請負とは?請負契約と委任契約の違いや注意点などわかりやすく解説

更新: 2022-12-28 19:14

請負契約とは、発注者(依頼人)から業務を請け負った者(請負人)が、業務の完成を約束し、請負人が成果物を納品した対価として、発注者が代金を支払う契約のことを言います。この記事では、請負契約はどのようなものなのか、契約の際に気をつけなければならないポイントなどを解説します。

  • 目次

「仕事を外注したいけれど、契約って何があるの?」
「請負契約をしたいけれど、どうやればいいのだろう?」
このようなお悩みはありませんか。

この記事を読むと、請負契約はどのようなものなのか、契約の際に気をつけなければならないポイントなどがわかるようになります。ぜひ、最後までご覧ください。

請負契約とは?


請負契約とは、発注者(依頼人)から業務を請け負った者(請負人)が、業務の完成を約束し、請負人が成果物を納品した対価として、発注者が代金を支払う契約のことを言います。
このことは、民法第632条に定められています。

(請負)

第六百三十二条 請負は、当事者の一方がある仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対してその報酬を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。

引用:民法|(g-Gov法令検索)第九節 第六百三十二条
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=129AC0000000089

例えば、成果物を納品後に修正などの依頼があった場合には、請負人はそれに応じなければなりません。
成果物が完成されなければ、依頼人は代金を支払わなくていいことになっています(民法第624条に記載)。

請負契約と民法改正の関係性


請負契約には、旧民法により「瑕疵担保責任」が定められていました。
これは、「納品したものに欠陥が見られる場合、請負人はその責任を負う」というもので、旧民法634条、635条などに記載されていました。

しかし、瑕疵担保責任で依頼人に保障されている権利は損害賠償請求権および解除権のみとなり、他の権利が含まれていません。
そのため、民法改正により瑕疵担保責任は廃止され、新たに「契約不適合責任」が設定されました。
契約不適合責任とは、「成果物が契約内容に適合しない場合、請負人はその責任を負う」というものです。

これにより、成果物が契約内容に不適合と見なされた場合は、依頼人は以下の4つの請求権のうち、いずれかを実行できます。

  • 追完請求(物の引き渡し後に品質などにおいて契約不適合が見つかった場合、補修や代替品の引き渡し、または不足分の引き渡しを請求すること)
  • 代金減額請求(契約不適合分の代金を減額するよう請求すること)
  • 損害賠償請求(請負人に責任がある場合、依頼人が受けた損害分の賠償請求をすること)
  • 解除請求(契約を解除したいと請求すること。請負人に責任があっても、その時までにかかった費用の支払いが原則必要になる)


請負契約と民法改正の関係性
 

未完成な成果物の報酬請求権について

請負契約においての報酬請求は、成果物を完成させ、納品することが原則です。

しかし、何らかの事情で成果物が未完成(一部完成)のまま契約解除になることもあるでしょう。
旧民法では、未完成な成果物に対しての報酬請求について明らかになっていませんでした。

それが、法改正により、未完成の成果物でも依頼人に利益が発生した場合、出来上がった部分を「仕事が完了したもの」と見なし、割合によって報酬の請求が可能になりました。

例えば、システム開発において、請負人が開発途中で契約を解除され、依頼人が手を加えて製品として発売された場合には、請負人は開発を手がけた部分の報酬が請求できるということです。
これは、民法第634条に記されています。

また、依頼人・請負人双方に特に責任がなく契約解除となった場合は、請負人は利益に応じた報酬を請求できます。
なお、請負人側に問題がある場合は、依頼人は請負人に対し損害賠償請求が可能です。

責任追及期間制限の延長について

責任追及期間の延長についても、民法の改正により変更になった部分です。
法改正により、成果物に不適合な部分を見つけたときは、その日から1年以内に請負人に通知すれば、請負人への責任追及が可能になります。

旧民法では、原則として「成果物を引き渡した日から1年以内」と定められていたため、引き渡し後1年以上経過してから不適合を発見した場合は責任追及ができなかったのです。
これでは依頼人に不利益が生じてしまうため、民法の改正に至りました。

そのため、法改正では旧民法の「引き渡した日から1年以内」から、引き渡しから1年以上経過していても、「不適合を見つけた日から1年以内」であれば、責任追及をできるように定めました。

責任追及期間制限の延長の権利は、依頼人が不適合に気づいてから5年間、または業務の完成後10年間追求しなかった場合、時効になり消滅するので注意しましょう。

請負契約と委任契約・準委任契約の違い


請負契約とよく似た契約に、委任契約・準委任契約があります。
この2つの契約と、請負契約の違いについて説明します。

 

委任契約との違い

請負契約と委任契約の大きな違いは、「仕事を完成させることが目的であるかどうか」にあります。
委任契約とは、成果物の完成を目的とせず、法律に基づいた一定の行為に対して報酬を支払う契約です。
例えば、弁護士や税理士などに業務を依頼することなどが該当します。

請負契約は仕事を完遂させることにより報酬を支払いますが、委任契約は、行為を行うことに対して報酬を支払います。
委任契約は「仕事の完成」が目的ではないのです。
また、請負契約は成果物に不適合が生じた場合は責任を負いますが、委任契約にはそれがありません。

準委任契約との違い

準委任契約は、行為を行うことを目的としている点では委任契約と同じです。
しかし、準委任契約は「法律に基づかない業務」に対して交わされる契約になります。
つまり、請負契約との違いは委任契約と同様です。

準委任契約の例として、介護サービスや家事代行サービスなど、法律以外の業務が該当します。

請負契約と委任契約・準委任契約の違い

請負契約書とは?


