電子帳簿保存法の対応準備できていますか?システム要件や対象書類を解説

更新: 2023-07-10 17:08

2022年1月より大幅に改正された電子帳簿保存法。電子保存の対象になっている帳簿や書類の種類、対応できるシステムの要件、準備することなどを解説します。

  • 目次

インターネットが生活に欠かせない存在となった今日。日常生活だけではなく、企業のデータ保管もデジタル化が進んでいます。このような社会的背景から、電子帳簿保存法が制定され、法律に基づいた形で帳簿の電子データ化が進められています。
今回は、電子帳簿保存法とは何か・電子化システムに求められる要件・対象となる書類など、電子帳簿保存法の概要を詳しく解説します。
 

電子帳簿保存法とはどのような法律なのか


電子帳簿保存法とは、電子計算機(パソコン)を使用して国税関係帳簿や書類を保存することに関連した法律です。
IT化が進み始めた1998年に制定されてから、時代の流れに対応した改正が複数回施行されています。改正の内容は条件の緩和が大半を占めているため、導入のハードルが下がり、国税関係帳簿や書類を電子データとして保存する企業が増えています。
電子帳簿保存法が制定されたことにより、生産性の向上・テレワークの推進・クラウド会計ソフトの活用による記帳水準の向上など、さまざまな効果が期待できます。
電子帳簿保存法について正しい知識を得て、電子化システムの導入を検討しましょう。



2022年に電子帳簿保存法が緩和


複数回の改正が施行されてきた電子帳簿保存法。2022年1月には、新たに電子帳簿保存法の改正が行われ、導入のハードルがさらに低くなりました。ここからは、2022年に改正された内容を詳しくご紹介します。
 

税務署長による事前承認制度を廃止

2022年1月の改正で最も重要なポイントは、税務署長による事前承認制度が廃止になったことです。改正前は、所轄の税務署に「承認申請書」や「事務手続きの概要」などの書類を提出しなければなりませんでした。また、提出後3か月間の審査が行われ、承認されて初めて電子保存が認められていました。
しかし、新たに事前承認制度が廃止されたことにより、申請書類の作成に係る時間や労力を削減でき、承認を待つ時間も必要なくなったため、スピーディーな導入が可能になりました。
ただし、承認待ちの期間がなくなったからといって、国が定める要件がなくなったわけではありません。要件を満たすシステムに限り、電子保存が認められます。


国税関係書類に係るスキャナ保存制度の要件緩和

スキャナ保存とは、請求書や領収書など紙の書類をスキャンして読み込み、電子データとして保存しておく方法です。このスキャナ保存制度によって、以下3点の要件緩和が行われました。
 

  • タイムスタンプが緩和される
  • タイムスタンプが不要になる
  • 自署が不要になる

 
「タイムスタンプ」とは、スタンプを付与した以降にデータの改ざんを行なっていないことを証明するシステムです。改正前は、タイムスタンプの付与は書類の受領後3営業日以内でした。しかし、今回の改正により、タイムスタンプの付与は最長2ヶ月と概ね7営業日以内に緩和され、訂正や削除の履歴が残るシステムであればタイムスタンプ自体が不要になる制度も設けられています。
さらに、改正前はスキャナでデータを読み取る際に自署が必要でしたが、改正後は自署が不要になりました。
 
このようにスキャナ保存制度の要件が緩和されたことで、電子帳簿保存法に対応するための負担が軽減されました。


事務処理要件の緩和

電子帳簿保存法では、不正や不備の発生を防ぐため、さまざまな厳しい基準が設けられています。その一つである「適正事務処理要件」が、2022年1月から緩和されました。
適正事務処理要件とは下記の3点です。
 

  • 書類の受領者以外が書類を確認しなければならない。タイムスタンプの付与後は、さらに第三者が事後検査を行わなければならない。
  • 各事務に係る処理の内容を確認する定期検査を、1年に1回以上実施しなければならない。定期検査終了まで原本は保管しなければならない。
  • 定期検査で不備が見つかった場合、経営者を含む幹部に報告し、原因の究明および改善案を構築する体制を整えなければならない。

 
2022年1月の改正により、上記すべての要件が廃止されました。これにより、導入のハードルが大幅に下がりました。


検索要件の緩和

改正前には「年月日」「勘定科目」「取引金額」「その他国税関係帳簿の種類に応じた主要な記録項目」を、検索条件として設定することが義務付けられていました。
しかし、今回の改正によって「日付」「取引金額」「取引先」の3項目に限定されています。
このように検索要件が緩和されたことも、導入のハードル低下につながりました。


