「甲・乙・丙」は、甲、乙、丙、丁、戊、己、庚、辛、壬、癸で構成される「十干(じっかん)」に由来します。この記事では、「甲・乙・丙」の使い方や、表記を取り入れるメリット・デメリットについて解説します。 注意点もご紹介するので、より良い契約書を作成するための参考にしてください。
契約書でよく目にする「甲・乙・丙」。
実際に契約書を作成するとなった際、これらをどう取り入れればよいのかで迷う人は少なくありません。
この記事では、「甲・乙・丙」の使い方や、表記を取り入れるメリット・デメリットについて解説します。
注意点もご紹介するので、より良い契約書を作成するための参考にしてください。
「甲・乙・丙」は、甲、乙、丙、丁、戊、己、庚、辛、壬、癸で構成される「十干(じっかん)」に由来します。
暦や時間、方位を表すために、子、丑、寅、卯、辰、巳、午、未、申、酉、戌、亥で構成される十二支と併せて使われていました。
十干と十二支の組み合わせには60種類あり、この60を1セットとしたものが「干支(えと)」と呼ばれます。
十干も十二支も干支の順番を表すことから、「甲・乙・丙」は階級や順番を表す際にも使用されます。
その一方で「甲乙つけがたい」という言葉は、「どちらが優れているのかの判断が難しい」という意味です。
このように、「甲」が「乙」よりも十干において順番が早いからといっても、一概に「甲」が優れているという意味で使われるわけではありません。
由来をふまえ、「甲・乙・丙」の基本的な意味をご紹介します。
「甲(こう)」は十干における最初の文字となり、優勢であることを表す記号として使われることがあります。
元々は「亀の甲羅」を表し「殻」を意味する漢字で、読み方は「こう」だけでなく「きのえ」となる場合もあります。
「乙(おつ)」は、十干において「甲」に次ぎ2番目となる記号です。
本来は「まがる」「かがまる」を意味し、「きのと」と読むこともあります。
「丙(へい)」は十干の3番目の字で、本来は「芽が出て葉が広がった状態」を表します。
「へい」だけでなく、「ひのえ」と読むこともあります。
契約書で「甲・乙・丙」を使う理由は、読みやすくするためです。
文字が多くなりがちな契約書では、固有名詞をすべて正式に記載していると、文章が長くなり読みにくくなってしまいます。
そこで、「甲」や「乙」などを使用し、文字数を減らして文章を読みやすくするのが狙いです。
また、「甲・乙・丙」と記載することで、固有名詞の記載ミスを減らすことにもつながります。
さらに、「甲・乙・丙」と記載することで、同じ内容の契約をほかの相手と結ぶ際には使いまわしができることも理由に挙げられます。
契約を締結する機会が多い企業などでは、特に「甲・乙・丙」を使用することで手間を省き業務を効率化することができます。
ただし、「甲・乙・丙」には法的な意味があるわけではなく、これらを使わなければならないということもありません。
また、「甲・乙・丙」を使うのは、日本ならではの文化として知られています。
現代における「甲・乙・丙」表記では、優劣はあまり関係ありません。
ただの代名詞や、記号として使います。
とはいえ、「甲・乙・丙」は甲から順番に使用していくのが一般的です。
契約書冒頭において「株式会社〇〇(以下「甲」とする)」「株式会社△△(以下「乙」とする)」などと記載し、その後は「甲」「乙」を適宜当てはめていきます。
契約書に登場する固有名詞が3つになるのなら「甲・乙・丙」、4つなら「甲、乙、丙、丁」、5つなら「甲、乙、丙、丁、戊」と表記できます。
先述したように、「甲・乙・丙」を使うと契約書の内容を読みやすくすることができます。
固有名詞がそれぞれ置き換わるので、シンプルで見やすくなることが最大のメリットです。
読みなれている人ならば、「甲・乙・丙」と表記されているほうが読みやすいというケースもあるでしょう。
また、一度作成すればテンプレート化して使いまわせることもメリットです。
固有名詞を「甲・乙・丙」などの1字に置き換えることで、「甲・乙・丙」を間違えて記載してしまう可能性があることがデメリットです。
これを間違えて記載してしまうと、場合によっては致命的な損害を負うこともあるかもしれません。
特に固有名詞の数が増えると混乱しやすくなるので、十分に注意して使用する必要があります。
また、契約書を読みなれていない人の場合は、「甲・乙・丙」を使うことで逆に読みにくくなるというデメリットもあります。
契約書で「甲・乙・丙」を使用する際には、これからご紹介する注意点を押さえておきましょう。
現代では「甲・乙・丙」の優劣はあまり関係なく甲乙に上下や順番の決まりはないものの、なかには優劣を気にする人もいます。
甲が上位、下位に乙、次点で丙のイメージがあるためです。
契約書ではどちらが「甲」「乙」になるのかで、もめることも少なくありません。
そこで、お客様を「甲」、自社を「乙」とするのが一般的とされています。
企業間での取引では、規模が大きい企業を「甲」、そうでない企業を「乙」とするケースもあります。
不動産賃貸借契約書では、貸主を「甲」、借主を「乙」とする場合が多い傾向です。
このように、ただの表記であるとはいえ、さまざまな価値観の人がいることをふまえて一般的な「甲・乙・丙」の使い方をするのがいいでしょう。
書類によって、「甲・乙・丙」がどの固有名詞を示すのかが異なる場合もあります。
自社で作成したものと取引相手が作成したものでは、「甲・乙」が逆になっていることもあるでしょう。
そのようなケースに備え、「甲・乙・丙」は一般的な使用だと思い込まずにしっかりと内容を確認することが大切です。
また、自社で用意する書類については、「甲・乙・丙」の使い方をそろえておくことで、わかりやすくミスを減らすことにつながります。
近年では、「甲・乙・丙」を使わないケースも少なくありません。
これは、「甲・乙・丙」を使うことによる契約者間での認識の齟齬を生みにくくするためです。
「甲・乙・丙」を使う代わりに、固有名詞の略称を用いることもあります。
また、売主・買主や、委託者・受託者といった立場の略称で表記するケースもあります。
略称などを使用することで文字数を減らし、内容はシンプルにかつ読みやすく仕上げることが可能です。
従来の紙面だけでなく、近年では電子契約による契約書も増えています。
この電子契約においても「甲・乙・丙」は使用可能で、その意味も変わりません。
電子契約書であれば、「甲・乙・丙」を使った契約書をテンプレート化しての再利用も簡単です。
またデータでの管理が可能なので、紙面のように契約書の保管に場所を取ることもありません。
契約書をプリントアウトするコストも削減できるうえに、業務の効率化も図れるでしょう。
効力も紙面と変わりなく作ることができるので、ぜひ電子契約も検討してみてください。
「甲・乙・丙」を取り入れると、すっきりとした見やすい契約書を作成できます。
「甲・乙・丙」の間違いなどには十分に気をつけ、そのメリットを活かしていけるといいでしょう。
電子契約システムを取り入れると、契約書はより簡単に作成できるようになります。
電子契約システム「契約大臣」なら、契約書を含むさまざまな書類のテンプレートをご用意しています。
これを利用すれば、より効率的で抜けのない契約書を作ることが可能です。
また収入印紙を貼り付ける必要がないうえに契約書を郵送する必要もないので、コストカットも見込めます。
「契約大臣」ではトライアルをご用意しているので、ぜひ一度その利便性の高さをご実感ください。
>契約大臣について詳しくはこちら