契約書の書き方をポイント別で解説!【雛形が使えるサービス紹介あり】

更新: 2022-09-02 19:54

この記事では、初めての方でも分かりやすいように、契約書の作り方をご紹介します。 盛り込むべき内容や作成時の注意点、作成から締結までの流れについても解説するので、参考にしてください。また、よく使われる契約書の雛形が無料で使えるサービスも紹介します。

  • 目次

 契約書を作成する際には、双方が不利益を被らないように抜けや漏れに注意する必要があります。
しかし、初めて契約書を作成する場合、どのような内容を盛り込むべきなのか、作成時に気をつけたい点はどこなのかで悩むこともあるでしょう。

この記事では、初めての方でも分かりやすいように、契約書の作り方をご紹介します。
盛り込むべき内容や作成時の注意点、作成から締結までの流れについても解説するので、参考にしてください。

また、よく使われる契約書の雛形が無料で使えるサービスも紹介します。

契約書を作成する際の基礎知識


契約書を作成するにあたっては、契約書作成の目的やその効力などについての基礎知識も覚えておきましょう。

契約書を作成する目的

契約書を作成することには、主に下記4つの目的があります。

  • 契約内容を明確にするため
  • トラブルを予防するため
  • 裁判等の際の立証資料にするため
  • 経理や税務の立証書類にするため


契約内容を明確にしておくことで、契約する双方の相違がない状態で業務を進めることができます。
どちらかが不利益を被らないためにも、業務開始前に内容を確認し、認識をすり合わせておくためです。
こうして内容を明確化しておくことで、不当な取引条件となることや金銭面などにおけるトラブルを予防しやすくなります。
万が一トラブルに発展して裁判沙汰になってしまった際にも、契約書は証拠として有効です。

また、経理や税務処理においては、支払いの根拠として契約書が立証書類として必要になることがあります。

契約書の効力

契約書には、損害が生じた場合や納品が遅れた場合の取り決めなども記すのが一般的です。
これを双方が合意することで、法的効力を持たせることができます。
契約そのものは契約書なしで口約束だけでもできてしまいますが、この場合は取り決めの内容に対して双方が合意した証拠がなく、その内容や成立有無が争点となった際の証明が困難になります。
このことから、法的効力を有する契約書を作成することは、双方が公平に仕事に取組みやすくすることにもつながります。



契約方法は3種類ある

「書面で契約を締結する」ほかに、「口頭での契約」「電子契約」で契約を締結することができます。
しかし、一般的なビジネスにおいて、口頭での契約、いわゆる口約束は通用しません。
「言った言わない」論争になってしまったり、双方の認識のズレが起きてしまったりしやすいからです。
そのため、ビジネスでは書面での契約もしくは電子契約を用いて締結するのが基本です。
電子契約とは書面での契約をオンラインで行うことで、WEB上で締結できて利便性が高いことから導入する企業が増えています。

「個人契約書」「法人契約書」の違い

「個人契約」や「法人契約」といった呼ばれ方をすることもありますが、これらに大きな違いはありません。
個人契約書は個人が契約したもの、法人契約書は法人が契約したもの、という違いがあるだけです。
契約者が個人か法人かによって、内容や契約書の効力が変わることはありません。
注意したいのは、個人で契約していた人が起業して法人になった場合です。
この場合、個人と起業した法人は別人の扱いになるため、業務内容に変更がなくても新しく契約を締結する必要があります。

「契約書」「覚書」「誓約書」の違い

「契約書」とは、契約の内容を明記し双方の認識をすり合わせ合意するためのものです。
「覚書」には契約書に似た性質があり、双方の合意事項の取りまとめや、既存の契約書に付け足したい内容がある場合に作成します。
そのため、場合によっては法的に「契約書」と同じ扱いとなることもあります。

一方の「誓約書」は、双方の合意を取りまとめるものではなく、一方が相手に対し誓約する事項を差し入れるのが一般的です。
一方が相手に対して誓約する内容で、秘密保持義務などを記載して誓約するケースが多いです。



契約書の作成から締結まで流れ


実際に契約書を作る際の流れを、締結まで順を追ってご紹介します。
契約書作成前にも準備手順があるので、ぜひ参考にしてください。

契約内容を確認する

契約書の作成前に、まずは契約をする双方で内容の確認を行います。
契約内容はもちろん、期間や条件、取引金額についても認識をすり合わせておきましょう。
この確認を怠ってしまうと、認識のズレが発生してトラブルになる場合があるので十分に注意が必要です。

契約書(案)を作成する

双方が契約する内容を確認したら、契約書の案を作成します。
ドラフトとも呼ばれる「案」を作成することで、契約書の内容をより正確に漏れなく作っていくことができます。

契約書(案)は、そのまま契約書として使える内容として作成することがポイントです。
契約書に記載すべき項目がすべて入っているかをチェックしたうえで、契約する双方が内容を確認し、問題がないか確認します。
問題があればここで修正し、双方が合意できる内容に仕上げましょう。

