実印の変更はそうそう行う機会がないものですが、いざ変更することになった際はどのような手続きが必要かご存知でしょうか。この記事では実印を変更するための手続きをケース別にご紹介するとともに、万が一、紛失をしてしまった際の手続きについても解説します。
そうそう変更する機会がない実印は、いざ変更することになった場合に、どのような手続きが必要になるのかわからないという方は少なくありません。
また、実印を紛失してしまった際の手続きがわからず、困ってしまう方もいるでしょう。
この記事では、実印を変更するための手続きを、ケース別にご紹介します。
紛失した際の手続きとあわせて、手続きにおいて必要なものについても解説するので、参考にしてください。
実印を変更しなければならない状況は、いくつか考えられます。
ここでは、「印鑑を変更する場合」「住所が変わった場合」「氏名が変わった場合」について、手続き方法と必要なものをご紹介します。
いずれも、市区町村の窓口での手続きです。
登録している印鑑を、別の印鑑へ変更する場合です。
たとえば、登録している実印が破損してしまったり、今までのものではなく新しく作った実印に変更したりするケースが考えられます。
この場合の手続きは、「改印手続き」と呼ばれます。
改印手続きは、現在の印鑑登録を廃止し、新しく印鑑登録をする流れで進みます。
まずは現在の印鑑登録を廃止するため、「印鑑登録廃止申請書」を提出します。
この時必要になるのは、下記の3点です。
次に、新しく印鑑登録をする手続きへと進みます。
この際に必要なのは、下記の3点です。
登録費用は役所によって違いますが、数百円程度としているケースがほとんどです。
また、廃止手続きも新たに登録する手続きも、本人以外の人が手続きをする際には、上記にプラスしてそれぞれで委任状が必要です。
引越により住所が変わった場合、引越先が同じ市区町村であれば手続きの必要はありません。
引越に際して役所に提出する転居届により、自動的に印鑑登録の住所も更新されるためです。
ただし、引越先が別の市区町村である場合には、手続きが必要です。
転居に際しては、市区町村によって印鑑登録証(印鑑登録カード)の返却を求められる場合があります。
そのため、転居届提出の際に、印鑑登録証(印鑑登録カード)を持参して返却の必要可否を確認するとスムーズです。
引越先の役所では、転入届を提出してから新たに印鑑登録の手続きを行います。
上記のものを持参し、改めて実印を登録しましょう。
なお、代理人が手続きをする際には委任状が必要です。
結婚などで氏名が変わり印鑑に刻印されているものとは違う名前になった際には、印鑑そのものを変更しなければなりません。
そこで改印手続き同様に、今までの印鑑登録を廃止して新しく印鑑を登録する必要があります。
「印鑑登録廃止申請書」と下記3点を提出し、今までの印鑑登録を廃止します。
次に、新しい氏名の印鑑登録をするため、下記3点を提出して手続きを進めます。
この手続きでも、代理人が手続きをする際には、それぞれの手続きにおいて委任状が必要です。
ちなみに、氏名が変わっても印鑑の刻印との相違が発生しない場合には、手続きの必要はありません。
たとえば結婚により姓が変わったものの、実印は名前のみの刻印である場合には手続きすることなくそのまま実印を使うことができます。
実印を扱っていると、時々対処に困る事態が起こります。
たとえば、「実印がどれかわからなくなった」「実印を紛失した」「印鑑登録カードを紛失した」などのケースです。
ここからは、それぞれのケースの対処法と注意点についてご紹介します。
実印以外にもさまざまな印鑑を使い分けている家庭は多いため、登録している実印がどれかわからなくなってしまうケースもあります。
その際には、印鑑証明書を発行し、そこに記載されている印影と印鑑の刻印を見比べて探してみることが有効です。
実印の刻印は複雑なものが多いため、見比べることで登録している実印を探し出せるでしょう。
ただし、三文判などを登録している場合は、見比べても探し出せない可能性もあります。
その場合には、印鑑を変更する「改印手続き」として、現在の実印を廃止し、新しく実印を登録することになります。
実印を紛失してしまった場合には、「亡失届」を提出し印鑑登録を廃止します。
この手続きにより紛失した実印は効力を失うため、万が一人の手に渡ってしまっても悪用されるリスクはなくなります。
亡失届を提出する際には、下記の3点を持参しましょう。
