雇用契約の基本事項を解説!契約書の記載事項と注意点

更新: 2022-12-08 12:49

雇用主と労働者の間で結ばれるのが、雇用契約です。この記事では、雇用契約書の記載事項から注意点までをわかりやすく解説します。トラブルなく雇用契約が締結できるよう、ぜひ参考にしてください。

  • 目次

新しく人を雇う時には、雇用契約を結ぶことになります。
ここで悩むのは、雇用契約の内容や契約書の書き方ではないでしょうか。

この記事では、雇用契約書の記載事項から注意点までをわかりやすく解説します。
トラブルなく雇用契約が締結できるよう、ぜひ参考にしてください。

雇用契約とは?


最初に雇用契約の基礎知識として、概要や労働契約との違いなどについてご紹介します。

雇用契約の概要

雇用主と労働者の間で結ばれるのが、雇用契約です。
民法623条では、当事者の一方が相手方に対して労働に従事し、相手方がこれに対してその報酬の支払いを約束することを「雇用」と定義しています。
つまり労働者は雇用主の指示の元で労働し、その対価として雇用主は賃金を支払うという関係を成立させ、これを約束するものが「雇用契約」です。
この契約で労働者となる人は、原則として労働基準法や労働契約法の保護を受けることになります。

雇用契約と労働契約の違い

雇用契約と労働契約は、ほぼ同じ意味で使われます。
違いとして挙げられるのは、雇用契約は民法の概念ですが、労働契約は労働関係の諸法規で使われる概念であるという点です。
とはいえ、契約の内容についても似ている部分が多いことから、一般的には同じような意味で使われることがほとんどです。

雇用契約と業務委託の違い

業務委託は、一方が相手方に業務を行うことを依頼し、その業務に対し対価を支払うことを指します。
雇用契約との大きな違いは、雇用契約においては雇用主が労働者に指示を出すという上下関係がある一方で、業務委託では両者が対等な立場にあるという点です。
業務委託は、他社など社外の人に業務を任せる際に結ばれるケースがほとんどです。

雇用形態それぞれの特徴


正社員や契約社員、アルバイトやパートなどさまざまな雇用形態がありますが、どのケースでも雇用者と労働者が同意すれば雇用関係が生まれます。
雇用関係が成立する際には、いずれの雇用形態であっても雇用契約を締結するべきです。
ここでは、雇用形態それぞれの特徴についてご紹介します。

正社員

期限を設けず、無期限に雇用契約を交わす労働者のことを「正社員」と呼びます。
正社員の特徴は、業務内容の変更や人事異動、転勤の可能性があることです。
ただし、入社時の雇用契約と異なる内容の仕事をお願いしたり人事異動があったりなどが発生する可能性がある場合には、あらかじめ雇用契約時にその旨を伝えておく必要があります。


契約社員

雇用する期間が決まっている労働者を、契約社員といいます。
ただし、雇用する期間が過ぎても契約を更新することで、継続して雇用することは可能です。
雇用契約時には、契約する期間や契約更新の有無、契約更新の条件について定めます。

アルバイトやパート

正社員や契約社員ではなく限定的に働く労働者を、アルバイトやパートと呼びます。
アルバイトやパートの場合、パートタイム労働法に基づいた契約を交わさなければなりません。
賞与の有無や昇給について、退職金についても、あらかじめ決めておく必要があります。

雇用形態それぞれの特徴

トラブルを避けるためには雇用契約書の締結がBEST


雇用契約は、口頭だけでなく「雇用契約書」で締結するのがベストです。
口約束だけでは後々トラブルになりやすいため、双方の利益を守るために雇用契約書を作成しましょう。

雇用契約書の概要

雇用契約書は、雇用契約を文書にしたものです。
業務内容や報酬についてなど、細かい労働条件などが記載され、双方の署名捺印がなされることでこれに合意したことを証明します。

雇用契約書と労働条件通知書の違い

労働条件通知書は、労働基準法第15条により、交付を義務付けられている書類です。
労働の契約期間や報酬、労働条件などが記載されたもので、どのような雇用形態であっても労働者に交付しなければなりません。
労働条件通知書には署名捺印が必要ありませんが、交付義務を怠ると罰則が科される点には注意が必要です。

ただし、雇用契約書の中に、労働基準法で定められている労働条件通知書の明示事項がすべて記載されているのであれば、雇用契約書1枚のみの作成・交付で問題はありません。
雇用者と労働者の署名捺印が必須の雇用契約書にこの内容を含めることで、双方が同意したことをより強調することができます。

雇用契約書の法的効力とは?

雇用契約書を締結した両者は、どちらも契約の内容に縛られることになります。
万が一雇用契約書に記載された労働条件と実際の条件が異なっていた場合には、労働基準法により、労働者はすぐに雇用契約を解除することができます。
このことからも、雇用契約書には法的効力があるといえるでしょう。

ただし、雇用契約書の内容が労働基準法に違反しているケースでは、契約内容が無効になることがあります。
「1日8時間を超える残業に対しての賃金は払わない」などの明記があったとしても、これは労働基準法に違反する内容なので、法律が優先され契約は無効となります。

雇用契約書を作成しない場合のリスク

労働条件通知書と違って交付義務がない雇用契約書ですが、作成しない場合は労働者との間でさまざまなトラブルが発生するリスクを負うことになります。
たとえば、業務内容や業務時間、報酬などの面で雇用者と労働者の主張が食い違うこともあるでしょう。
雇用契約書があれば、内容を確認することで認識のズレがあっても簡単に修正が可能です。
双方の認識をすり合わせ、双方が同意したことをいつでも証明できるのが、雇用契約書を作成する最大のメリットといえます。