契約書を作成し締結する

契約書(案)の修正・確認が終わり内容がまとまったら、実際に使用する契約書を作成します。
契約する当事者の数だけ契約書を作成し、それぞれが署名・捺印もしくは記名・押印を行い締結します。
契約内容によっては収入印紙の貼り付けが必要な場合があるので、必要に応じて対応しましょう。
締結後は、契約者それぞれが書類を適切に保管します。



契約書の書き方


契約書の書き方に決まったルールはありませんが、記載すべき項目はあります。
ここでは、契約書に入れておくべき項目についてご紹介します。

タイトル

タイトルは、誰が見てもすぐにわかる内容にします。
「契約書」だけでも問題ありませんが、一般的には何を目的とした内容なのかがわかるタイトルにします。

  • 業務委託契約書
  • 雇用契約書
  • 賃貸借契約書
  • 売買契約書
  • 譲渡契約書


上記の例のほかに、「覚書」とする場合もあります。
先述したように、覚書というタイトルであっても、契約書と同等の効力を持つことがあります。

前文

前文では、契約の概要などを簡潔に記します。

  • 契約する当事者
  • 契約の概要
  • 契約が及ぶ範囲
  • 契約の締結に至った経緯


上記の4点について、記すのが一般的です。
「株式会社○○(以下「甲」という。)と○○(以下「乙」という。)は、以下のとおり業務○○の委託契約(以下「本契約」という。)を締結する。」などといった具合です。
甲乙などの仮称を付けることで、契約書をシンプルに読みやすくすることができます。

本文

「約定事項」と呼ばれることもある本文には、契約における具体的な内容や取り決めを記載します。
内容は第1条、第2条といった形で箇条書きにしていくのが基本で、これを「条」と呼びます。
条の中で細かく分ける場合は、「項」を使い、さらに細分化する際には「号」を使いましょう。

本文には、契約内容にかかわらずどの契約にも規定されることが多い一般的な内容である「一般条項」と、その契約独自の内容である「主要条項」を記します。
一般条項では、下記の内容を盛り込むのが一般的です。

  • 契約期間
  • 守秘義務
  • 契約解除・解約
  • 期限の利益喪失
  • 反社会的勢力の排除
  • 損害賠償
  • 不可抗力免責
  • 権利義務の譲渡禁止
  • 準拠法と合意管轄
  • 協議条項


後文

後文は末文とも呼ばれるもので、契約書の締めくくりの部分です。

  • 契約書を作成した部数
  • 書く契約当事者が所有する契約書の数
  • 書く契約当事者が所有する契約書が、原本か写しなのか


上記の点は、契約書の内容で契約が成立したことを規定するために必要です。
「本契約の成立を証するためこの契約書は原本を2通作成し、本委託者及び本受託者がそれぞれ署名又は記名押印のうえ、各自その1通を保有する。」などと記載します。

契約日付

契約日付は、契約が合意された日となるため、とても重要です。
この日付は、下記のいずれかの日を契約日付として決めることができます。

  • 事前に契約する当事者間で決めた日
  • 契約書を作成した日
  • 自社が押印する日
  • 契約する相手が押印する予定の日


契約の内容は、契約日付から有効です。
ただし、契約期間とは異なり、あくまでも「契約が有効となる開始日」となります。
契約する当事者間で事前にしっかり話し合い、日付を決めておきましょう。

署名捺印

署名捺印は、契約する当事者それぞれが契約書の内容に合意したことの意思表示になります。
それぞれの住所、会社名、代表者名を記入し、印鑑を押します。
ここでいう「署名捺印」とは、契約者本人が手書きしたものに、本人の印鑑を押したものです。
ゴム印やパソコンによる印字などといった本人の直筆ではない「記名」であっても、印鑑を押すことで記名捺印としてあれば問題ありません。

契約書の書き方:署名捺印

その他

不動産関係の契約書などの場合は、署名の後に別紙や後記等で登記事項を記載することがあります。
このように、契約書の種類によって特別に記載する内容がある場合は、署名捺印の後ろに記載する場合もあります。

契約書を作成する際に覚えておきたいポイント


契約書を作成する際には、ここから紹介するポイントを押さえておくと安心です。

契約書の作成はどちらでも問題ない

契約書を作成するのは、一般的にどちらでも問題ないことになっています。
双方が内容を確認して同意することが大切なので、両者が納得できる内容であることが重要だからです。
ただし、企業がフリーランスに依頼する場合は企業が作成するケースが多いなど、ある程度のパターンがあるのも事実です。

なお、提示された契約書の内容を、そのまま受け入れなければならないというわけではありません。
合意できない部分があれば、話し合い、合意できる内容にすることが大切です。

収入印紙が必要な場合がある

契約書が課税文書となる場合は、印紙税法に則って収入印紙を貼り付ける必要があります。
必要な収入印紙の金額は契約する金額によって違うので、必ず事前に調べておきましょう。
収入印紙は契約書のどこに貼っても問題ありませんが、最初のページの左上に貼り付けるケースが多くみられます。
また、貼り付けたら収入印紙にかかるように消印を押すことも忘れてはいけません。
複数枚契約書を作成する場合には、作成する契約書すべてに収入印紙を貼り付ける必要があります。