請負契約書とは、請負契約を交わす際に作成される、契約の内容を明らかにした契約書のことです。
請負契約書には、以下のような内容が明記されています。

  • 業務の内容
  • 報酬について(金額・支払い方法)
  • 納入方法や検収方法
  • 期日
  • 契約不適合責任について
  • 契約の解除についてなど


請負契約そのものは契約書がなくても成立します(契約書の作成義務がある建設工事の請負契約を除く)。
しかし、契約書がないとトラブル時に更に問題が大きくなる可能性があるので、契約内容は書面に残すようにしましょう。

請負契約書を作成する際のポイント


請負契約書を作成する際の4つのポイントをご紹介します。
契約書作成は難しく感じるかもしれませんが、ポイントを押さえておくと、漏れや間違いのない契約書が作成できることでしょう。

成果物に必要な材料費負担・知的財産権について定める

成果物を作成するには材料費等の費用がかかります。
この材料費等の負担を「どちらが行うのか」「どこまでを負担するのか」「予算をオーバーしたときはどうするのか」を事前に決めておくと、材料を購入する際、トラブルにならずに済むでしょう。

また、ソフトウェア開発などの場合は、成果物に知的財産権や著作権などの権利も発生します。
これらの権利を依頼人が持つのか請負人が持つのか、事前に取り決めておくことも重要です。
知的財産権を請負人が持つ場合は、依頼人はその成果物を使用する際に使用料を支払うケースも発生します。

そのため、知的財産権・著作権などの権利は依頼人に帰属させる傾向にあります。
納品後、成果物に含まれる知的財産権を使用することが考えられる場合、権利が請負人側にあると、その都度使用料を支払う可能性があるからです。

知的財産権や著作権は依頼人に帰属し、報酬の中に知的財産や著作権を請負人より譲渡してもらう代金も含まれていることを明記しておくことで、追加料金の発生を防げます。
同様に請負人側が著作者人格権を行使しないということも定めておくことが一般的です。

そのようなことも踏まえて、知的財産権や著作権についても合意の上、細かい所まで定めるようにしましょう。

契約の内容・支払い金額や方法などを記載する

今回の契約はどのような業務内容に対してなのか、また、支払金額や方法、支払われる時期なども事前に決めておく必要があります。

例えば、成果物をいつまでに納品し、いつまでに検収するなどということも、契約書に記載されていると業務が進めやすくなります。

特に、長期的なプロジェクトでは「この段階まで成果物ができたら、いつまでにいくら払う」といった契約になることもあるでしょう。
その際に、支払うタイミングなどが明確にされていないと、双方がどうしていいかわからなくなってしまいます。

このような内容は、できるだけ細かく契約書に記載したおいた方が賢明です。

契約不適合責任について記載する

契約不適合責任とは、例えば、請負人が成果物を納品した後に何らかの欠陥が見つかった場合、請負人はその責任を負うことを指します。
このことは民法に定められている依頼人の権利および、請負人の義務でもあります。

このような責任についても、契約書に記載しておくべき事項です。成果物に不備が見つかった場合、請負人がどれだけの責任を負うのか、また、依頼人がそのような請求権を行使できるのか、事前に条件を定めておくとトラブルになる可能性が低くなります。

また、契約不適合責任により契約解除が発生する場合は、その旨も記載した方がいいでしょう。

契約の解除について定める


契約の際は、契約の解除についても定めて契約書に記載しましょう。

原則として、依頼人は仕事が完成するまでの間であれば、損害賠償を支払った上で依頼人都合で契約解除ができるとされています(民法第641条に記載)。

しかし、これでは請負人側に不利益が生じるため、あらかじめどのようなときに契約解除になるのか、契約解除になった場合の報酬はどうなるのか、事前に双方で取り決め契約書に明記しておくと、トラブルの回避に繋がります。

契約解除となる例は、以下のとおりです。

  • 契約書の規定に違反したとき
  • 期日までに成果物が納品されないとき
  • 依頼人による都合など


請負契約書を作成する際のポイント

請負契約書の収入印紙について


請負契約書は、印紙税額一覧表における第2号文書「請負に関する契約書」に該当するため、金額に応じた収入印紙を貼る必要があります。

契約書に貼る収入印紙の金額は、以下の一覧のとおりです。

契約書に貼る収入印紙の金額

請負契約に関する契約書であっても、内容により取り扱いが異なります。
例えば、営業者の間によって継続する複数の基本的な取引条件が記載されたものは、第7号文書「継続的取引の基本となる契約書」が該当する場合があります。

