スキャナ保存は、紙で「受け取った書類」や「発行した書類の控え」をデータで保存する方法です。対応は任意ですが、導入することで電子化によるメリットを享受することができます。この記事では、電子帳簿保存法のスキャナ保存について、わかりやすく解説します。
電子帳簿保存法への対応を迫られる中で、スキャナ保存を導入することになった企業も多いことでしょう。
しかし、実際にスキャナ保存を導入するとなると、その対象書類や保存要件などがわからない、という方もいるかと思います。
そこでこの記事では、電子帳簿保存法のスキャナ保存について、わかりやすく解説します。
対処書類や要件、導入の手順などをまとめたので、参考にしてください。
1998年に施行された電子帳簿保存法は、国税書類などをデータで保存するための要件などを定めた法律です。
電子帳簿保存法には「電子帳簿等保存」「スキャナ保存」「電子取引保存」という三つ
の保存区分があります。
その一つであるスキャナ保存は、紙で「受け取った書類」や「発行した書類の控え」をデータで保存する方法です。
対応は任意ですが、導入することで電子化によるメリットを享受することができます。
スキャナやスマホなどを使い一定の要件を満たしてデータ保存すれば、原本となる紙の書類を破棄することも可能です。
電子帳簿保存法でスキャナ保存の対象となる書類は、取引先から受け取った紙の領収書や請求書などで、下記三つの種類に分けられます。
重要度が高い対象書類として、下記の二つが挙げられます。
これらは、企業における資金や物資の流れに直結したり連動したりする重要な書類です。
参照:どのような書類がスキャナ保存の対象となりますか。(国税庁)
https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/07scan/01.htm#a002
関連リンク
電子帳簿保存法改正で領収書の保存方法はどう変わった?おすすめの管理方法も解説
契約書や領収書ほどではないものの、重要度は高めである対象書類は、下記の通りです。
参照:どのような書類がスキャナ保存の対象となりますか。(国税庁)
https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/07scan/01.htm#a002
ほかと比べて重要度が低いとされる対象書類は、下記となっています。
これらは、資金や物資の流れに直結や連動しないため、重要度が低いものと分類されています。
参照:どのような書類がスキャナ保存の対象となりますか。(国税庁)
https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/07scan/01.htm#a002
電子帳簿保存法に準拠したスキャナ保存をするためには、定められた保存要件を満たす必要があります。
※(訂正削除の履歴が確認可能であれば不要)
引用元:電子帳簿保存法が改正されました(R3.12改訂)(国税庁)
https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/pdf/0021012-095_03.pdf
スキャナ保存するために必要な、スキャナなどの機器についての要件です。
ただし、重要度が低い書類の場合は、白黒階調の、いわゆるグレースケールでも問題ありません。
参照:問12 スキャナ保存を行おうと考えていますが、どのような要件を満たさなければならないのでしょうか。(国税庁)
https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/07scan/02.htm
データ化した書類を管理するためのシステム関連の要件は、下記の通りです。
重要度の低い書類は、書類のサイズに関する情報を保存する必要はありません。
参照:電子帳簿保存法が改正されました(R3.12改訂)(国税庁)
https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/pdf/0021012-095_03.pdf
経理処理における要件は、スキャナ保存する期限についてです。
期限は、保存の方式により異なります。
・約2ヶ月と概ね7営業日以内に入力する
・適時入力方式:適時に保存する
参照:電子帳簿保存法が改正されました(R3.12改訂)(国税庁)
https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/pdf/0021012-095_03.pdf
上記以外にも、以下の要件を満たさなければなりません。
重要度が低い書類の場合はグレースケールでの保存が可能なため、ディスプレイとプリンターはカラーである必要はありません。