代理人でも手続きが可能ですが、その際には委任状も必要になります。
印鑑登録カードを紛失した場合も、「亡失届」を提出し印鑑登録を廃止することになります。
この際には、下記の2点を持参しましょう。
実印を紛失した場合と同様に、代理人での手続きでは委任状が必要です。
実印は、重要な場面で押印することが多いことが特徴です。
役所に登録する公的な実印を作る際には、ここでご紹介するポイントを押さえておきましょう。
実印登録できる印鑑のサイズは、「8mmの正方形に収まらず、25mmの正方形からはみ出さないもの」と規定している市区町村が多くあります。
このことを基準に、男性は15~18mm、女性は13.5~15mmを定番サイズとしています。
定番サイズを参考に、手の大きさなどに合わせて自分が使いやすいサイズを選びましょう。
実印に使われる素材はさまざまで、素材ごとに特徴があります。
たとえば実印で使われることが多い「黒水牛」は、耐久性が高く購入しやすい価格帯であることが特徴です。
象牙は実印に使われる素材の中で最高級とされていて、朱肉の吸着性や捺印性に優れていますが、高価なものがほとんどです。
その反面、木材の柘(つげ)などは、印影が綺麗に出やすくコスパに優れているという特徴があります。
自分の好みだけでなく、素材の特徴をふまえてピッタリのものを選びましょう。
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実印の平均予算は?素材別に値段・特徴を解説
実印は姓のみ、名前のみでも作ることができますが、フルネームで作る場合が多くなっています。
フルネームで文字数が多くなれば、それだけ偽造されにくいと考えられるためです。
印鑑に刻印する書体には、主に下記のものがあります。
この中で実印に適しているのは、印相体、篆書体です。
特に印相体は文字がより判別しにくく刻印されているうえに、文字が枠に接する形で作られているため、耐久性に優れていて実印向きの書体となっています。
実印は、市区町村によって「8mmの正方形に収まらず、25mmの正方形からはみ出さないもの」でなければ登録できない場合があります。
また、大量生産されている三文判やゴム印は、同じ印影のものが多いことから登録できない役所もあります。
大きさの規定に合っていて三文判やゴム印ではなかった場合でも、ほかの人が印鑑登録している実印を使いまわすことはできません。
市区町村により規定は異なるものの、まだ誰にも印鑑登録されていない、「8mmの正方形に収まらず、25mmの正方形からはみ出さないもの」であり三文判やゴム判でない印鑑であれば、実印として登録できます。
印鑑には、実印以外にも銀行印や認印があります。
これらはそれぞれに用途が違い、使い分けることで万が一のトラブルを防ぐことができます。
認印は登録などが必要なく日常的に使うものなのに対し、実印は不動産や自動車の購入時など、重要で高額な契約を行う際に使用します。
一方で銀行印は金融機関へ登録し、口座の開設や金銭の出し入れの際に使う印鑑です。
それぞれ別の印鑑を使うことで、万が一どれか一つの印鑑を紛失し悪用されてしまったとしても、その被害を最小限に抑えることができるのです。
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印鑑は大きく分けて3種類。使い分け・入手方法・作り方
さまざまな場面で必要になる「印鑑」の中でも、実印は特に重要な契約に際して使用します。
実印と一緒に印鑑証明書が必要になることも多く、契約には手間と時間がかかることも珍しくありません。
電子契約を活用すると、契約書への押印は必要なくなります。
紙の契約書への押印は「間違いなく本人が契約したことの証明」となりますが、電子契約では押印以外の方法で「本人が契約したこと」を証明できるためです。
電子契約は署名や押印がなくても法的効力を有することができるうえ、契約書を返送するなどの手間もかかりません。
契約する当事者全員が同意するのであれば、手間も時間も節約できる電子契約の導入をご検討ください。
実印の変更が必要となるシーンは、紛失や氏名変更など様々あります。
基本的には登録を廃止して新しく登録する手続きとなりますが、中には手続きがいらないケースもあるので注意が必要です。
また、実印を作成する際にはサイズや素材、書体などに気をつけて最適なものを作りましょう。
※この記事は2023年3月時点の情報を基に執筆されています。