準拠とは、特定の物事に対して適用されるもので、その物事の基準やベースとなるもののことを指します。契約を結ぶ際、その内容を解釈する基準となる法律が必要です。この記事では、海外企業と契約するにあたって、法律の適用がどうなるのかについてわかりやすく解説します。
海外の企業と契約することになった場合、法律の適用について疑問を持つ方は少なくありません。
法律は国によって異なるため、どちらの国の法律が適用されるのかは必ず事前に確認しておきたいポイントです。
この記事では、海外企業と契約するにあたって、法律の適用がどうなるのかについてわかりやすく解説します。
海外企業と契約する上で注意するべきことについてもご紹介するので、お役立てください。
日本国内の企業同士が契約を結ぶ際、適用されるのは基本的に日本の法律です。
しかし、海外の企業との契約では、どの国の法律を適用するのかについてあらかじめ決めておく必要があります。
まずは、契約を結ぶ上での準拠法について、ご紹介します。
準拠とは、特定の物事に対して適用されるもので、その物事の基準やベースとなるもののことを指します。
契約を結ぶ際、その内容を解釈する基準となる法律が必要です。
国により法律が異なるため、国をまたぐ契約ではどの法律を基準とするのかを事前に決めておく必要があるためです。
準拠法は、契約内容を解釈するための法律のことを指します。
契約を締結した両者間においてトラブルが発生した際などには、準拠法で定めた法律によって対処していくことになります。
たとえば、民法の内容国によって異なることがあり、日本における一般的な内容で契約をしたとしても、相手企業の国では法律違反となることがあります。
このような国による解釈のズレが発生した際に、解決のベースとなる法律を定めておくのが、準拠法です。
海外との契約では、準拠法のほかに「国際法」と呼ばれる法律があります。
国際法は、国と国との関係を規律するための法律です。
条約と慣習国際法が主な内容となっていて、人権などの問題について中心的な役割を担っています。
国際法は、国際社会全体で国家間の関係を維持していくために守るべきルールです。
基本的にはすべての国で普遍的に適用されるものとなっていて、世界全体の共通ルールといえます。
準拠法は企業同士の契約においてベースとなる法律を定めることですが、国際法は国家間の関係を守るために遵守すべき法であるという違いがあります。
国際法と似た言葉に、「国際私法」というものがあります。
国際法は国家間の関係を維持するための法律ですが、国際私法は国際的な法律問題のうち、私人・企業が主体となる取引関係、家族関係などの私法上の問題およびその手続法上の問題を扱う法律分野です。
たとえば、海外との貿易取引や国際結婚などが、国際私法の範囲です。
このような海外との取引などにおいてトラブルが発生した際には、基本的に最も密接に関係する地の法律が適用されます。
たとえば日本におけるトラブルは日本の法律、外国におけるトラブルはその地の法律が原則適用されることになります。
日本の国際私法は通則法とも呼ばれる「法の適用に関する通則法」となっていて、第7、8条に下記の内容が定められています。
第七条 法律行為の成立及び効力は、当事者が当該法律行為の当時に選択した地の法による。
第八条 前条の規定による選択がないときは、法律行為の成立及び効力は、当該法律行為の当時において当該法律行為に最も密接な関係がある地の法による。
引用元:(e-GOV)平成十八年法律第七十八号 法の適用に関する通則法
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=418AC0000000078_20150801_000000000000000
つまり、契約する当事者間で決めた準拠法がベースとなるものの、その定めがない場合には法律行為が行われた際に最も密接に関係がある場所の法律を準拠することになります。
この内容には、下記2つの原則が含まれます。
それぞれの内容について、見ていきましょう。
法律行為の成立と効力の発生は、契約する当事者が決めた準拠法に基づいて適用されます。
これを「当事者自治の原則」と呼び、通則法の中で最も尊重すべき原則となっています。
契約をする当事者間で準拠法を定めていない場合には、対象となる法律行為が行われた際に、最も密接な関係にある場所の法律が適用されるという原則です。
最も密接な関係がある場所を「最密接関連地」と呼び、これがどこになるのかの判断が重要なポイントとなります。
たとえば違法行為があった場合には、違法行為が行われた場所や、その違法行為の結果が発生した場所が最密接関連地と判断される流れです。
最密接関連地法の原則では、「特徴的給付」と「不動産取引」の2つの推定規定を設けています。
特徴的給付では、契約において義務を負う側を特徴的給付などと定めます。
この給付を行う側の常居所が最密接関連地と推定される、とする規定です。
不動産取引においては、対象となる不動産の所在地が最密接関連地と推定されることになります。
準拠法は、基本的に契約を締結する当事者間で定めることになります。
同じ国の企業であればその国の法律とするケースがほとんどですが、たとえば契約の対象となる不動産が別の国にある場合は、不動産がある国の法律を準拠法とすることもあります。
