイメージです。

「ファイル」と「フォルダ」は混同されがちですが、全く異なるものなので違いをしっかりと理解しておきましょう。


電子ファイルデータの主な種類




ここからは、一般的に使用される機会が多い電子ファイルデータ《4種類》の特徴や違いと併せて、各ファイルデータの拡張子の名称についても解説していきます。


・プログラムファイル

「プログラムファイル」とは、特定のプログラムをインストールしてから起動するタイプのファイルのことです。
プログラムファイルは、アプリケーションを実行して開く形式であることから「実行形式ファイル」「exeファイル(エグゼファイル)」とも呼ばれ、データファイルとは対のものとされています。

「.exe」「.com」「.bat」などが代表的なプログラムファイルの拡張子です。


・テキストファイル形式

文字や記号などのテキストデータのみで構成されているファイルのことを「テキストファイル」と言います。
パソコンやタブレット、スマートフォンで利用できる「メモ帳(.txt)」などがこれに該当します。

また、主にインターネット上で開く機会の多い「PDF形式ファイル(.pdf)」や、表計算やアプリケーションソフト間のデータを交換する際に使用される「CSV形式ファイル(.csv)」などもテキストファイルの一部です。


・画像や動画のファイル形式

撮影した写真や動画、イラスト画像などを保存する場合にもいくつかのファイル形式があります。

スマートフォンやデジタルカメラなどで撮影した写真は、主に「JPEG形式(.jpg)」で保存されることが多いです。
イラストやアニメーションのファイルは「GIF形式(.gif)」、高画質に対応しており画質が劣化しない「ピング形式(.png)」など、種類ごとに分類されています。

また、デジタル動画のファイル形式は幅広い種類のものが存在するため、よく用いられるものを中心にご紹介します。
動画の場合、拡張子によっては再生できるデジタル端末(パソコンやスマートフォンなど)が限られることも多いため、他者へ共有する際には注意が必要です。

【有名な動画ファイル形式】

  • AVI(.avi)…Windows標準の動画ファイル形式
  • MOV(.mov)…Mac標準の動画ファイル形式
  • MPEG4(.mp4)…高画質ながらも圧縮率が高いファイル形式。対応している端末が多いため、一般的な利用度も高い
  • WMV(.wmv)…ストリーミング再生限定の動画ファイル形式。コピーガードが搭載されているため、動画配信サービスでよく利用される


・Microsoft Officeで利用できるファイル形式

「Microsoft Office」とは、ビジネス用のアプリケーションツールの総称で、ビジネスシーンで広く活用されています。

Word(.docまたは.docx)、Excel(.xlsまたは.xlsx)、PowerPoint(.pptx)、Outlook(.pst)など業務の効率化に役立つ様々なアプリケーションが搭載されているため、使用したことがあるという方も多いのではないでしょうか。


紙の文書を電子データ化するメリット




電子ファイルデータの種類について理解を深めたところで、ここからは紙の文書を電子データ化するメリットについて考えてみましょう。


ペーパーレスでコスト削減

まず、最も分かりやすいメリットとして「ペーパーレス化」が挙げられます。

紙媒体の書類には、用紙代やインク代など様々な経費がかかります。
さらに、ビジネスにおける重要書類の場合は保存義務があるため、増えていく書類を保管するための場所の確保も必要です。書類を電子データ化することで、紙やインク代のコスト削減だけでなく、書類の保管場所に困ることもなくなります。

このように、実質的な経費の削減に繋がるという点が大きなメリットのひとつと言えます。


紛失リスクの軽減

社内で書類の保管ルールをうまく共有できていなかったり、担当者が代わることで保管場所が分からなくなり、大切な書類を紛失してしまう可能性もゼロではありません。
また、文書を紙で保管していると、経年劣化によって文字が擦れてしまったり用紙が変色してしまう可能性もあるため、保存状態にも気を配る必要があります。

書類を電子データ化することで、そのような紛失リスクや経年劣化を防止することが可能です。


検索機能で欲しいファイルが探しやすい

検索機能を使用すれば、指定のキーワードが含まれるファイルやフォルダから必要な書類をすぐに取り出すことができます。
検索しやすくするためにも、ひと目で分かるようなファイル名を設定し、種類ごとにフォルダ分けをしておきましょう。

紙で書類を保管している時には、必要なものを探し出すためにそれなりの時間が必要でしたが、検索機能を使用することで業務のスリム化・効率化が実現します。


情報が共有しやすい

契約書や見積書・請求書・領収書など、取引先や社内間で様々な書類のやり取りをするという方も多いのではないでしょうか。

紙媒体では郵送でのやり取りとなるため、郵送費の負担だけでなく、相手に届くまでにも日数が必要でした。そのような時、書類を電子データ化していると、メールやシステム上ですぐに相手に送ることができるため、情報の共有がしやすいというメリットも挙げられます。

