派遣契約は、派遣会社から派遣先企業である自社に人材を受け入れる際に締結します。この記事では、派遣と業務委託の違いから契約ルールや禁止事項について解説します。法律についての知識も深め、派遣契約をスムーズに進めましょう。
派遣社員の受け入れを検討している場合や、初めて派遣社員を受け入れることになった場合には、契約のルールなどについて知っておきたいものです。
正社員の雇用とは異なる部分が多いことから、トラブルを避けるためには基本的な知識を得ておく必要があるためです。
この記事では、派遣と業務委託の違いから契約ルールや禁止事項について解説します。
法律についての知識も深め、派遣契約をスムーズに進めましょう。
まずは、派遣契約の概要などについてご紹介します。
派遣契約は、派遣会社から派遣先企業である自社に人材を受け入れる際に締結します。
受け入れる人材は「派遣社員」と呼ばれ、正社員と違い派遣先企業が直接雇用するわけではありません。
派遣社員の雇用主は派遣会社であり、派遣先企業は業務指示を出すのみとなります。
そのため、派遣社員は雇用主である派遣会社と雇用契約を結びます。
派遣契約には、「基本契約」と「個別契約」という2つの種類があります。
どちらも派遣会社と派遣先となる企業が締結するもので、基本契約は下記の内容が主です。
基本契約は義務ではないものの、トラブル回避のために締結する場合がほとんどです。
これに対して個別契約では、業務内容などの細かい部分も規定します。
個別契約も企業間で締結されるため実際に働く派遣社員は目にすることがありませんが、派遣社員と派遣会社が締結する「雇用契約書」で確認することができます。
派遣契約では、派遣会社から派遣してもらった人材の労働力に対し、報酬を支払う仕組みです。
これに対して業務委託契約は、成果物に対して報酬を支払うことが大きな違いとなっています。
また、派遣契約での指揮命令権は派遣先企業にあり、派遣社員には直接業務の指示を出すことができます。
一方で業務委託契約での指揮命令権は、業務委託を請け負った相手にあることも、大きな違いです。
さらに、派遣契約では労働法が適用されますが、業務委託契約では適用されないという違いもあります。
派遣契約のメリットは、主に下記の4つです。
それぞれの内容について、ご紹介します。
派遣契約により、下記2つのコストを削減できます。
派遣会社により人材が選出されることから、採用にコストがほとんどかかりません。
また、採用に際して必要な人件費が削減できるうえ、派遣社員の社会保険料などの労務管理コストも削減できます。
正社員の場合は無期雇用ですが、派遣契約は有期雇用です。
繁忙期のみ契約したり、新しいプロジェクトが始動するなどで人手が必要な期間だけ契約したりといった形で人材が確保できます。
これにより、仕事が少ないのに人件費だけかかってしまう、などといった状況になりにくい点がメリットです。
派遣契約での指揮命令権は派遣先企業にあるため、派遣社員に直接、業務についての指示を出すことができます。
自社の方針や方法を指示して業務にあたってもらうことで、効率的に業務を進められることがメリットです。
派遣された人材が優秀で今後も自社で活躍してもらいたい、と考えた際には、正社員として雇用し続けることも可能です。
派遣社員と雇用契約を継続して締結していき、派遣社員にも正社員になりたいという希望があれば、正社員としての登用もできるのです。
さまざまな企業で経験を積んできた優秀な人材を自社の正社員として雇用できることは、大きな魅力といえるでしょう。
派遣契約におけるデメリットは、指揮命令や教育に関するコストがかかる点にあります。
指揮命令権が派遣先である自社にあることで業務はスムーズに進みやすくなりますが、一方で指示を出す人材を確保しなければなりません。
また、業務を1からすべて教える必要があることから、ここにも人材を割く必要があります。
このように派遣社員が業務にあたるに際しての人材を確保するために、コストが発生することになります。
派遣契約を結ぶのならば、「労働者派遣法」と「労働契約法」について知っておく必要があります。
それぞれのポイントを、ここで押さえておきましょう。
労働者派遣法は、労働者を保護し、雇用の安定を見込むための法律です。
有期雇用の場合には、同じ企業への派遣は3年までとなっています。
また、適切な賃金水準の配慮として、派遣会社が労働者の賃金を決める際には、同じ業種の賃金水準や労働者本人の職務成果、能力を加味して適切な賃金にしなければなりません。
さらに、人材を派遣する派遣会社には、教育訓練への取り組み内容やマージン率を明示することが義務付けられています。
これによって労働者は、自分にとって最適な派遣会社を選べる仕組みです。