言葉は省略せず正確に記載する

契約書に記載する言葉は、省略せず正確に記載することもポイントです。
必ず主語を入れ、「あれ」「これ」「その」「あの」などといった代名詞は使いません。
頻出する長めの言葉については、「○○(以下●●という)」などとして略称を用いることはあります。
この場合も、代名詞を使用せず都度略称を入れることで、誤解を招きにくくなります。

第三者でも理解しやすい内容にする

業界ならではの用語などを使うと、第三者にはわかりにくい内容となってしまいます。
当事者間での認識のすり合わせが目的でもある契約書ですが、裁判で証拠として用いる場合など、場合によっては第三者が目を通すこともあるため、当事者以外でもわかるように記載することを心掛けましょう。



解釈に幅があるような曖昧な表現を使わない

契約書では、さまざまな解釈ができるような内容を避けましょう。
解釈が2通り以上ある表現だと、契約者同士で解釈が割れ、トラブルへと発展してしまうためです。
トラブル予防が目的でもある契約書だからこそ、解釈が1つしかない表現が最適です。
そのためには、主語を必ず明記し、読点を多用し、副詞や接続詞を使って言葉を正しく並べるなどの工夫が欠かせません。

あらゆるリスクを想定して抜けや漏れがないようにする

スムーズに契約した業務を進めるためには、あらゆるリスクを想定した契約書にする必要があります。
起こり得るさまざまなケースを想定し、すべてをカバーできるような内容にしましょう。

できる限り具体的な内容にする

具体的な内容にすることで、契約者同士の認識にズレがない契約をすることができます。
たとえば、「すぐに」という表現ではなく「3日以内に」と記載するなどです。
特に、数字化できるものについては、必ず数字にして記載することが大切です。

法律用語に基づいて記載する

法的効力を有する契約書では、法律用語に基づいて記載することもポイントです。
たとえば、個人情報保護に関する内容を記載する場合、個人情報保護法で定義された用語を使用します。
これにより、個人情報保護法で定義された「個人情報」が適用されることになります。
ただし、このように法律用語を記載する場合、一般的に使われる「個人情報」という言葉と混同したり独自の解釈を入れたりしないことを覚えておきましょう。

契約内容は当事者間での確認を徹底する

契約の内容は、契約する当事者間で必ず徹底的に確認を行います。
文字量が多くなりがちな契約書ですが、確認を怠ってしまうと自分に不利益な内容が入っている可能性があるためです。
署名捺印をすると契約が締結してしまいますので、締結前に、必ず納得できるまで確認することが大切です。

テンプレートをそのまま流用しない

契約書を作成するにあたって、テンプレートを使用するケースは珍しくありません。
しかしテンプレートはあくまでも一般的な文章を書いたものであり、これから行う契約に最適であるとは限りません。
そのため、テンプレートはそのまま流用せず、契約それぞれに合わせて作り変えていく必要があります。
テンプレートはあくまでも土台として考え、活用しましょう。

契約書が複数枚になる場合は袋とじや割印をする

契約書の改ざんを防ぐためには、袋とじや割印が有効です。
特に、契約書が複数枚になる場合には、署名捺印がないページも出てきてしまいます。
この場合、印影がページをまたぐように袋とじや割印を押して改ざんリスクを抑える工夫が必要です。



法律に反する恐れがある契約とは?


契約内容が法律に違反する場合には、その条項や契約そのものが無効になることがあります。
このケースでは、法令により「強制規定」「任意規定」「取締規定」の3つの規定に分けられます。

強制規定

強制規定は、たとえ契約を交わしていても法律が優先される強制的な規定です。
消費者や労働者を保護する法律に反する契約の場合、「強行規定」により契約書の内容ではなく法律で定められた内容が適用されます。
これは、社会的秩序を守る規定であり、強制的な適用です。
たとえば、最低賃金以下の金額での雇用や、法律で規定されている以上の利息を求める場合などが強行規定の対象となります。

任意規定

法律とは異なる内容であっても、契約者間で独自のルールを設定できるのが「任意規定」です。
たとえば、民法では仕事の目的物と報酬の支払いは同時にするとされていますが、これは任意規定となっているため、契約書によって独自のルールに設定できます。
後払いや分割での支払いにすることも可能です。

取締規定

「取締規定」は、行政上の取締りのために、一定の行為を禁止する規定です。
取締規定では、任意規定となる場合、強行規定になる場合がある一方で、契約書の内容は有効でも行政上の取り締まり対象になる場合もあります。

電子契約なら契約書の作成がスムーズ!


業務をトラブルなくスムーズに進めるためには、契約書を抜けなく作成することが欠かせません。
そのためには、さまざまなリスクを想定してあらゆるケースについて言及した契約書にする必要があります。

電子契約は、紙の契約書と比較すると作成が容易であることがメリットです。
印刷して押印するなどの手間がないため、確認や修正も簡単で、締結までの流れもスムーズに進みます。
また郵送料金や収入印紙代が不要なので、コスト削減につながります。
契約締結までがスピーディーに進むことで、より業務も効率的に進めることができるでしょう。



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