契約書は実印以外の印鑑は無効?契約の効力と印鑑の役割

更新: 2022-07-12 15:42

契約書に捺印(押印)するときに、「実印を持っていなくて困った」「実印を忘れた」ということはないでしょうか。この記事では、契約書への捺印は実印以外ではいけないのか?他の印鑑との使い分けは?といった疑問に答えます。

  • 目次

日本では、何かの契約を交わす際やビジネスシーンにおいて、書類に印鑑を押すことが日常化していますよね。
特に高額な金銭が発生する契約や重要な契約を交わす場合は、押印が必要なケースがほとんどです。

その際、印鑑はどのようなものを使用していますか?
また、契約を交わしたことがあるという方の中で、どれくらいの方が「実印」を持っているのでしょうか。
今回は、意外と知られていない「印鑑」の役割と種類についてご紹介します。

法的には実印以外の印鑑でも問題ない


まず、契約を交わす際に押印する印鑑は、必ずしも実印でなければならないというわけではありません。
さらに、普段契約書を交わす際に当たり前のように押印している印鑑も、法律上はなくても問題ないということをご存知の方は少ないのではないでしょうか。

民事訴訟法では、私文書は、本人又はその代理人の署名又は押印があるときは、真正に成立したものと推定するとされており、契約書への「署名又は押印」のどちらかがあれば契約が真正に成立したものと推定されています。印鑑がない場合でも署名だけで契約が成立することになります。

● 契約そのものは口約束でも成立する


そもそも契約は、特定の決まりがある場合を除いて、双方の合意があれば書面の作成や押印がなくても成立します。
契約書は法律上の必要性もなく、記入や押印などの手間がかかるにも関わらず、なぜこんなにも日常的に使用されているのでしょうか?

書面がない場合の契約は、口約束となりますね。
もし、当事者のどちらか一方が「そのような契約を交わした覚えがない」と言い出したとしても、口約束では実際に契約を交わしたことを証明する術がありません。

そのような事態を防ぐため、「契約当事者双方が合意の上で契約をした」という証拠として契約書が必要というわけです。
また、契約書には「契約を交わした」ということを証明するためだけでなく、契約時の取り決めた内容を記載しておくことで、双方の意見の食い違いを防ぐ目的もあります。
法律で定められたものでなかったとしても、何か問題が生じた際に目で見える形で残るものがあると安心して契約できますよね。


なぜ契約書には実印を求められる?


ビジネスシーンの重要な契約や個人での高額な契約を交わした際には、普通の印鑑ではなく「実印」を使用したという経験がある方も多いのではないでしょうか。
若い方だとまだあまり馴染みがないかもしれませんが、所在地の市区町村に申請し、「印鑑登録」した判子のことを「実印(じついん)」と呼びます。
さらに、実印は一人につき一つしか登録することができません。(変更を希望する場合は所定の手続きが必要)

そして、印鑑登録をした「実印」は、役所で「印鑑証明書」を取得することが可能です。
その印鑑証明書と実印を併せて提出することで初めて、その印鑑が自分の印鑑であるということを公的に証明できることになります。

このように「実印」は、登録にも証明にも役所を介さなければ効力を発揮できません。
そのため、「本人のものである」という証拠能力が高く、このような点が重要な契約時には「実印」が求められることが多い理由として挙げられます。

● 会社設立の際には必須!「会社実印」とは?


上記は個人で作成する実印の場合ですが、会社を設立する際や法人登記する際は、会社用の実印登録が必須になります。
会社用の実印は、そのまま「会社実印」もしくは「法人実印」など様々な呼び方をされています。また、法人を代表して押印する印鑑であることから「代表者印」と呼ばれることもあるようです。

会社で実印を作成する場合は役所ではなく、法務局へ届出を提出する必要があります。
個人・会社どちらの場合でも、届出を提出して公的に認められた印鑑のみ「実印」と呼ばれています。



● 契約書に認印を押印するリスク


届出をして公的に認められた印鑑を「実印」と呼ぶのに対し、届出をしていない印鑑のことは「認印(みとめいん)」と呼びます。
「認印」は、文房具店や100円ショップなどでも購入することができるため、日常生活でよく利用しているという方も多いのではないでしょうか。

既製品の印鑑は気軽に購入できるというメリットがありますが、裏を返せば誰にでも購入できるものであるため、重要な契約書への押印には不向きです。
もしそのような印鑑を様々な契約時に乱用していた場合、別の書面に押した印影から同じ印鑑を探し出され、第三者に悪用されてしまう可能性も考えられます。

誰にでも購入できる既製品の印鑑は「本人による押印」であることを証明するのが難しく、「全く身に覚えのない契約書に勝手に押印され、契約されてしまっていた」ということがあってもおかしくはありません。
このようなことからも、重要な契約を交わす場合に認印ではなく実印が求められる理由がよく分かりますね。

