労働基準法とは?人事担当は必見!義務や違反条件をわかりやすく解説

更新: 2023-07-07 14:52

労働基準法は昭和22年に制定された法律で、労働条件の最低基準について定めています。

  • 目次

自社の就業規則を作成する際や見直す際には、労働基準法についても知っておく必要があります。
しっかりと知識を得ておけば、労働基準法を遵守した就業規則を作れるでしょう。
労働基準法は改定されることもあるため、就業規則を見直す場合には再確認も必須です。

この記事では、労働基準法についてわかりやすく解説します。
義務だけでなく違反となる条件についての知識を持ち、労働基準法に則した就業規則を作りましょう。


労働基準法とは?


最初に、労働基準法とはどのようなものなのか、その概要や目的、対象者についてご紹介します。

労働基準法の概要

労働基準法は昭和22年に制定された法律で、労働条件の最低基準について定めています。
労働基準法は労基法とも呼ばれ、下記の日本国憲法第27条第2項を受けて制定されました。

第二十七条 すべて国民は、勤労の権利を有し、義務を負ふ。
② 賃金、就業時間、休息その他の勤労条件に関する基準は、法律でこれを定める。

引用元:(e-GOV法令検索)昭和二十一年憲法 日本国憲法
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=321CONSTITUTION

この労働基準法には、労働時間や休日、休憩、賃金や雇用契約などについての規定が明記されています。
労働者を抱える雇用者は、労働基準法を正しく理解して雇用していかなければなりません。


労働基準法の目的

労働基準法は、労働者の権利を守り、安全に働くために制定されました。
一般的に雇用者と労働者では、雇用者の立場が強くなりがちです。
これによって労働者が不利な立場にならないようにすることが、労働基準法の目的です。

労働時間や休憩などについても、最低限の基準がなければ過酷な労働を強いられることがあるかもしれません。
過酷な労働は時に労働者の生活や命をも脅かすことがあるため、労働基準法には労働者の生活や命を守る目的もあるといえます。


労働基準法の対象者

労働基準法は、労働者を抱えるすべての雇用者が守るべき法律です。
労働者が大勢いる場合はもちろんですが、たった一人の労働者であっても、同じく労働基準法を遵守しなければなりません。
また、雇用している労働者が正社員だけでなく、契約社員や派遣社員、アルバイトやパートであっても労働基準法の対象です。
すべての人が安全に働くために、労働者を抱えるすべての企業は労働基準法を守る義務があります。


労働基準法は罰則付きの法律

労働基準法に違反した場合、その内容によって罰金や懲役などの罰則が科されることがあります。
たとえば、強制労働を強いていた場合については、1年以上10年以下の懲役もしくは20万円以上300万円以下の罰金が科せられます。
予告なしに即時解雇した場合は、6ヶ月以下の懲役もしくは30万円以下の罰金が科せられるので十分に注意しましょう。


働き方改革による労働基準法改正のポイント


平成31年4月に施行された働き方改革関連法は、以下のような目的を有しています。

  • 労働者が、多様な働き方を選択できる社会を実現する
  • 魅力ある職場づくり


これにより、労働基準法も一部改正が行われました。
改正された内容は、主に下記の4つにまとめることができます。

  • 時間外労働の上限規制
  • 年次有給休暇の取得を義務化、時季指定
  • 同一労働同一賃金
  • 月60時間を超える時間外労働の、割増賃金率を引き上げ


時間外労働については、原則月に45時間、年に360時間以内になります。
特別条項付き36協定を結ぶ場合であっても、毎月100時間未満、複数月で平均80時間以内、年に720時間以内が上限です。
また年次有給休暇は、年に10日以上付与されている労働者について、年5日の年次有給休暇を取得させることが義務化されています。
有給休暇については、労働者本人の希望を踏まえた上で雇用者が時期を指定することができます。

同一労働同一賃金とは、正社員やパートなどの雇用形態の違いに関わらず、業務内容や責任の程度が同一であれば、同一の賃金にすることです。
月60時間を超える時間外労働における割増賃金率の引き上げは、2023年4月1日から中小企業も対象となり、その率は50%以上になります。

