タイムカードは「労働関係に関する重要な書類」に該当するため、5年間の保存が義務付けられています。本記事では、タイムカードの保管義務や保管期限について詳しく掘り下げて解説していきます。
「タイムカード」は、従業員の勤怠状況を証明するための重要な書類です。従業員の勤怠管理にタイムカードを利用しているという企業も多いのではないでしょうか。
タイムカードは原本で保管する必要がありますが、ただなんとなく何年も捨てずに溜めているという担当者も少なくはありません。
今回は、そんな「タイムカード」の正しい保管期限や破棄するタイミング、おすすめの保管方法について詳しく解説していきます。
タイムカードの管理にお困りの方は、ぜひ参考にしてみてくださいね。
そもそもタイムカードには、『原本を5年間保管しなければならない』という規定があることをご存知でしょうか?
労働基準法第109条(記録の保存)には、以下のような規定があります。
『労働者名簿、賃金台帳及び雇入れ、解雇、災害補償、賃金その他労働関係に関する重要な書類を五年間保存しなければならない。』
引用:(e-GOV法令検索)昭和二十二年法律第四十九号 労働基準法
タイムカードは「労働関係に関する重要な書類」に該当するため、5年間の保存が義務付けられています。
本記事では、タイムカードの保管義務や保管期限について詳しく掘り下げて解説していきます。
今まで勤怠管理はどこか曖昧な部分が多く、サービス残業や休日出勤が見過ごされていることも珍しくはありませんでした。
そのような中、長時間労働における過労問題、追加の労働時間に対する賃金の未払いなどの様々な問題が浮き彫りになり、2019年4月には「労働基準法」が改正されました。
それに伴い、多様な働き方を推進する「働き方改革」への取り組みが積極化します。
なお、労働基準法に抵触している可能性が疑われた場合、労働基準監督署による調査が入り、必要書類の提示を求められることがあります。タイムカードもその必要書類のひとつであり、緊急時にすぐに対応できるようにしておくことが大切です。
従業員の勤怠管理を適切に行っていることを証明するためにも、タイムカードは適切に保管しておきましょう。
雇用形態に関係なく、会社側が労働時間を管理する必要がある従業員全てのタイムカードを保管する必要があります。
つまり、正社員はもちろんアルバイトやパートタイマー、派遣社員のタイムカードも保管対象ということです。
ただし派遣社員の場合には、「派遣会社」と「派遣先の企業」の両方がタイムカードを管理する必要があるため注意が必要です。
労働基準法によると、以下のような場合はタイムカード保管義務の対象外とされています。
上記のような場合、タイムカードを保管する必要がないとされています。
しかし、「管理監督者」と「みなし労働時間制適応者」に関しても会社側でも労働時間や賃金の支払い状況を把握しておく必要があり、また、管理監督者であっても深夜手当は支払う必要があるため、後々のトラブルを回避するためにも一定の期間はタイムカードを保管しておいた方がよいでしょう。
2020年4月に「労働基準法」が改正されたことに伴い、タイムカードについても以下の3つの項目が大きく変更されました。
これらは、2020年4月1日以降に支払われる賃金から適応されます。
まず第一に、従来は2年間だった賃金請求権の消滅時効が5年間に延長されました。
例えば、何らかの理由によって支払われていない賃金があった場合、従業員は雇用主に対して未払いの賃金を請求できる権利があります。その遡って請求できる期間が「5年間」と定められているということです。
未払いの給与はもちろんですが、残業代・退職金・賞与・各種手当など様々なものが該当します(なお、当分の間は3年とする経過措置がおかれています)。
上記の「賃金請求権」の延長に伴い、タイムカードの保管期間も3年間から5年間に延長されました。
万が一従業員から賃金の請求があった場合に、事実確認をするためにタイムカードを確認する必要があるからです。
たとえ退職した従業員のタイムカードであっても、5年間は保管する義務があります(なお、当分の間は3年とする経過措置がおかれています)。
「賃金請求権」と「保管期間」が5年間であることは上記した通りですが、5年間の計算をするための起算日については、記録に係る賃金の支払期日が、記録の完結の日よりも遅い場合は「賃金支払日」が起算点であることが定められました。
つまり、賃金請求と保管期間を遡って確認したい場合には、最後の賃金が支払われた日から5年間で計算をすればよいことになります。
タイムカードの保管期間の起算日が「賃金支払日」に変更されたことは前項でも解説しましたが、実際にはどのタイミングから5年間と計算すればよいのでしょうか?
