36協定とは何か?残業時間の上限や手続き・罰則についてわかりやすく解説!

更新: 2023-06-28 15:49

36協定は、労働基準法第36条により提出する「時間外・休日労働に関する協定届」のことです。この記事では、36協定の定義や対象、残業時間の上限や手続きについて解説します。罰則についてもご紹介するので、参考にしてください。

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従業員を雇用するにあたっては、36協定についての知識が欠かせません。
しかし、実際に36協定についての知識を問われると、自信がないという方も少なくないでしょう。

この記事では、36協定の定義や対象、残業時間の上限や手続きについて解説します。
罰則についてもご紹介するので、参考にしてください。

36協定とは何か


36協定は、労働基準法第36条により提出する「時間外・休日労働に関する協定届」のことです。
時間外・休日労働に関する協定届は、1日8時間・週40時間を超える時間外労働や休日出勤を命じる場合、労働基準監督署に届け出ることが義務となっています。


36協定の対象とは


36協定の対象は、労働基準法上での「労働者」となります。
ここでいう「労働者」とは、「職業を問わず事業や事務所に使用され、賃金を支払われる者」のことです。
正社員はもちろん、契約社員やアルバイト、パートも36協定の対象となります。

一方で、36協定の対象外となるのは、労働基準法上での「使用者」です。
「事業主または事業の経営担当者その他その事業の労働者に関する事項について、事業主のために行為をするすべての者」を、使用者と呼びます。
会社から実質的に一定の権限を与えられている人は、役職の有無にかかわらず使用者とみなされます。

36協定の対象とは


36協定の届出が必要な時間外労働について


36協定の届出が必要なのは、「法定労働時間を超えた労働をする場合」「法定休日に労働する場合」です。

法定労働時間を超えた労働をする場合

労働基準法では、1日8時間・週40時間法定労働時間しています。
しかし入社に際しては、会社それぞれで就業規則や雇用契約書により労働時間を設けているケースがほとんどで、これを「所定労働時間」と呼びます。
変形労働を使う場合を除き、所定労働時間は法定労働時間内でなければなりません。
これを超える時間外労働を命じる場合には、労働者が1人だけであっても36協定の届出が必要です。

たとえば、所定労働時間が「休憩1時間を含む10:00~19:00」だった場合、労働時間は8時間になるため残業が発生する場合は36協定の届出が必要になります。
これに対して、「休憩1時間を含む10:00~18:00」が所定労働時間であるケースでは、1時間までの残業ならば法定労働時間内に収まります。
1時間を超える残業が発生する場合のみ、36協定の届出が必要です。

法定労働時間を超えた労働をする場合

法定休日に労働する場合

雇用者は労働者に対して、最低でも週に1日、もしくは4週間を通じて4日以上の休日を設けなければなりません。
この休日を「法定休日」と呼び、法定休日に勤務をお願いする場合には36協定の届出が必要です。

たとえば1時間だけの労働だったとしても、1週間毎日労働すると法定休日を取っていないことになります。
1日8時間・週40時間に収まっているからといっても、週に1日でも休みがないケースでは、36協定を届け出なければなりません。
逆に、週に1日以上の休みがあっても、法定労働時間である週40時間を超えるのならば36協定の届出が必要になります。

法定休日に労働する場合


36協定の上限規制について


36協定を提出したとしても、労働時間には上限があります。
2019年4月から「働き方改革関連法」が順次施行され、36協定で定める時間外労働にも上限が設けられました。

以前であれば、特別条項付きの36協定を締結することで、実質上限を超える残業を要請することができました。
しかし2019年4月(中小企業は2020年4月)からは、働き方改革の一環で、36協定を提出しても上限を上回る残業の要請はできなくなっています。

1日の時間外労働の上限規制

1日あたりの法定労働時間は、8時間です。
時間外労働についての上限規制はありませんが、下記に紹介する1ヶ月の上限および1年の上限を上回ってはいけません。

1ヶ月の時間外労働の上限規制

1ヶ月の時間外労働の上限は、一般の場合で45時間、1年単位の変形労働時間制の場合は42時間です。
臨時的で特別な理由がない限り、この上限を超えることはできません。

1年の時間外労働の上限規制

1年間の時間外労働の上限は、一般の場合で360時間、1年単位の変形労働時間制の場合は320時間となります。
常用的にこれを超えることはできず、一時的かつ特別な事由がある場合でなければ上限を超えることはできません。

1年の時間外労働の上限規制


36協定の特別条項とは?


予期せぬトラブル対応や繁忙期で多忙であるなどのケースでは、「特別条項付きの36協定」を提出することができます。
これにより、時間外労働の上限を超えての労働が可能となります。

とはいえ、特別条項でも上限が設定されており、1ヶ月に45時間を超える回数は6回以内でなければなりません。
また、「特別条項付きの36協定」の上限は、時間外労働と休日労働を合わせて月に100時間未満、時間外労働が年720時間以内です。
さらに、2~6ヶ月平均で全て1か月あたり80時間以内でなければならないという規制があります。


36協定の上限時間を超えるとどうなる?罰則は?