トラブルを避けるためには雇用契約書の締結がBEST

雇用契約書に盛り込むべき項目


雇用契約書には、盛り込んでおくべき項目があります。
「絶対的記載事項」「相対的記載事項」それぞれに分けて、解説します。

絶対的記載事項

絶対的記載事項とは、雇用契約書に労働条件通知書の内容を盛り込む場合に、必ず記載しなければならない事項のことです。
基本的には、下記の項目について記載します。

  • 従事する業務の内容
  • 労働契約の期間
  • 就業場所
  • 始業時刻と終業時刻
  • 所定労働時間を超える労働の有無
  • 交代制のルール ※労働者を2つ以上のグループに分ける場合のみ必要
  • 休憩時間、休日、休暇
  • 賃金の計算、決定、締日、支払方法、支払日
  • 退職や解雇に関する規定


労働の内容や時間、報酬についてなど、労働にあたっての基本的な内容となります。
また、アルバイトやパートとして雇用する場合には、下記の4項目についても記載する必要があります。

  • 昇給の有無
  • 退職手当の有無
  • 賞与の有無
  • 雇用管理についての相談窓口の担当部署名・担当者名等


相対的記載事項

絶対的記載事項と違い、必要に応じて記載するのが「相対的記載事項」です。

  • 最低賃金額
  • 労働者が負担する食費、作業用品など
  • 表彰や制裁の制度について
  • 臨時に支払われる賃金、賞与、精勤手当、奨励加給、能率手当について
  • 職業訓練制度について
  • 災害補償・業務外の傷病扶助制度について
  • 安全衛生に関する事項
  • 休職に関する事項
  • 退職手当の定めが適用される労働者の範囲
  • 退職手当の計算・決定・支払の方法
  • 退職手当の支払時期


これらは、環境や制度の有無に応じて記載します。
ほかにも、それぞれの雇用に際して必要だと思われる事項があれば、できるだけ抜けなく記載しておきましょう。

雇用契約書を作成する際のポイント


雇用契約書を作成する際には、ここで紹介する4つのポイントを押さえておきましょう。

必要事項を漏れなく記載する

雇用契約書に労働条件通知書の内容を盛り込むのであれば、先述した「絶対的記載事項」は、必ず記載しなければなりません。
労働条件通知書の交付は義務となっているため、絶対的記載事項に漏れがあると労働基準法違反となってしまうので注意しましょう。
相対的事項についても、該当する制度などがあれば盛り込みます。
労働者が働いていく中で起こり得るさまざまな状況を考え、あらゆる場面に対処できるように記載することがポイントです。

労働時間や契約内容などを明確に記載する

労働時間や契約内容は、おおまかではなく可能な限りハッキリと明確に記載することが大切です。
たとえば業務内容について、「サービスに関する業務」とざっくり記載してしまうと、サービスに関する調査なのか販売なのかなどが明確になりません。
そのため、労働者との間で認識のズレが生じてトラブルになってしまうことがあるのです。

労働時間についても、通常の労働時間制のほか、フレックスタイム制やみなし労働時間制などさまざまな制度の適用が可能なので、必ず明記しておきましょう。
ただし、1日8時間・1週間40時間の法定労働時間を超える労働を契約する場合には、労働者側と労使協定(いわゆる36協定)を締結し、これを労働基準監督署へ提出する必要があります。

人事異動などの可能性がある場合は記載しておく

いずれ人事異動をお願いする可能性が少しでもあるのならば、雇用契約書にその旨を記載しておきます。
記載がなければ、人事異動を会社として命じられない恐れがあるので注意しましょう。
これは、人事異動だけでなく、転勤や業務内容の変更なども同じです。
最初に締結する条件が少しでも変わる可能性があるケースでは、必ずその旨を記載しておくことがポイントとなります。

試用期間を明記する

正式に採用する前に試用期間を設けるのであれば、雇用契約書にも「使用期間」について明記します。
雇用契約は試用期間中でも効力を発揮しますが、試用期間後の本採用拒否要件は、本採用した後の解雇の要件よりも少し緩いことが特徴です。

実際に働いてみなければ、雇用者側も労働者側も、その後も続けていけるかの判断は難しい部分があります。
働いてみて、万が一どちらかが「雇用契約の継続は難しい」と感じる場合、試用期間後に本採用をしないということで対応がしやすくなるのです。
なお、試用期間は3~6ヶ月程度が良いとされていて、あまりにも長いと公序良俗違反で無効とされる場合があるので、適切な期間であるかをしっかり検討して定めることが大切です。

雇用契約書を作成する際のポイント:試用期間を明記する

雇用契約書は電子契約で締結可能!


雇用契約書を含むさまざまな契約は、電子契約で締結することができます。
電子契約なら、紙に印刷して送付し、返送してもらうなどの手間がかかりません。
タイムラグを減らし、すぐに締結することも可能です。

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雇用契約書などの契約業務の負担軽減にもつながるので、ぜひこの機会に「契約大臣」の導入をご検討ください。

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契約書を作ってトラブルなく雇用契約を結ぼう!


正社員だけでなく、契約社員やアルバイト、パートを雇用する際でも、雇用契約書は締結しておいたほうが安心です。
特に、労働条件通知書の内容を雇用契約書に含めるのならば、絶対的記載事項を漏れなく記載し抜けのない契約書にする必要があります。
これから起こり得るさまざまな事態を想定し、トラブルを回避しやすい明確な内容の雇用契約書を作成しましょう。

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