企業と労働者間における労働契約に関する基本となるのが、労働契約法です。
「雇止め法理」として、無期雇用であったにも関わらず解雇されたなどの場合に、解雇を無効にすることなどを定めています。
派遣契約では、労働者派遣法により禁止されている事項があります。
これらの行為を行った場合、30万円以下の罰金などといった罰則が科せられる場合があるので注意しましょう。
派遣社員に対して、不当な理由で契約を解除することを禁止しています。
上記などを理由に契約を解除した場合、損害賠償請求の対象になることもあります。
派遣契約終了後に派遣先企業と派遣社員が直接雇用契約を結ぶ「紹介予定派遣」を除き、派遣契約では事前に面接をして人材を指名することはできません。
派遣契約は派遣会社が人材を選定し派遣先企業に斡旋する仕組みとなっているため、派遣先となる企業は就業前に労働者の履歴書を見たり面談したりすることができないのです。
派遣契約期間中に、派遣先企業が派遣社員を引き抜く行為は禁止されています。
引き抜きとは、派遣会社を通さずに、無断で派遣社員と直接雇用契約を結ぶことです。
ただし、これは派遣契約期間中のみの禁止事項となり、契約期間終了後の直接雇用は問題ありません。
その一方で、直接雇用していた正社員やアルバイトなどについて、離職後1年間は派遣契約を結べない点にも注意が必要です。
派遣契約を結ぶうえで、知っておきたいポイントを2つご紹介します。
前述したとおり有期雇用の場合、労働者派遣法により同じ企業への派遣は最大3年となっています。
これを超えて派遣契約をしたい場合には、派遣先企業の労働組合などで過半数に意見を仰がなければなりません。
また、3年を超えて契約する場合は、同一の課への派遣はできず違う課へ異動するなどの手続きが必要です。
派遣契約を結ぶためには、派遣元となる派遣会社との付き合いが欠かせません。
この派遣会社は、厚生労働大臣の許可を得た事業者でなければならない点も覚えておきましょう。
許可なく労働者派遣事業を行った場合は違法となり、違法な事業者であると知りながら派遣契約を締結してしまうと法的責任を問われることがあるためです。
派遣契約は、下記の流れで進みます。
それぞれの項目について、見てみましょう。
まずは、前述した「基本契約」を締結します。
二社間で協議して認識をすり合わせ、両者が納得できる内容の契約にしましょう。
このとき、基本契約書を作成して締結しておくと安心です。
事業所抵触日とは、派遣受入期間の制限となる3年を超える最初の日のことです。
たとえば2022年9月1日から3年間、派遣社員を受け入れるケースでは、事業所抵触日が2025年9月1日となります。
この事業所抵触日は、派遣先企業が派遣元企業に対して、あらかじめ通知しておく必要があります。
派遣契約を結ぶ人材が決まったら、先述した「個別契約」を結びます。
個別契約書で締結し、これによって人材を派遣してもらえるようになる流れです。
個別契約は、派遣社員を受け入れるごとに新しく締結する必要があります。
労働者派遣法により、派遣社員を受け入れる企業は派遣社員ごとに「派遣先管理台帳」を作成しなければならないと定められています。
派遣先管理台帳には、派遣社員の氏名や就労日、就業時間、休憩時間、業務内容などを記載します。
また作成した派遣先管理台帳は、派遣期間終了日から3年間保存しなければなりません。
2021年1月1日より、派遣契約も電子契約での締結が可能になりました。
多くの派遣社員を受け入れる企業の場合は、特に、電子契約が可能になることで契約業務が効率化できることでしょう。
電子契約の導入によりリモートワーク環境でも契約の締結が可能となるほか、契約書の管理がラクになるというメリットがあります。
また契約締結までに時間が短くなったことで、派遣契約に係る業務効率もアップするでしょう。
派遣契約を締結するなら、この機会に電子契約を取り入れてみてはいかがでしょうか。
必要なときに必要なだけ人材を確保できるなどのメリットがある派遣契約では、禁止事項などがあるのであらかじめ知識を得ておく必要があります。
実際の契約に際しては、効率的に進められる電子契約を導入するのがおすすめです。
電子契約システム「契約大臣」は、電子契約が初めての人にも導入しやすい使いやすさが魅力です。
わかりやすい画面操作となっていて、不明点は随時メールや電話でサポートしています。
タイムスタンプの付与をはじめ、安全に電子契約を締結できる環境が整っている点も、安心ポイントとなっています。
リーズナブルな価格帯で使える契約大臣を活用して、派遣契約をスムーズに進めてみてはいかがでしょうか。
※本記事は2023年1月時点の情報を元に執筆されています。