電子帳簿保存法の対象となる書類


電子帳簿保存法は、すべての書類を電子データとして保存できるわけではなく、対象となる書類が定められており、「電子帳簿保存」「スキャナ保存」「電子取引」の3つの区分に分けられます。
ここからは、電子帳簿保存法の対象となる書類を、それぞれの区分ごとにご紹介します。
 
参考;国税庁『電子帳簿保存法が改正されました』
https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/pdf/0021005-038.pdf


電子帳簿・国税関係書類(決算関係書類)

電子帳簿とは、会計ソフトなどで電子的に作成した帳簿のことで、仕訳帳や総勘定元帳などを指します。
また、国税関係書類の決算関係書類も電子帳簿保存の対象です。決算関係書類とは、貸借対照表・損益計算書・棚卸帳などを指します。
電子帳簿と国税関係書類の決算関係書類は、「電子帳簿保存」の対象です。

国税関係書類(請求書・見積書・納品書・請求書)

自社および相手方が紙で発行した請求書・見積書・納品書・請求書などを電子的に保存する場合は、スキャンして電子データとして保存しなければなりません。
資金や物の流れに直結する契約書・納品書・請求書・領収書などは「重要書類」であるためカラー画像による読み取りが必要です。資金や物の流れに直結しない見積書は「一般書類」であるため、グレースケールでも問題ありません。


インターネットや電子メールで受領した書類データ

電子取引では、電子的に受領した契約書・見積書・納品書・請求書などを保存できます。
例えば、日付・取引先・金額といった、注文書や領収書に通常記載されている情報が含まれる電子メールは、電子メールそのものが電子取引の書類に該当するため保存が必要です。
また、クラウドサービスを介して取引先から請求書等を受領した場合や、スマートフォンのアプリを利用した際に利用明細を受領した場合も電子取引の対象です。


電子帳簿保存法に対応するメリット


紙で保管していたデータを、電子化する電子帳簿保存法を導入することにはさまざまなメリットがあります。そこでここからは、特に大きなメリットを3点ご紹介します。


コスト削減

紙でデータを保管する場合、用紙代や印刷代、取引書類の郵送代といった印刷コストや、キャビネット代やテナント代といった保管コストなどがかかります。しかし、紙を電子化することで、印刷コストや保管コストを削減できます。


業務効率化

業務の効率化も大きなメリットです。
紙でデータを保管していると、受け取ったデータを印刷して保管するファイリング作業などを行わなければならず、これらの作業は時間と労力を要します。また、保管後も必要なデータを探し出す手間がかかります。
しかし、電子化すればデータの印刷やファイリング作業が不要になり、必要なデータも検索して簡単に探し出せます。
このように、紙保管でかかっていた保管業務時間を大幅に削減し、業務の効率化が図れます。
 

優良電子帳簿システムであれば優遇制度が受けられる

2021年に電子帳簿保存法が改正された際、5つの条件をすべて満たしていれば優良電子帳簿システムで保存していると認定され、優遇制度が受けられるようになりました。その5つの条件は下記の通りです。
 

  • システム関係書類等の備付け
  • 訂正及び削除の履歴が残るシステムの利用
  • 帳簿の記録事項と関係する間の相互関連性の確保
  • 見読可能性の確保
  • 検索機能の確保

 
上の5つの条件をすべて満たした状態で、納税地の所轄税務署長に届け出をすると、優良電子帳簿の要件を満たした保存を行なっていると認定されます。優良な電子帳簿保存を行なっていると認定されると、下記の2点の優良制度が受けられます。
 

  • 所得税の青色申告特別控除の控除額65万円の適用
  • 該当の国税関係帳簿の作成・保存をすると過少申告加算税が10%から5%に減免される

 
過少申告加算税とは、所得税や法人税、消費税について申告した税額が過少であった場合に課されるペナルティです。


電子帳簿保存法に対応する際の注意点


電子帳簿保存法が施行された当初は、さまざまな要件があり、規制もかなり厳しい条項でした。しかし、改正を重ねるごとに要件が緩和され、現在は電子帳簿保存法を導入しやすくなっています。しかし、税務調査が入った際に隠蔽や改ざんが発覚した場合には、重加算税の対象となるため注意が必要です。
具体的には、仮装隠蔽に基づく期限後申告や修正申告、更生が発覚した場合には、通常課される重加算税の額に、さらに10%相当の金額が加算されます。
電子帳簿保存法は、コンスタントに改正が施行されています。そのため、専門家によるサポートのもと、適切な方法での導入が重要です。