ここからは、タイムカードの保管期間の起算日について、例を挙げて詳しく解説していきます。
《※例》タイムカードを最後に使用した日が【2022年3月31日】で、賃金支払いが【2023年4月20日】だった場合
タイムカードの保管期間の起算日は「賃金支払日」となっているため、上記の場合は【2023年4月20日から5年間】つまり【2028年4月20日まで】がタイムカードを保管すべき期間となります。
起算日についての認識に誤りがないよう、しっかりと理解しておきましょう。
タイムカードの保管は労働基準法によって義務付けられています。
その保管義務を怠ると法律違反となり、罰則の対象となるため注意しなければなりません。
タイムカードは「労働関係に関する重要書類」となりますので、その保管義務を怠ると30万円以下の罰金を支払うことになります。(労働基準法第120条)
なお、タイムカードの原本を紛失してしまった場合にも同様の罰則が科せられますので、決められた期間内は必ず原本を保管しておきましょう。
2020年4月1日以降に支払われる賃金から上記変更点が適応されることになりますが、「賃金請求権」「保管期間」「付加金の請求期間」ともに当分の間は3年の保存でよいとされています。
ただし、今後は5年の保存が完全義務化される可能性も十分に考えられますので、遡って賃金請求をされることも考慮して、今から5年間保存しておいた方がよいでしょう。
上記したように、タイムカードは保管義務を怠ると労働基準法によって罰則を受けますが、タイムカードがないと従業員と会社側で重大なトラブルに発展する可能性もあるので注意が必要です。
従業員から残業代や賃金の未払い、時間外割増賃金などの請求があった際に、実際の労働時間を証明できるタイムカードを提示することでトラブルを回避し、スムーズに対応できるようになります。
しかし、会社側がタイムカードの保管義務を怠って提示ができない場合には、実際に働いた時間を証明することができません。
万が一従業員側の主張が間違っていたとしても、それを証明することができない上にタイムカードの保管義務にも違反していることになります。
そのため会社側は、罰則だけでなく従業員に対して残業代や時間外割増賃金、付加金などを追加で支払わなければいけなくなってしまう可能性があります。
このようなことが一度でもあれば社会的信用にも関わってきますので、タイムカードは正しく保管しておかなければなりません。
前項までは「タイムカードを保管する重要性」についてお話してきましたが、タイムカードの紛失を防ぎ、正しく保管するためにはどのような方法が適しているのでしょうか?
紙媒体のタイムカードを5年間も保管しておくと、擦れて文字が見えにくくなったり、特定の従業員のものを探し出すことが困難になります。
特に多くの従業員を抱える大企業のような場合には、保管しなければならないタイムカードの量も膨大になるため、保管場所の確保と管理だけで相当な手間とコストがかかってしまいます。
そこで最近は、従業員の勤怠管理に電子システムを導入する企業が増えてきています。勤怠管理システムを導入することでタイムカードの電子データ化が可能になり、次のような多くのメリットが期待できます。
紙のタイムカードの場合、どれだけ丁寧に保管していたとしても経年劣化によって印字された文字が擦れてしまったり、カードが折れ曲がってしまうことも珍しくはありません。
また、管理方法も煩雑のため紛失してしまうリスクも高まります。
タイムカードを電子化すると、経年劣化による文字の見にくさや紛失のリスクを防止することが可能です。
タイムカードは「原本保存」が原則ですが、最初から電子データを用いていれば原本もシステム上に保存することができるため、保管場所にも困らず劣化を心配する必要もありません。
タイムカードをデータ保存していれば、ある特定の従業員の勤怠管理を確認した場合にも検索機能ですぐに探し出すことが可能です。膨大なタイムカードの中から1枚ずつ探し出す労力もかかりません。
「勤怠管理システム」の中には、従業員ごとの勤怠管理だけでなく自動で給与計算のサポートをしてくれるものまであり、そのサービスは多岐に渡ります。
これまでタイムカードの管理に要していた人権費等の削減にも繋がるということも、電子化の大きなメリットのひとつではないでしょうか。
一度入力したデータはシステム上に履歴として残すことができるため、後から書き換えたり削除してもすぐに分かるものです。
従業員の勤怠をシステム上で管理することで、故意に勤務時間を改ざんしたり後から残業を追加したりといった不正を防止することにも役立ちます。
システムデータは万が一訴訟問題に発展した時にも証拠として提出することができるため、トラブル時でもスムーズに対応することが可能です。
タイムカードには、氏名や社員番号、勤怠時間などの個人情報が記載されているため、取扱いには注意しなければなりません。
保管期限が過ぎたタイムカードはシュレッダーにかけたり、機密文書の処分を専門とする会社を利用する等、情報が漏洩しないよう適切に処分する必要があります。
このような場合にも、タイムカードを電子管理していれば処分する手間やコストを削減することが可能です。
テレワークやリモートワークなどが普及している昨今、多様化する労働環境とともにタイムカードの利用の仕方についても見直されてきています。
最近はタイムカードを利用せずに電子システムで勤怠管理を行う企業も増えていますが、まだまだタイムカードを用いて勤怠管理を行っている企業が多いというのも現状です。
専用の勤怠管理システムを導入するためには、初期費用や利用料、従業員への使い方の周知など、様々なコストがかかることが理由として挙げられます。
度重なる法改正に臨機応変に対応できるよう、従来のやり方を一新して「電子化」を取り入れる動きが強まっています。勤怠管理のシステム化もそのひとつです。
電子システムを取り入れるためには購入費やメンテナンスの費用、社内への使い方の周知など、最初の内は様々なコストが必要になるため導入になかなか踏み切れない企業も少なくはありません。
しかしタイムカードの電子化は、コスト面の懸念を上回る多くのメリットが期待できます。タイムカードの取扱いに悩んでいる場合には、これを機に電子システムの導入を前向きに検討してみてはいかがでしょうか。
※この記事は2023年5月時点の情報を基に執筆されています。