● 実印・銀行印・認印それぞれの役割


印鑑には様々な種類がありますが、ここからは「実印」「銀行印」「認印」とはそれぞれどのようなシーンで利用されるものなのか、また併用しても良いものなのか等ご紹介します。

● 実印

「実印」は主に、高額な金銭が発生する契約時に用いられることが多い印鑑です。
例としては、次のような契約が挙げられます。

【実印が用いられる契約】

  • 家や土地、不動産などの購入・売却時
  • 自動車の購入・売却・譲渡時
  • ローンを組む時
  • 生命保険や自動車保険等の各種保険の加入・受取時
  • 遺産相続をする時 など


印鑑を実印登録する場合には、いくつかの規定を守る必要があります。
また、それらの規定は市区町村によって異なるため、実印登録をお考えの方は印鑑を購入する前に、所在地の役所に問い合わせてみると良いでしょう。

【実印を印鑑登録する際の条件】

①形とサイズ
判子の形は、一般的な「円形」の他、「楕円形」や「角形」のものでも登録することが可能です。
しかし、押印した時に文字を囲む輪郭がないものや欠けているものは認められないため、実印用の判子を選ぶ際は輪郭部分に欠けがないかチェックしておきましょう。
変形しやすい「ゴム印」や、使用頻度と共に擦れてしまう「スタンプ印(シャチハタとも呼ばれる)」などは実印には不向きのため、避けた方が無難です。
また、サイズに関しても、小さすぎず大きすぎない8~25mm程度の正方形に収まるものを選べば問題ありません。

②刻印
個人の判子の場合、名字が刻印されているものが一般的ですが、中には名前のみやフルネームの判子を実印にする方もいます。
基本的には、名字のみ・名前のみ・フルネームの判子は全て実印にすることができますが、戸籍上の名前であることが条件です。
つまり、戸籍に漢字で名前が記載されている方は、ひらがな・カタカナ・ローマ字で刻印した判子を実印登録することができません。
仕事上の役職や職業が入ったものや、イラスト入りのものもNGとなります。
また、結婚して名字が変わった場合は、旧姓の判子を実印登録することができなくなりますので、その点でも注意が必要です。

③市区町村の中には「三文判」が認められない所も
誰でも気軽に購入することができる文房具店や100円ショップで購入できる印鑑(三文判)の場合、市区町村によっては実印登録することができない可能性があります。
これらの規定は各地域によって異なるため、事前に確認することをおすすめします。



● 銀行印

「銀行印」とはその名の通り、銀行や信用金庫などの金融機関に届出をしている判子のことです。
ATMでは使用する機会がないため、馴染みがない方も多いかもしれません。
しかし、銀行や信用金庫に口座を開設する際には必ず印鑑の届出が必要になりますし、その他でも様々なシーンで銀行印の確認が求められます。

【銀行印の利用シーン】

  • 新規で口座を開設する時
  • 窓口で預貯金をする時(引き出し・預け入れ)
  • 口座振替の申込み時
  • 住所変更・氏名変更などをする時
  • クレジットカード作成時 など


最近はインターネットバンキングが主流になり、銀行印の届出を不要とする銀行も増えてきています。
とは言え、まだまだ需要のある銀行印。ここからは、「銀行印」として登録される印鑑の特徴やポイントについてご紹介します。

【銀行印として登録する印鑑の特徴】

● 特別な規定はなし(スタンプ印・ゴム印不可)
銀行印として登録する印鑑は、形・サイズ・刻印など全て自由で特別な規定はありません。
ただし、朱肉不要のスタンプ印(シャチハタ)やゴム印は、経年劣化が懸念されるため登録不可とされています。

● 普段使いの印鑑とは分ける
普段から書類や荷物の受け取りなどで気軽に使用している「認印」は、多くの人の目に触れているものです。
悪用されるリスクを回避するためにも、「銀行印」として登録する印鑑は普段使用している「認印」とは別のものを用意しましょう。

● なるべくオーダーメイドがおすすめ
文房具店や100円ショップで販売されているものを手軽に購入し、銀行印として登録することも可能ですが、量産されている印鑑を登録する場合は悪用のリスクも考慮しなければなりません。
大切な財産を預けるための登録印なのですから、偽造される可能性の低いオーダーメイドの印鑑を作られることをおすすめします。
銀行印の登録には実印ほどの規定はありませんが、大切なお金を預ける機関だからこそ、悪用されることのない判子を登録したいですよね。

● 認印

「認印」は、届出をしていない判子のことで、簡単に言うと普段使い用の印鑑のことです。
「実印」や「銀行印」として届出をしていない全てが「認印」となり、最も利用頻度の高い印鑑とも言えます。