働き方改革による労働基準法改正のポイント


労働基準法における企業の義務


労働基準法では、雇用者が守るべき義務があります。
ここからは、下記6つに分けて、企業の義務について解説します。

  • 労働契約について
  • 賃金について
  • 労働時間や休憩、休日および年次有給休暇について
  • 就業規則について
  • 周知義務について
  • 労働安全衛生について


労働契約について

雇用者は、労働基準法第15条により、事前に労働条件を明示しなければなりません。

第十五条 使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。この場合において、賃金及び労働時間に関する事項その他の厚生労働省令で定める事項については、厚生労働省令で定める方法により明示しなければならない。

引用元:(e-GOV法令検索)昭和二十二年法律第四十九号 労働基準法
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=322AC0000000049

明示した条件に労働者が合意した場合、書面の交付にて契約を締結します。
書面には、下記6つについて必ず明記しなければなりません。

  • 労働契約の期間について
  • 労働契約に期限が定められている場合には、更新の有無や条件について
  • 労働する内容や場所について
  • 勤務時間、休憩時間、休日、残業の有無について
  • 賃金の計算方法、支払い方法、締め日と支払い日について
  • 退職する場合の決まりについて


このほかに、昇給や賞与の有無、休職についてなどを必要に応じて記載する必要があります。
また、これら必要事項を、「労働条件通知書」として労働者に提示する義務があります。


賃金について

雇用者は、各都道府県で定められている最低賃金以上の賃金を支払う義務があります。

第二十四条 賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。ただし、法令若しくは労働協約に別段の定めがある場合又は厚生労働省令で定める賃金について確実な支払の方法で厚生労働省令で定めるものによる場合においては、通貨以外のもので支払い、また、法令に別段の定めがある場合又は当該事業場の労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定がある場合においては、賃金の一部を控除して支払うことができる。

引用元:(e-GOV法令検索)昭和二十二年法律第四十九号 労働基準法
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=322AC0000000049

賃金については5つの原則があります。

  • 通貨で支払う
  • 労働者本人に直接支払う
  • 賃金の全額を支払う
  • 毎月一回以上支払う
  • 一定周期で支払日を設ける


通貨での支払いが基本ですが、労働者の同意があれば銀行への振込は可能です。
また、強制的に賃金から天引きすることは禁止されていますが、法律に定めのある所得税などを控除することは認められています。

労働基準法における企業の義務

賃金のデジタル給与払い

新たな賃金の支払い方法として、2023年4月から、電子マネーで賃金を支払う「デジタル払い」が解禁となりました。
2023年6月上旬時点では、まだデジタル払い可能な電子マネーサービスとして認定された事業者(資金移動業者)はありませんが、認定されるとその事業者が提供する電子マネーサービスによるデジタル払いが可能となります。

電子マネーによる支払いは、デジタル払いについて盛り込まれた労使協定の締結、労働者の同意などが必要となります。なお、賃金の支払い方法を「デジタル払いのみ」とすることは認められていません。


労働時間や休憩、休日および年次有給休暇について

労働時間は、1日8時間以内、週に40時間以内が基本原則となっています。

第三十二条 使用者は、労働者に、休憩時間を除き一週間について四十時間を超えて、労働させてはならない。

引用元:(e-GOV法令検索)昭和二十二年法律第四十九号 労働基準法
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=322AC0000000049

上記に加え、6時間を超える労働では45分、8時間を超える労働では60分以上の休憩を設けなければなりません。
休日については、毎週1日以上もしくは、4週間で4日以上設けることが義務となっています。
雇用から6ヶ月続けて勤務し、全労働日の8割以上出勤した労働者については、有給休暇を10日付与することも雇用者の義務です。
正社員だけでなく、アルバイト従業員なども同様の条件で雇用しなければなりません。

関連リンク
アルバイト採用で雇用契約書は必要?記載内容、作成時の注意点を解説


就業規則について

常時10人以上の労働者を雇用している場合には、就業規則を設ける義務があります。

第八十九条 常時十人以上の労働者を使用する使用者は、次に掲げる事項について就業規則を作成し、行政官庁に届け出なければならない。次に掲げる事項を変更した場合においても、同様とする。

引用元:(e-GOV法令検索)昭和二十二年法律第四十九号 労働基準法
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=322AC0000000049