関連リンク
そもそも「デジタル化」とは?DXとの違い・具体例・やり方


抑えておきたい「電子データ」に関わる法律




電子データ化するメリットについては上記した通りですが、電子データを取り扱う際には管理方法などに気を付ける必要があります。

書類を電子化する際には遵守しなければならない法律があるため、正しい知識を身に付けずに取り扱ってしまうと、「気付かない内に法律違反を犯していた」ということにもなりかねません。
電子データに関わる法律としては、「電子帳簿保存法」「e-文書法」の2種類があります。

ここからは、電子データを取り扱う際に抑えておきたい《2つの法律》それぞれの内容や違いについて解説していきます。
場合によっては大きなトラブルに巻き込まれてしまう可能性もあるため、電子データに関する法律の知識はしっかりと身に付けておきましょう。


電子帳簿保存法

ビジネスにおける重要書類は、一定の期間保存することが義務付けられていますが、国税関係の書類や帳簿を電子データ化して管理する際に定められた法律のことを「電子帳簿保存法」と言います。

電子帳簿保存法の対象書類は、大きく分けると以下の3つに区分されます。それぞれの区分によって書類の保存要件が異なるため、普段からよく取り扱う書類がどこに分類されるのかをしっかりと理解しておきましょう。

【1】電子帳簿等保存

電子システムを用いて作成した帳簿や書類は、データのままで保存する必要があります。該当する書類は以下のようなものです。

  • 国税関係の帳簿(仕訳帳/売上台帳/現金出納帳など)
  • 決算関係の書類(賃借対照表/損益計算表/棚卸表など)


【2】スキャナ保存

以下のような紙の書類は、スキャナで取り込んでPDFやJPEGなどの電子データとして保存する必要があります。
発行・受領した「契約書」「見積書」「請求書」「領収書」「発注書」の原本と控えの両方が、スキャナ保存の対象書類に該当します。

【3】電子取引

メール等で受信した取引書類は、電子データのまま保存する必要があります。
例えば、「契約書」「見積書」「請求書」「領収書」「発注書」などのPDFファイルやweb上で受け取ったデータがこれに該当します。

デジタル化の促進に伴い、電子帳簿保存法も度々改正されていますので、「知らない間に法律違反になっていた」ということのないよう、法改正には常に気を配っておきましょう。


e-文書法


従来は紙での保存が義務付けられていた書類も、電子データ化して保存することを認める法律のことを「e-文書法」と言います。

「e-文書法」は、業務のスリム化事務効率の向上を目的として2005年に新しく作られた法律です。この法律が施行されたことによって、ほとんどの書類を電子データ化して保存することが可能になりました。

ただ電子データ化するだけでなく、e-文書法では以下の4つの要件に沿って保存する必要があります。

  • 【見読性】電子化されたデータの文字がしっかりと読める
  • 【完全性】作成後にデータの改ざんや消去がされていないことを検証できる状態である
  • 【機密性】許可した人だけがアクセスできるようにセキュリティ設定をしている
  • 【検索性】検索した時に、必要なデータがすぐに探し出せる状態である



「電子帳簿保存法」と「e-文書法」の違い


「電子帳簿保存法」と「e-文書法」は、どちらも書類の電子データ化に関する法律のため混同されがちです。しかし、それぞれ異なる法律であることを理解しておきましょう。

上記したように、「e-文書法」は種類に関わらず紙書類を電子データ化することを認めた法律です。それに対して「電子帳簿保存法」は、対象となる書類が「国税関係の帳簿と書類」に限定されます。
この点が2つの法律の大きな相違点となりますので、覚えておくとよいでしょう。

関連リンク
【2022年度】電子帳簿保存法の改正内容をわかりやすく解説


紙の文書の電子データ化と保存方法


上記したように、一口に「電子データ」と言っても様々な種類のものが存在します。
そのため、紙の文書を電子データ化する際には、内容に合わせたファイル形式で保存しなければなりません。

ここからは、紙の文書を電子データ化した際の保存方法について解説していきます。

・電子化する書類は選別する

例えば、元々紙媒体の書類をメインに取り扱っており、最近電子データ化を取り入れた企業があったとします。
つまりこの場合、ほとんどの書類が紙媒体で保存されている状態ということです。

膨大な量の書類を全て電子データ化するには負担が大きすぎるため、最初に電子データ化を取り入れる際には必要書類を選別する必要があります。

経理関係の帳簿や雇用関係の書類、会議の議事録の他、取引先とやり取りする機会が多いものなど、電子化した方が業務が円滑に進みそうなものから優先的に電子データ化していきましょう。
反対に、法で定められた保存期限の過ぎている書類や、使用頻度の低い書類などは電子化せずに破棄するか紙媒体のまま保存しておいても問題ありません。


・電子データの保管方法やルールを決めておく

電子化する書類の選別が完了したら、次に電子データ化したファイルの保管方法や共有ルールを決める必要があります。

せっかく電子化しても、ファイル名が統一されていなかったり、どこに保存されたのかを把握していなければ意味がありません。
電子データとして保存したら、誰が検索してもすぐに見付けられるようにファイル名を変更して社内で共有しておくことが大切です。また、取引先・日付・担当者など、分かりやすくフォルダに分類しておくことで、後々の業務の効率化が期待できます。

