商品やサービス等を売買取引をする際に、売主と買主の間で用いる契約のことを「売買契約」と言います。売買契約の目的は、契約の目的を明確にし、トラブルの発生リスクを軽減することにあります。今回は、売買契約書を作成する際に特に重要な「売買における検査義務(商法526条)」について解説していきます。
会社間で物の売り買いや様々なサービスを受ける際に用いられる「売買契約書」。
契約書は本来、取引をスムーズにするために作成するものですが、内容に不備があると思わぬトラブルに発展し、ひいては損害賠償責任を追及される可能性もあります。
今回は、売買契約書を作成する際に特に重要な「売買における検査義務(商法526条)」について解説していきます。
いざという時にトラブルにならないよう、商法526条の内容やポイントを理解しておきましょう。
商品やサービス等を売買取引をする際に、売主と買主の間で用いる契約のことを「売買契約」と言います。
売買契約の目的物には様々なものがありますが、特に大きな金額が動く取引の際には、当事者間に同意があったことを書面に残しておくことが重要です。売買契約の目的は、契約の目的を明確にし、トラブルの発生リスクを軽減することにあります。
そのため、売買契約書を作成する際には「抜け」や「不備」がないよう注意しなければなりません。
売買契約の場合には、1回のみの取引なのか複数回に及ぶのかによって、交わす契約書が異なります。
1回限りの契約の場合は「売買契約書」には下項「商法526条を踏まえて、売買契約書に記載する必須事項」の内容を記載しますが、複数回の取引の際には、売買契約書の他に「売買基本契約書」を作成するのが一般的です。
複数回の取引の場合、共通する項目を「売買基本契約書」に記載し、目的物・代金・納期など契約毎に変更になるものに関しては、その都度「売買契約書」に明記して締結します。
売買契約書の基本的な内容については上の項目でご説明した通りですが、売買契約書は「商法526条」を踏まえて作成する必要があります。
「商法526条」は売買契約書作成時に特に重要な内容となりますので、しっかり理解しておきましょう。
商法第526条は、以下の内容で規定されています。
「商人間の売買において、買主は、その売買の目的物を受領したときは、遅滞なく、その物を検査しなければならない。」
引用:e-GOV法令検索(商法第526条)
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=132AC0000000048_20200401_429AC0000000045#Mp-At_526
買主は、商品やサービスなどの目的物が売主によって納品された後、遅滞なく目的物に欠陥や不備がないかを確認する必要があります。
商法526条2項にも次のような記載があります。
「買主は、同項の規定による検査により売買の目的物が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しないことを発見したときは、直ちに売主に対してその旨の通知を発しなければ、その不適合を理由とする履行の追完の請求、代金の減額の請求、損害賠償の請求及び契約の解除をすることができない。」
引用:e-GOV法令検索(商法第526条第2項)
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=132AC0000000048_20200401_429AC0000000045#Mp-At_526
検査の結果、万が一不備が見つかった場合、買主は売主に直ちに通知しなければなりません。
これを、「売買における検査義務」と言います。
なお、売買の目的物が種類又は品質に関して契約の内容に適合しないことを直ちに発見することができない場合であっても、買主が6か月以内にその不適合を発見したときは、その不適合を理由とする履行の追完の請求、代金の減額の請求、損害賠償の請求及び契約の解除をすることができます。
「売買の目的物が種類又は品質に関して契約の内容に適合しないことを直ちに発見することができない場合において、買主が六箇月以内にその不適合を発見したときも、同様とする。」
引用:e-GOV法令検索(商法第526条第2項)
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=132AC0000000048_20200401_429AC0000000045#Mp-At_526
買主が売主に通知をしなかったり、6ヶ月以内に契約不適合が発見できなかった場合は、売主に対して損害賠償請求や契約解除ができなくなってしまうため、注意が必要です。
上記のことを踏まえ、どのような売買契約書にも共通して記載すべき基本的な内容について、一覧表にまとめました。
売買契約書の基本的な内容、商法526条について解説してきましたが、ここからは売買契約書作成時に注意するべきポイントについてお話していきます。
法律には、「強制規定」と「任意規定」の2種類があります。
それぞれの意味は次の通りです。
商法526条は、この「任意規定」にあたります。そのため、一定の規定を抑えておけば、契約書の内容を自由に変更することが可能です。
ただし、契約書の内容に関しては、売主と買主の双方の合意があった上で変更する必要があるということを覚えておきましょう。
また、商法526条における「検査義務」は、相手が個人の場合の取引には適用されません。
つまり、商人間の取引においてのみ適用される法律であることを覚えておきましょう。
また、売主が取引物に欠陥があると知っていた場合にも商法526条2項は適用されません。
こちらは、商法526条の第3項に記載されています。
「売買の目的物が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しないことにつき売主が悪意であった場合には、適用しない。」
引用:e-GOV法令検索(商法第526条第3項)
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=132AC0000000048_20200401_429AC0000000045#Mp-At_526
商法526条は、売主視点と買主視点を分けて考える必要があります。
「任意規定」である商法526条は、当事者間で自由に契約書の内容を変更することが可能です。そのため、それぞれに不利益になることはないか等、契約書の記載内容をしっかりと確認した上で契約を締結しましょう。
これらのことを踏まえ、それぞれの立場から見たポイントについてまとめました。
買主は、商法526条のままだと一定の期間が経過すると売主に対して権利行使ができなくなってしまうため、契約書に特約条項を盛り込むなどの対応を検討しましょう。
例えば、検査ですぐに発見できない不具合があった場合に、6か月経過後でも返品や交換ができるなどの特約条項が記載されていれば安心ですね。
商法526条は売主にとって有利な規定ではありますが、買主が契約書を作成する際はしっかり内容に目を通す必要があります。
検査期間の延長などが盛り込まれている可能性がありますので、売主に不利な条件になっていないか等をしっかり確認しましょう。
「売買契約書」は、基本的な内容を押さえておけば内容を変更することができるということをお話してきました。しかし、相手の同意のない契約条項の追加や不備は、思わぬトラブルに発展する可能性があるため注意が必要です。
なかには、「裁判になって損害賠償請求された」という例もあります。
契約トラブルを防ぐためにも、売買契約書の作成は専門的な知識を有する弁護士や行政書士に依頼するという方も少なくはありません。しかし、プロに頼むにはコストがかかるというデメリットも挙げられます。
電子契約システム『契約大臣』は、多彩な契約書テンプレートをご用意しています。専門的な知識を要する契約書作成も、オンライン上ですぐに作成することが可能です。
作成したら電子メールですぐに取引先に送られるため、郵送料や収入印紙も必要ありません。
特に売買契約書の場合、印紙税法で定められた「課税文書」には収入印紙が必要不可欠です。収入印紙を貼り忘れると追徴課税を支払う必要があるため、注意しなければなりません。
つまり電子契約は、印紙代の削減になるだけでなく、書類作成時のミスの軽減にも繋がると言うことです。
多くの時間や人員が必要だった契約書作成業務がオンライン上で簡単に作成できるようになるため、業務のスリム化・コスト削減も実現します。
近年様々な契約の電子化が進んでいることからも、電子契約システムを取り入れる企業が増加し続けています。
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