参照:はじめませんか、書類のスキャナ保存!(国税庁)
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/sonota/0018004-061_02.pdf
関連リンク
電子帳簿保存法の対応準備できていますか?システム要件や対象書類を解説
電子帳簿保存法のスキャナ保存に対応することには、メリットとデメリットがあります。
それぞれについても、確認しておきましょう。
電子帳簿保存法のスキャナ保存に対応することには、下記のメリットがあります。
スキャナ保存することで、紙の原本を保管する必要がなくなります。
これにともない、保管するための場所だけでなく、保管するためのコストも削減することができます。
また、データで管理することで、欲しいデータをすぐに検索し閲覧できるようになることもメリットです。
紙の書類を一枚ずつめくって探す手間がないため、業務効率化につながります。
電子帳簿保存法のスキャナ保存に対応する際には、下記のデメリットがあることも覚えておきましょう。
スキャナ保存するにあたってシステムや機器を導入する場合、導入コストに加えて月々の利用料金が発生する場合があります。
また、保存要件を満たした状態で保存するためには、スキャナ保存する際に守るべきルールを明確化しなければなりません。
このルールは社内で共有し、共通認識としておくことも大切です。
さらに、漏洩や改ざんなどのトラブルを防ぐために、セキュリティ対策を万全にしておくことも欠かせません。
ここからは、スキャナ保存を導入する前の準備から導入、運用までの流れを解説します。
スキャナ保存導入前に、下記三つを準備しておきましょう。
まずは、スキャナ保存をする目的と課題を明確にします。
スキャナ保存を導入することでコスト削減を図りたい、業務効率化を目指したいなど、一番の目的を明確にしましょう。
また、これを導入するにあたり、自社ではどのような課題があるのかも検討してみます。
たとえば、必要な機器を新しく購入する必要がある、パソコンのセキュリティ対策を強化する必要がある、などです。
次に、スキャナ保存の対象となる書類を、具体的にリストアップします。
対象となる書類が、どれくらいの重要度の書類なのかをチェックし、保存要件を満たすのに必要な保存環境を整えましょう。
スキャナ保存を導入することで、業務フローは変更を余儀なくされるでしょう。
そこで、どのように変更することになるのか、具体的に検討してみます。
この段階で、なるべく業務負担が軽くなるフローをある程度固めておくと安心です。
準備が整ったら、実際に使用するシステムを選定します。
システムは、自社の目的に合うもので、使い勝手がよいものを選ぶことが大切です。
高額にはなりますが、OCR(紙や画像データにある文字をデジタルデータに変換する技術)機能が搭載されているシステムもあります。
また、自社の既存システムとの相性なども加味できるとよいでしょう。
いくつか導入候補のシステムが絞れたら、実際にシステムを体験してみることも重要です。
実際に導入してから「思っていたような操作性ではなかった」となっても困るため、必ず事前に実物を確認しておきます。
体験した中から自社にとってベストなシステムが見つかったら、導入へと進みます。
導入するシステムが決まったら、業務フローやシステムの使い方を含めた研修を行います。
必要に応じて、マニュアルなどを作成するのも効果的です。
初めて導入されるシステムに対しては、苦手意識を持つ社員もいることを念頭に、わかりやすい研修を心掛けましょう。
研修にて使い方や業務フローが浸透したら、実際にシステムを運用します。
運用直後はさまざまなトラブルが起こることもありますので、時間に余裕を持った業務スケジュールを組んでおくと安心です。
電子帳簿保存法のスキャナ保存に対応するためには、対象書類を要件に沿って保存しなければなりません。
また、社内で扱う書類には、スキャナ保存だけでなく電子データ保存や電子帳簿等保存が必要なものもあるかもしれません。
これらをまとめて管理するために、システム導入も視野に入れておくと安心です。
電子契約システム「契約大臣」では、オプションで「書類保管機能」を提供しています。
書類保管機能は電子帳簿保存法に準拠していて、「スキャナ保存」と「電子取引」データの保存が可能です。
また、主機能の電子契約機能では事業者署名型(立会人型)の電子署名を利用できるなど、安心して契約を締結できる環境が整っています。
月々2,200円(税込)から利用でき、初めて使う方でも分かりやすい操作性も特徴となっているので、ぜひこの機会に「契約大臣」の導入をご検討ください。
> 契約大臣について詳しく見る
いまい税理士事務所
税理士 今井 儀徳