また、準拠法では、どの国の法律を指定するかについてのルールがないため、合意があれば契約する当事者とは関係のない国の法律を定めることも可能です。
ただし、労働関連の契約を締結する場合、トラブルを防ぐためにも労務を提供する国の法律を準拠法とするのが一般的です。
どのようなケースであっても、準拠法として定める国の法律については、事前に調査しておく必要があります。
詐欺などで、準拠法合意の有効性についてトラブルが発生することもあります。
この場合、国際私法の観点から判断される傾向が多いです。
日本では、日本の民法を加味し、詐欺や脅迫などによる準拠法合意であることが確認された場合、取り消すことが可能な場合があります。
必ず取り消すことができるわけではありませんが、こうしたケースでは準拠法ではなく国際私法の観点から検討されることを覚えておきましょう。
契約を締結する当事者の、どちらも属さない国の法律を準拠法として定めることも可能です。
たとえば、契約の対象物が別の国にある場合、その国の法律を準拠法とすることもあります。
一方で、契約の対象物などがなく、契約上関連のない国の法律を準拠法とすることも可能です。
この場合、準拠法とする国の法律について事前にしっかりと調べておくことが欠かせません。
また、どちらかが不利にならないよう、第三国の法律を準拠法とする理由についても明確にしておくことが大切です。
国際契約を結ぶ上では、下記の2点に注意しなければなりません。
それぞれの内容について、確認していきましょう。
海外との契約で注意しておきたいのは、時効についてです。
国により、時効までの期間や計算方法などが違うためです。
時効開始の解釈に相違があることも少なくないため、契約を締結する際に双方の見解を確認し、すり合わせておく必要があります。
ウィーン売買条約は「国際物品売買契約に関する国際連合条約」(United Nations Convention on Contracts for the International Sale of Goods)のことで、「CISG」と呼ばれることもあります。
国をまたぐ物品の売買などに関する原則を定めている国際条約で、国際連合国際商取引法委員会によって1988年に発効しました。
日本でも2009年に発効していて、90を超える国が加盟しています。
国際契約において、契約当事者がどちらも加盟国である場合には、自動的にウィーン売買条約が適用されることになっています。
そのため、ウィーン売買条約の適用を望まない場合には、契約書に「ウィーン売買条約の適用を排除する」旨を明確に記載しておきましょう。
日本はもちろんですが、海外でもデジタル化はどんどん進んでいます。
世界的に見ると、日本はデジタル化が遅れているといわれるほどです。
電子契約もデジタル化の一環として普及率が伸びているため、海外企業と電子契約を結ぶ機会も増えているのではないでしょうか。
ここからは、海外企業と電子契約を結ぶ際のメリットなどについて、ご紹介します。
海外企業と取引をする上では、電子契約を活用するのがおすすめです。
電子契約ならではのメリットがあるので、ここで確認しておきましょう。
電子契約であれば、インターネット上で契約を完結することが可能です。
紙の契約書の場合は、書類を印刷して郵送し、相手が受け取って捺印し返送することで契約を締結していました。
そのため、郵送に時間がかかりやすい海外企業との契約の締結には、数週間など、多くの時間を要することもあったのです。
その点、電子契約であれば、最短1日で契約を締結できます。
海外に書類を送るとなるとコストがかかるため、郵送の必要がない電子契約では経費を削減することができます。
それだけでなく印刷代や人件費なども削減できるので、海外企業と契約する機会が多い企業ほど、多くのコストを削減することが可能です。
電子契約についての法整備は、国によって異なります。
日本では紙の契約書と同等の効力が認められるには電子署名法に準拠しなければなりませんが、相手企業の国の法律にも準拠しなければならないためです。
国だけでなく各州によって法律が違う場合があるので、弁護士などに相談した上で法律に基づいた契約ができるように準備しましょう。
また、海外企業との契約では、契約書を英語で作成する場合がほとんどです。
英文の契約書を確認できる専門家にチェックを依頼するなど、英語での契約書作成が可能な環境を整えましょう。
海外企業との契約では、準拠法を定めておくと安心です。
さまざまな事態に対応できるよう、抜けのない契約書を作成しましょう。
また、締結までの時間を短縮してコストを削減するためにも、海外企業との契約には電子契約の活用がおすすめです。
電子契約システム「契約大臣」は、月々2,200円(税込)からとリーズナブルな価格で利用できます。
ファイアーウォールや暗号化通信といったセキュリティ対策もしているので、安全に電子契約を締結できることが特徴です。
この機会に、デジタル化の一環として、契約大臣を活用した電子契約を導入してみてはいかがでしょうか。
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※この記事は2023年6月時点の情報を基に執筆されています。