36協定の上限時間を超えると労働基準法32条に違反した罪となり、6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金を科せられます。
また、労働基準監督署によって毎年公表されている「労働基準法違反についての送検事例」で、企業名が公表され社会的な制裁を受ける可能性があります。

罰則の対象は企業・責任者

罰則の対象となるのは、企業および労務管理の責任者です。
部門長や工場長などの管理職は、責任者として罰則を受ける可能性があります。

罰則の対象は企業・責任者


36協定の上限を超えないためにできる対策


36協定の上限を超えると懲役や罰金などの罰則が受けることから、超えないような対策を講じる必要があります。

就業規則を見直す

まずは就業規則を見直し、上限を超えやすい状況になっていないかを確認しましょう。
また、36協定にて割増賃金率を定める際には、労働基準法第89条第2号に基づき割増賃金率を就業規則に規定する必要があります。
時間外労働となる月45時間以下では25%以上月45時間超60時間以下のケースでは25%以上月60時間超では50%以上(中小企業では、60時間超50%以上は2023年4月1日から適用)となるよう具体的に定めておきましょう。

勤怠を把握し管理する

労働者が実際にどれくらい勤務しているのかを、明確に把握して管理しなければなりません。
タイムカードやパソコンなどを使って管理・把握し、上限に達しないよう注意しましょう。

健康確保措置の対応をする

36協定では、月に45時間を超える労働時間を課す際には、健康確保処置の対応が義務となっています。
終業から始業までの休息時間を確保することや産業医の面接指導、連続休暇の取得などの対応を行いましょう。

特別休暇を与える

特別休暇を与えると、労働者は健康管理をしやすくなるうえ、モチベーションを向上させやすくなります。
36協定の上限を超えないための対策ではあるものの、仕事の効率もアップする効果が期待できます。


36協定締結の条件について


36協定を締結するためには、ここで紹介する条件を満たさなければなりません。
過半数組合があるケースとないケースで条件が異なるので、それぞれ確認しておきましょう。

過半数組合があるケース

正社員やアルバイトなど、企業に属するすべての社員の過半数で組織された労働組合と、書面で協定を結ぶ必要があります。
この時、企業の現社員数と労働組合員数を計算して、過半数になっていることを必ず確認しましょう。

過半数組合がないケース

過半数組合がないケースでは、挙手や投票により選出された管理層ではない社員の代表者と、書面で協定を結びます。
部門長などの管理職は、代表者になれないことに注意が必要です。

36協定締結の条件について


36協定届の記入・作成方法


36協定届の記入・作成方法は、特別条項がある場合とない場合で違いがあります。

特別条項がない場合

特別条項がない場合、「様式第9号」を提出します。
「様式第9号」には、「労働保険番号」や「法人番号」、「36協定の有効期間」を記載しましょう。
有効期間に制限はありませんが、最長1年が望ましいとされています。
「1年間の上限規制の起算日」を記載する欄は、労働時間管理をシンプルにするために、有効期間の起算日と合わせておくことを推奨します。
「時間外労働をさせる具体的な事由」を書く欄では、「繁忙期対応」などの抽象的なものではなく、具体的な業務内容を記載しなければなりません。
最後に、「時間外労働の上限規制の確認チェック」のチェックボックスにチェックを入れます。

36協定届の記入・作成方法:特別条項がない場合
【参考】厚生労働省「時間外労働の上限規制 わかりやすい解説」
https://www.mhlw.go.jp/content/000463185.pdf

特別条項がある場合

特別条項がある場合、「様式第9号」とあわせて「様式第9号の2」を提出します。
「様式第9号」の作成方法については、特別条項がない場合と同様です。
「様式第9号の2」では、「限度時間を超えて時間外労働をさせる場合の割増賃金率」を法定割増率を超える率で記載しましょう。
「限度時間を超えた労働者に対する健康及び福祉を確保するための措置」には、健康確保措置などの具体的な処置を記入します。
「時間外労働の上限規制の確認チェック」にも、必ずチェックをいれましょう。

36協定届の記入・作成方法:特別条項がある場合
【参考】厚生労働省「時間外労働の上限規制 わかりやすい解説」
https://www.mhlw.go.jp/content/000463185.pdf

36協定の提出期限は?


36協定に提出期限は特にありません。
ただし、36協定に違反しないようにするためには、有効期限を1年として、毎年提出するのが望ましいといえます。

36協定も押印廃止?電子申請による届出方法


新型コロナウィルス感染拡大防止の観点により、36協定は電子申請での届出が推奨されるようになりました。
今までは窓口へ出向いたり郵送したりが主流でしたが、新型コロナウィルス感染拡大防止のため、密を防ぎできる限り対面での対応を少なくすることが理由です。
電子申請ならば、窓口や郵便局などへ出向く必要がなく、24時間365日いつでも36協定を提出できます。
押印も不要で、電子申請であれば本社が支社や支店の分もまとめて届け出ることができるようになっています。

チェックボックスの対応が必要

利便性が高い電子申請では、押印が廃止された代わりにチェックボックスの対応が必要です。
チェックボックスは2つあり、労働基準法施行規則第6条の2で定められた労働者代表の要件をまとめたものとなります。
協定の当事者について確認するためのもので、この2つを満たしていなければ申請することができません。
押印や署名の代わりとなるため、必ずチェックボックスの対応を行いましょう。


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36協定には上限があり、提出したからといって青天井に労働者を働かせることはできません。
労働時間を少しでも少なくするためには、契約書などを電子化し作業を効率化してみてはいかがでしょうか。

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まとめ


法定労働時間を超えての労働がある場合には、正社員だけでなくアルバイトなどであっても36協定の提出が必要です。
また上限を超えての労働を強いると罰則があるため、上限を超えないための工夫も欠かせません。
自社の状況をしっかり見据え、電子化を進めるなどの上限を超えないための対策を講じたうえで、正しく36協定を締結しましょう。

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