作成した就業規則は、管轄の労働基準監督署へ届け出ることも義務となっています。
また、就業規則を変更した場合も、労働基準監督署へ届け出る必要があります。


周知義務について

就業規則は、見やすい場所に貼りだしたりパソコン上で閲覧できるようにしたりして、労働者全員に周知しなければなりません。

第百六条 使用者は、この法律及びこれに基づく命令の要旨、就業規則、第十八条第二項、第二十四条第一項ただし書、第三十二条の二第一項、第三十二条の三第一項、第三十二条の四第一項、第三十二条の五第一項、第三十四条第二項ただし書、第三十六条第一項、第三十七条第三項、第三十八条の二第二項、第三十八条の三第一項並びに第三十九条第四項、第六項及び第九項ただし書に規定する協定並びに第三十八条の四第一項及び同条第五項(第四十一条の二第三項において準用する場合を含む。)並びに第四十一条の二第一項に規定する決議を、常時各作業場の見やすい場所へ掲示し、又は備え付けること、書面を交付することその他の厚生労働省令で定める方法によつて、労働者に周知させなければならない。

引用元:(e-GOV法令検索)昭和二十二年法律第四十九号 労働基準法
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=322AC0000000049

必要な時に、労働者がいつでも確認できる状態にしておく必要があります。
周知ができていない場合、就業規則は無効となる場合があるので注意が必要です。


労働安全衛生について

労働者を雇用するにあたっては、労働基準法の特別法となる「労働安全衛生法」にも準拠する必要があります。
労働安全衛生法では、労働者が仕事によって病気になったり事故に遭ったりしないような環境を整える雇用者側の義務について明記しています。

第一条 この法律は、労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)と相まつて、労働災害の防止のための危害防止基準の確立、責任体制の明確化及び自主的活動の促進の措置を講ずる等その防止に関する総合的計画的な対策を推進することにより職場における労働者の安全と健康を確保するとともに、快適な職場環境の形成を促進することを目的とする。

引用元:(e-GOV法令検索)昭和四十七年法律第五十七号 労働安全衛生法
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=347AC0000000057

雇用者は、健康診断や作業環境測定などを行わなければなりません。
また、労働者が快適に働ける職場環境づくりに努める必要があります。

労働基準法における企業の義務:労働安全衛生について


労働基準法違反となる条件


労働基準法では、労働に関するルールが事細かに決められています。
ここからは、違反となる条件について、その内容や罰則をご紹介します。

労働の強制に関する違反

労働者の意思に反して、強制的に働かせる行為は違反となります。
たとえば、脅迫や監禁、心身の自由を不当に拘束したり暴行したりするなどして強制労働を強いることは禁止されています。
このような違反行為が発覚した場合、1年以上10年以下の懲役もしくは20万円以上300万円以下の罰金が科せられます。


労働時間に関する違反

労働基準法では、1日8時間、1週間40時間と労働時間の上限が定められています。
36協定を締結することでこの上限を超えての労働は可能になりますが、36協定の締結がなく上限を超えて労働させることは労働基準法の違反です。
この場合、6ヶ月以下の懲役もしくは30万円以下の罰金が科せられることになるので、注意しましょう。

また、6時間を超える労働の場合は45分、8時間を超える労働の場合は60分以上など、休憩の時間も守らなければなりません。
週に1回以上は休日を設けなければならないほか、勤務期間が6ヶ月以上となり条件を満たした労働者に対しては、有給休暇を付与しなければなりません。
休憩や休日、有給休暇を与えずに労働させていた場合には、6ヶ月以下の懲役もしくは30万円以下の罰金が科せられます。


賃金に関する違反

法律で認められている場合を除き、労働者と雇用者の間で中間搾取をすることは違反行為にあたります。
派遣労働は法律で認められているため対象外となりますが、これに該当せず中間搾取を行った場合、1年以下の懲役もしくは50万円以下の罰金が科せられます。

また、時間外労働や深夜労働、休日労働が発生した場合には、割増賃金の支払いが義務となっています。
割増賃金は、時間外労働で25%、深夜労働で25%、休日労働で35%と法律で決められています。
これに違反した場合の罰則は、6ヶ月以下の懲役もしくは30万円以下の罰金です。

労働者に違約金の支払いを命じることも、労働基準法違反です。
たとえば迷惑行為や契約期間中の退職があった場合でも、雇用者が違約金を受け取ることは禁止されています。
賃金から違約金を差し引く行為も違反となります。
違約金に関しての違反があった場合には、6ヶ月以下の懲役もしくは30万円以下の罰金刑となります。