【認印の利用シーン】

  • 荷物の受け取り
  • 各種手続きの際の書面への捺印
  • 婚姻届・離婚届・出生届等役所へ提出する書類
  • 社内での事務作業や書類への確認 など


また、一口に「認印」と言っても、朱肉を必要とする「印鑑」と簡易的なスタンプ印である「シャチハタ」の2種類があります。
それぞれの特徴は次の通りです。

【朱肉を使う印鑑の特徴】

  • 公的な書類に押印できる
  • 規定を満たしていれば、「実印」や「銀行印」として登録できる
  • 朱肉がないと押印できない


【シャチハタの特徴】

  • 朱肉が必要ないので手軽に押印できる
  • 公的な書類は使用不可であることが多い


それぞれの用途に合わせて使い分けができるため、2タイプの認印を持っていると便利ですね。

● 実印を作るのには、いくら費用がかかる?


では実際に「実印」「銀行印」「認印」をオーダーメイドする場合、いくらくらいの費用がかかるのでしょうか。
結論から申し上げると、印鑑をオーダーメイドする場合、材質やサイズ、作成するお店によっても料金は大きく異なります。
ここからは、それぞれの印鑑を作成する際の一般的な費用やおすすめの材質などをご紹介します。

実印・銀行印・認印それぞれの平均相場


個人差もありますが、一般的には以下の様な相場で購入する方が多いようです。

  • 実印:大体5,000円~高額なものだと30,000円以上のものまで
  • 銀行印:1,000~高額なものだと10,000円程度まで様々
  • 認印:100円ショップのもの~数百円程度のものが多い


《種類別》実印・銀行印・認印それぞれによく使用される材質とその特徴
一口に「印鑑」と言っても、様々な材質のものがあるということをご存知でしょうか?
それぞれの材質とその特徴を以下にまとめました。


● チタン

"最強の印鑑"との呼び声が高い「チタン」は、ベーシックな印鑑の材質としてとても人気を集めています。
強度はもちろんのこと、耐久性や摩擦性、印影の美しさなど全てにおいて優れているため、「実印」「銀行印」「認印」全ての印鑑におすすめです。

● 象牙

"印材の王様"とも呼ばれる「象牙」は、印鑑に使われる素材の中でも最高級だと言われています。
耐久性と摩擦性に優れた象牙の印鑑は、朱肉の吸着性も良く、印影が美しいことでも有名です。一度作れば一生モノになるため、「実印用」としてよく選ばれています。
持った時にしっかり感じる重量感も、実印向きと言えます。

● 黒水牛

長く使用できる素材が好まれる「実印」には、高い耐久性を誇る「黒水牛」の印鑑も人気です。
また、黒水牛は程良い高級感がありながらもお手頃な価格帯であることが多く、「銀行印用」としても高い人気を誇っています。

● 柘(つげ)

手軽でポピュラーな「柘(つげ)」は、一般的な印鑑によく使用されている素材です。
材質が木材のため、キメ細やかな質感で朱肉のノリも良く、「美しい印影になる」ことでも人気を集めています。
ただし、天然素材を使用していることから気温や湿気の影響を受けやすく、他の材質に比べて劣化が早いというデメリットもあります。
「実印用」として選ばれることもありますが、「銀行印」や「認印」など幅広く好まれていることも特徴です。

● プラスチック

「プラスチック」制の印鑑は、主に文房具店やホームセンター、100円ショップなどで手軽に購入することができます。
プラスチックはリーズナブルな価格帯と使い勝手の良さから、「認印」として日常的に使われることの多い素材です。

電子契約は印鑑不要で契約が完了する


上記したように、書面でのやり取りには「本人が了承して署名捺印をした」という確認の意味も込めて、印鑑の押印が必要でした。
しかし近年、デジタル化や非接触契約への移行が進む中で、「電子契約」が注目されはじめています。

電子契約は、契約書自体が電子データのため、印鑑を押印する必要がありません。
また、収入印紙や郵送代なども不要なため、経費削減にも繋がります。

さらに、契約書の作成から締結まで全てオンラインで完結するため、対面でのやり取りは不要。そのため、テレワーク中や外出先などでも契約の締結が可能です。
このように様々なメリットがある「電子契約」ですが、紙の契約書と同等の法的効力があると認められているため、様々なシーンで取り入れられるようになりました。

印影は画像データにすることもできる

基本的に電子契約の場合は、印鑑の押印は不要です。
しかし中には、契約相手から印影の提出を求められることもあります。
そのような場合には、印影を画像データ化して契約締結時に添付することができる電子契約システムもあり、ニーズに合わせて様々なものが用意されています。

このような場合は、あくまでも紙の契約書での慣例にならってのことであり、電子契約の場合、基本的に印影は必須ではないということを覚えておくとよいでしょう。

● 電子契約はお試し利用ではじめるのがおすすめ


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