また、建設工事の請負契約書においては注意が必要です。
契約金額が一定額を超えて、期間が平成9年4月1日〜令和6年3月31日の間に作成されるものに関しては印紙税額が少なくなります。

この期間に建設工事の請負契約書を作成する場合は、印紙税額を間違えないようにしましょう。

請負契約を締結する際の注意点


請負契約を締結する際には、いくつか注意しなければいけない点があります。
その中から、3つ紹介します。
 

「偽装請負」に該当しないか確認する

契約を結ぶ際は、その契約が「偽装請負」に該当しないか確認しましょう。
本来は労働者派遣契約を結ばなければならないのに請負契約を結んでしまうと、「偽装請負」となります。

労働者派遣契約は、労働者が派遣元の会社と雇用契約を結び、派遣先の会社で業務を担う契約です。この場合、労働者と派遣先の会社は指揮命令関係にあり、労働者は派遣先の指揮に従います。

しかし、請負契約には請負人との指揮命令関係はありません。

請負契約により業務を行っているのに、業務内容の指示を出すようなことをすると、労働者派遣法の対象となり、契約違反と見なされるのです。

「偽装請負」が判明すると以下のような罰則が科せられる可能性があります。

  • 労働者派遣法・職業安定法・労働基準法に基づく罰金
  • 行政指導
  • 業務改善命令
  • 勧告
  • 企業名の公表


契約を締結する際には、その内容が「請負契約」なのか「労働者派遣契約」なのか、確認を忘れないようにしましょう。

成果物の権利の所在を明らかにする

外部に業務を発注し請負契約を締結した場合、完成した成果物の権利は誰が持つのか明らかにしておく必要があります。

成果物にはさまざまな権利が発生します。

  • 著作権
  • 知的財産権
  • 特許権など


これらの権利の所在を明らかにしないまま、発注者が受注者に確認をせずに使用し、後でトラブルになることも考えられる事態です。

トラブルを回避するためには、「完成した成果物の著作権や知的財産権などの権利は発注者に帰属する」のような文言を契約書に加えておく必要があります。

著作権や知的財産権などは目に見えないため、契約時に確認が漏れてしまう可能性もあります。
契約の際には、このような権利の所在についても、双方で確認・合意し、内容は契約書に必ず記載するようにしましょう。

労災事故が起きたときにどうするか事前に確認する

請負契約の業務内容はさまざまなものがあり、転落のような労災事故が起こる可能性も否めません。
このような場合、誰が医療費を負担するのか、休業補償はどうなるのか、双方で事前に確認しておく必要があります。

一般的に、請負契約は雇用関係がないため労災は使用できません。
しかし、業務内容が社員とほぼ変わらないと見なされた場合は、労災保険が適用される場合があります。

労災事故が考えられる業務を請負契約で締結する場合には、どのようなときに労災保険が適用されるのか、事前に確認するようにしましょう。

労災事故が起きたときにどうするか事前に確認する

請負契約の流れ【ケース別】


請負契約は、短期的なものと、長期的なものがあります。
それぞれの流れをわかりやすくまとめました。

短期的な請負契約の場合

短期的な請負契約の流れはこのようになっています。

  1. 業務を依頼する側(依頼人)が依頼書を受注者側(請負人)に送付する
  2. 請負人が見積書を提出する
  3. 依頼人が発注書を提出する
  4. 請負契約書を作成し、双方合意の上で署名・捺印する(締結)
  5. 成果物が完成したら納品する
  6. 成果物を受け取った依頼人は検収をする
  7. 問題がなければ、請負人は依頼人に請求書を送付する
  8. 依頼人が報酬を支払う


契約自体は口頭でも成立しますが、流れを明確化、トラブルを回避するためにも各段階で書類を作成し、記録として残すのが賢明です。

長期的な請負契約の場合

長期に及ぶ請負契約についても、契約締結の流れは短期とあまり変わりません。

ただし、長期的な契約になればなるほど、出来高を確認しつつ、一定期間ごとに報酬の支払を支払うといった方法や契約内容の変更が生じることが考えられます。
その場合は、着手金の有無、どこまで完了したら報酬の何%を支払うか、締め日や支払日やいつになるのか等を明らかにしましょう。

例えば、契約が長期にわたり毎月報酬を支払う場合は、「毎月○日締め・翌月○日支払い」など、締め日と支払日の設定を契約書に記載する必要があります。

業務を進めていく内に契約書に変更したい内容が生じた場合は、「覚書」を作成して、双方で合意の上で契約内容を変更するようにしましょう。

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まとめ


請負契約は、成果物の完成を目的として、それが達成されたときに依頼人が報酬を支払う契約です。
請負契約の内容は基本的に自由に決められますが、さまざまな法律の定めがあるので、それらに違反しないように注意しましょう。
契約書を作成する際には、記載内容にも注意する必要があります。

請負契約を締結する際には、電子契約システムを活用すると便利です。
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