電子取引・スキャン保存のシステム要件

電子帳簿保存法の違反により重加算税が加算されないように、電子取引とスキャン保存のシステム要件を確認しましょう。まず、電子取引のシステム要件は下記の通りです。
 

  • 見読可能装置の備え付け:電子取引の取引情報を直ちに確認できるようにしておくこと
  • 検索機能の確保:検索機能の要件をすべて満たしている
  • 関係書類の備え付け:自社開発のシステムを利用して電磁的記録を行った場合に、関連書類を備えつけておかなければならない

 
次に、スキャナ保存のシステム要件は下記の通りです。
 

  • 関係書類の備え付け:関連書類を備え付けた上でスキャン処理の規定を行わなければならない
  • 帳簿間の相補関連性の確保:スキャナ保存した書類と、帳簿間の関連性を明確にしておくこと
  • 真実性の確保:訂正・追加・削除の履歴をすぐに確認できる。タイムスタンプの導入、スキャン機器の性能水準などの要件を満たしておくこと。
  • 見読可能性の確保:複合機の性能基準などの見読性を確保しておくこと
  • 検索機能の確保:電子記録の検索機能の要件をすべて満たしている

 
参考:国税庁『Ⅱ 適用要件【基本的事項】|国税庁』
   https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/07scan/02.htm
   国税庁『電子帳簿保存法が改正されました』
  https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/pdf/0021005-038.pdf
 
関連リンク
電子帳簿保存法のスキャナ保存をわかりやすく解説!導入ステップまとめ
【改正法版】電子帳簿保存法の電子データ保存要件を徹底解説


電子帳簿保存法の対応方法


ここまでご紹介した通り、導入することでさまざまなメリットがある電子帳簿保存法ですが、緩和されてきてはいるものの、まだまだ多くの要件があります。では、電子帳簿保存法にはどのように対応すれば良いのでしょうか。
ここからは、電子帳簿保存法の対応方法をご紹介します。
 

まずは自社の状況を確認する

まずは現在の電子取引の状況を確認しましょう。営業担当者の立替経費や交通費のICカードなど経費清算に用いる支払データも電子取引の対象となるため、見落とさないよう注意しましょう。
また、電子メールに取引情報が記載されている場合には、その電子メールを保存しなければなりません。電子メールをPDFなどに変換して保存する方法や、画面のスクリーンショットを保存する方法でも問題ありません。



対応範囲の決定

次に、対応範囲を決めます。電子取引に関わる部分だけ対応するか、全面的に対応するかを決定してください。

対応方法の検討

最後に対応方法を検討します。真実性の要件は下記の4点があり、いずれか1つを満たしている必要があります。
 
①タイムスタンプが付与された後、取引情報の授受を行う
②取引情報の授受後にタイムスタンプを付与し、同時に保存をする人または監督者に関わる情報を確認できるようにしておく
③訂正や確認ができるシステム、または訂正や確認ができないシステムで取引情報の授受や保存を行う
④事務処理規定を定め、定めた事務処理規定に沿って運用する
 
中小企業では①は現実的ではありません。また、②と③はシステムの導入が必要なため、導入の手間とコストがかかります。④はコストもかからず、即座に対応が可能なため最適です。
 

電子帳簿保存法に対応した『契約大臣』をご検討ください


電子帳簿保存法は、改正が繰り返されているため、常に最新の規則に対応していなければなりません。また、さまざまな要件があり、緩和されたとはいえ導入のハードルが高いと感じる企業も少なくありません。
 
そんな時には「契約大臣」の利用がおすすめです。
契約大臣は電子契約システムですが、電子帳簿保存法に準拠た、スキャナ保存と電子取引の書類データを保存要件に準拠した保管ができる書類保管機能をご利用いただけます。
書類保管機能はオプション機能ですが、電子契約プランは無料プランのまま単体での導入が可能です。
 
本体の電子上での契約締結を可能にする電子契約機能も、電子取引の保存要件に準拠しています。また、契約に関する法的対応も、電子署名やタイムスタンプによって契約が締結されたことを証明可能にします。
低コストでシンプルな機能のため、初めての場合でも安心してご利用頂けます。まずは資料を請求して無料お試しをご利用ください。
 

参考:国税庁『電子帳簿保存法が改正されました
   国税庁『Ⅱ 適用要件【基本的事項】|国税庁


記事監修者

税理士、藤和税理士法人パートナー
安井貴生

税理士業界で20年超の経験があり中小企業~100億円を超える企業まで多くの法人を担当。
法人の税務を得意としているが、M&Aや国際税務、相続などの案件も数多く手がけている。
また相続・人事労務関連コラムの執筆や、納税協会における経理担当者向けのセミナー講師など幅広く活躍中。


※この記事は2022年3月時点の情報を基に執筆し、2023年7月に更新されています。

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