差別に関する違反

労働者を性別や国籍などによって差別すると、労働基準法の違反となります。

  • 性別
  • 国籍
  • 信条
  • 社会的身分


上記などを理由に、労働条件を買えるなどの差別行為を行った場合、6ヶ月以下の懲役もしくは30万円以下の罰金が科せられます。


パワハラに関する違反

パワハラ(パワーハラスメント)に該当するのは、主に下記の6つです。

  • 身体的侵害(殴る、蹴るなどの暴行)
  • 精神的侵害(侮辱や暴言など)
  • 個の侵害(過剰にプライベートに踏み込むなど)
  • 人間関係からの切り離し(仲間外れにする、故意に仕事を教えないなど)
  • 過大な要求(達成が不可能なノルマを設定するなど)
  • 過少な要求(仕事を与えないなど)


パワハラについての罰則はありませんが、行政指導が入ることもあります。


妊娠や出産に関する違反

労働者から、産前産後休暇の申し出を受けた場合、雇用者はこれを認める義務があります。
育児休業も同様で、これを拒否した場合には、6ヶ月以下の懲役もしくは30万円以下の罰金が科せられます。

また、妊娠中の女性は坑内での労働が禁止されています。
働かせた雇用者には、1年以下の懲役もしくは50万円以下の罰金が科せられるので注意しましょう。


解雇に関する違反

労働者を解雇する場合、1ヶ月前には必ず予告をしなければなりません。
やむを得ず1ヶ月前の解雇予告ができないケースでは、解雇手当の支払いが義務となります。
これに違反した場合の罰則は、6ヶ月以下の懲役もしくは30万円以下の罰金です。


労働基準法の違反事例

労働基準法に違反すると、立ち入り検査や行政指導を受けるほか、悪質な場合は書類送検の後に罰則が科せられることになります。
たとえば、労働者に上限を超える残業を強いていた事例です。
36協定は締結していたものの、36協定の上限をも超える残業を労働者に強いていた企業に対し、労働基準監督署から何度も勧告が入りました。
しかし対象企業は適切な対処をせず、上限を超える残業が常態化していたため、書類送検の後に略式起訴となり50万円の罰金が科せられました。

このほかにも、労働基準監督官への虚偽陳述をして書類送検された企業の事例もあります。
雇用者は、労働基準法をしっかりと理解し、違反にならないよう配慮することが欠かせません。




労働基準法違反にならないために、まずできること


労働基準法違反にならないよう、まずできることとして挙げられるのは、「労働条件通知書」の作成です。
労働者を雇用する際の最初のステップとなるため、まずはここから法律に則って進めることが大切です。
必須事項だけでなく、状況に合わせて記載が必要な事項も漏れなく記載し、労働者との間に誤解がないよう配慮しましょう。

労働条件通知書は企業側から提示する書類ですが、この内容を含めた雇用契約書を作成することも有効です。
労働条件通知書の内容を含めた雇用契約書は、雇用する企業と労働者の双方が署名捺印をして締結します。
労働者と雇用者の見解のズレを少なくし双方の合意を明確にするためにも、労働条件通知書の内容を含めた雇用契約書の締結がおすすめです。

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雇用契約書って?労働条件通知書との違いや作成方法について解説!

労働条件通知書や雇用契約書は電子化が可能!


労働条件通知書や雇用契約書は、紙での締結だけでなくパソコン上での締結も可能です。
電子化することで締結までの時間を短縮することができ、郵送代などのコストも削減することができます。
紙に印刷し捺印するなどの手間も省け、よりスムーズに契約を締結できることが魅力です。
これから労働条件通知書や雇用契約書の作成を考えているのならば、ぜひ電子化も検討してみましょう。


雇用契約書は「契約大臣」で作成しよう!


労働者を雇用するのならば、労働基準法を守る義務を怠ってはいけません。
「知らなかった」では済まされないため、事前にしっかりと法律について理解しておく必要があります。

労働基準法を遵守する第一歩として、労働条件通知書や雇用契約書の作成は欠かせません。
法律の内容に則した内容に仕上げ、労働者が気持ち良く働けるように配慮しましょう。

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※この記事は2023年6月時点の情報を基に執筆されています。

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