ファイルは電子データ化したらそれで終わりではなく、使いやすさを考慮しながら仕分作業をする必要があるということです。


・スキャナで紙の文書を取り込み、電子データ化する

ここからは、いよいよ電子データ化の作業について説明します。
紙の書類を電子データ化するためには、スキャナで取り込むという方法が一般的です。
ほとんどの複合コピー機にはスキャン機能が搭載されているため、社内に置かれているコピー機で簡単に書類を取り込むことができます。


・スマートフォンやデジタルカメラで書類を撮影する

他にも、スマートフォンやデジタルカメラで書類を撮影し、画像ファイルとして保存するという方法もあります。
これは、名刺を電子データ化する際に用いられることが多い方法です。

中には取り込んだ画像ファイルをPDFファイル形式に変換することができるアプリも多数リリースされており、テレワーク中や外出中に急いで書類を電子データ化したい時などにも役立ちます。

ただし、カメラの性能によっては画像が粗くて読みにくくなる可能性もあり、撮影者によって見やすさが変わってしまうという点を考慮する必要があるかもしれません。


電子データ化する際の注意点




これまで電子データ化について様々なことをお話してきましたが、最後は書類を電子データ化する際に気を付けておきたいポイント・注意点について確認しておきましょう。

電子データを取り入れる際は、以下の2点に注意する必要があります。


・タイムスタンプの付与が必要な場合がある

中には、電子化された書類が原本であることを証明するために「タイムスタンプ」の付与が必要なケースもあります。タイムスタンプには日付や時刻が記載されるため、付与された時刻以降に書類が改ざんされていないことを証明する非常に重要な仕組みと言えます。

タイムスタンプの付与は電子帳簿保存法によって義務付けられているため、書類を電子化する際にはタイムスタンプが必要かどうかをしっかりと把握しておくことが大切です。
主に以下のような書類にはタイムスタンプの付与が必要となります。

  • 帳簿(仕訳帳や現金出納帳など)
  • 決算関係の書類
  • 領収書・請求書・発注書


タイムスタンプの付与は原則必須ですが、2022年1月の電子帳簿保存法の改正によって、一定の要件を満たしている場合にはタイムスタンプの付与が不要になりました。
書類にタイムスタンプが付与された以降に、書類の内容を「変更」または「削除」していないことを証明するのがタイムスタンプの役割です。
つまり、「変更」や「削除」をしたことがログとして記録されたり、一度入力した情報を変更できないようなシステムを利用することで、タイムスタンプの代用とすることが可能となります。今回の法改正によって、この代用が認められたと言うことです。

なお、従来は書類の受領後「3営業日以内」にタイムスタンプの付与が必要とされていましたが、タイムスタンプについての要件緩和と同時に、付与期間が書類受領後「2ヶ月と7営業日以内」に改正されました。

タイムスタンプを付与するためには、タイムスタンプ専用システムを導入する他、タイムスタンプに対応している電子システム・ソフトウェアを利用する必要があります。


・セキュリティを強化する

テレワークやリモートワークが普及している昨今、電子化を取り入れることで、場所を選ばずに社内や取引相手とスムーズな書類の共有が可能になります。

とは言え、電子データは紙の書類に比べてセキュリティ面に不安がありますよね。電子データを取り扱っていると、ハッキングやウイルス感染によって悪意を持って情報を抜き取られてしまうケースも少なくはありません。
よく理解していない状態で書類の電子化を導入すると、意図していないところで重要な情報が外部に漏洩してしまう可能性もあるため、注意が必要です。

書類を電子化する際には、セキュリティ面の強化も大きな課題となるでしょう。
セキュリティを強化するための対策としては、以下のような方法が挙げられます。導入時の参考にしてみてください。

  • セキュリティ対策ソフトを導入する
  • 書類にパスワードを設定し、閲覧制限やアクセス制限を付ける
  • 電子メールを利用する際には、誤送信防止システムの利用やスパムメールのフィルターを設定する
  • 書類の改ざんや削除を防ぐために、ログの記録管理を徹底して行う


最近では、電子システムを利用して書類を電子データ化する企業も増えてきています。電子システムは電子帳簿保存法に対応しているものも多く、セキュリティ面を強化しながらスムーズなデータ化が可能となるため、電子化が初めての方にもおすすめです。


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さらに、書類データ件数が500件ごとに料金が変わる従量課金制のため、少ないデータ件数でも導入しやすいことが特徴です。電子化した書類はユーザーごとに閲覧権限を設定することができるため、セキュリティ面も安心です。


電子データ化で、業務の効率化とコスト削減が実現!

本記事では書類のデータ化に関するメリットや保存方法についてご紹介してきましたが、書類の電子データ化は今後ますます需要が高まることが予想されます。

初めて電子化を導入する際は難しいと感じるかもしれませんが、使い方に慣れてしまえば業務や経費を大幅に削減することができるため、この機会にぜひ電子データ化への理解を深めてみてはいかがでしょうか。

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※この記事は2023年3月時点の情報を基に執筆されています。

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