電子契約の仕組みとは?紙に依存しない新しい契約のカタチをご紹介します

更新: 2023-07-10 12:13

電子契約について「イメージはできるけど仕組みはよく知らない」という方向けに。契約を締結する仕組みと証明に欠かせない電子署名やタイムスタンプについて説明いたします。電子契約の導入に向けてメリットやデメリットなども解説しています。

  • 目次

近年、従来のような紙による契約ではなく、電子データのやり取りによって契約を行う「電子契約」が注目を集めています。コロナ禍によって人との接触や通勤、出社が制限されている中で、話題となっている電子契約とはどのような仕組みなのでしょうか?またそのメリットにはどのようなものがあるのでしょうか?

今回は電子契約が注目されている背景からその仕組み、従来の契約との違いやメリットなどをご紹介します。

■電子契約が注目されている背景

はじめに、近年電子契約が注目を集めている背景から確認していきましょう。


●新型コロナウイルス感染拡大の影響

電子契約普及の要因の一つとなったのが、新型コロナウイルスの感染拡大です。感染の拡大を防止するために通勤や出社が制限されテレワークが推奨された際、契約書を含む紙の書類と押印の慣習が問題となりました。
厚生労働省が2020年に実施した調査によれば、企画・マーケティング部門のテレワーク実施率約6割に対して、経理を含むバックオフィス部門のテレワーク率は半分の3割。押印作業や紙書類の受領や送付のため、コロナ禍でも出社せざるを得ないバックオフィスの従業員は大変多かったのです。
このような状況を改善するために、電子契約の導入を検討する企業が増えています。



●働き方改革推進のため

日本国政府は2018年に成立した「働き方改革関連法」に基づき、労働に関わる法律の整備や労働環境の改善を進めています。政府の掲げる働き方改革の中で、企業に積極的な導入を勧めているのがテレワークです。

テレワークの導入により、今まで育児や介護でやむなく離職していた従業員の離職率を劇的に低減させることが可能になるといわれています。企業にとってテレワークは、優秀な人材を確保する有効な手段なのです。また従業員にとっても、通勤時間を削減することにより生活に時間的なゆとりが生まれ、仕事と生活の理想的な両立(ワークライフバランス)を実現できるようになります。

働き方改革を推進するためにも、デジタル化の障壁となっている「紙文化」や「ハンコ文化」は改善していく必要があるのです。



●業務効率化のため

「紙文化」と「ハンコ文化」を撤廃すると、物理的にも効果が生まれます。基本的には電子上で契約行為が進むため、場所や時間の制約を受けることが少なくなり、契約に関わるリードタイムを短縮することができます。
また紙代、印刷代、郵送代、保管代などのコストも削減することができ、電子データなので検索性も向上します。
契約を電子化することは、業務効率の向上においてもとても有効なのです。


■電子契約とは?


ここからは電子契約の概要と、その仕組みを確認していきます。
そもそも電子契約とは、電子データに電子署名をすることで、書面による契約と同様の証拠力が認められる契約行為です。まずは「電子署名」や「書面による契約と同様の証拠力が認められる仕組み」、「電子署名の種類」、「法律的な後ろ立て」を順番に見ていきましょう。



●電子契約の仕組み

先述のように、電子契約とは電子データに電子署名が付与された、電子的な契約です。
電子契約は電子署名によって契約書の「真正性」を成立させ、後述するタイムスタンプと合わせて「完全性」を成立させます。契約の元となる電子データ(契約書)、電子署名、タイムスタンプの3つが揃って電子契約は書面と同等の効力が認められます。

※真正性:正当な権限において作成された記録に対し、虚偽入力、書き換え、消去、及び混同が防止されており、かつ、第三者から見て作成の責任の所在が明確であること


●タイムスタンプ

タイムスタンプは、電子署名されたデータがその時刻に存在していたこと(存在証明)、またその時刻以降改ざんされていないことを証明(非改ざん証明)するものです。

このタイムスタンプは、タイムスタンプ局(時刻認証局)から発行されます。タイムスタンプ局は、タイムビジネス認定センターの所定の審査を経て認証される民間の事業者で、時刻認証業務認定事業者(TSA)と呼ばれます。


●電子証明書

もう一つ、電子契約の完全性を担保するものに「電子証明書」があります。基本的に電子契約は合意を示す操作などにより成立しますが、電子署名と電子証明書を用いることで、より厳格な(法的効力の高い)完全性を成立させることができます。

電子証明書は、実印などの証明に使われる「印鑑証明書」と同じようなものと理解すれば良いでしょう。電子証明書は、後述する電子署名法の特定認証業務の認定を受けた認証局が作成できます。
電子契約の送信者は、この電子証明書が付与された電子署名を契約書に施し、受信者側も同様に自らが取得した電子証明書付きの電子署名を契約書に付する仕組みになっています。
電子証明書の有効/無効を認証局に確認して有効性が確認されれば、間違いなく送信者/受信者の電子証明書であることが証明されます。

電子証明書は電子契約に必ず必要なものではありませんが、より厳格な当事者同士での確認が必要な場合に用いられます。
ただし電子証明書の発行には、発行を申請する名義人の公的な身分証を提示したり、その確認を認証局が行うため発行までに時間がかかります。
また電子証明書には発行手数料が必要で、その効力には有効期間があります。有効期間が切れた場合には再度発行手数料がかかるので、法的効力が高いというメリットはあるものの、手間や時間、費用が必要になるというデメリットもあると覚えておきましょう。


●電子署名

電子署名は、電子契約のデータが契約当事者の作成した正式なものであることや、契約当事者の合意行為を証明するものです。
紙の契約書では印影やサインによって真正性が担保されますが、電子署名は暗号化されたデータで真正性を担保します。これには公開鍵暗号基盤(PKI)が使われ、当事者以外には解読できないようにデータを暗号化する「公開鍵」と、暗号化されたデータを元に戻す(復号する)ための「秘密鍵」を用います。

電子署名はこの2つの鍵を用いることにより、内容が途中で改ざんされないように、そして秘密鍵を知らない第三者が復号できないように、データのやり取りができます。

契約当事者が取得した電子証明書を用いるか否かで、電子署名は2つのタイプに分かれます。それが「当事者型高度電子署名」と「事業者署名型(立会人型)電子署名」です。



●当事者型高度電子署名

契約当事者が認証局に申請、本人確認を経て発行された電子証明書を用いた電子署名が「当事者型高度電子署名」です。
当事者型高度電子署名のメリットは、第三者機関によって厳格な身元確認が行われているため、電子証明書により高い本人性が担保されていることです。このため、事業譲渡や企業合併に関わる合意書のような厳格な契約に用いられることが多いのですが、先述のように手間や時間、有効期間に比例した費用が必要になることがデメリットです。


●事業者署名型(立会人型電子署名)

事業者署名型電子署名は、当事者型電子署名と違って電子証明書を必要としません。契約当事者のものではなく事業者の電子証明書を用いて電子署名を行うので、事業者署名型電子署名と呼ばれるのです。

事業者署名型電子署名は契約当事者の電子証明書を用いないことから、当事者型より法的効力が弱いといわれてきましたが、電子署名法の要件を満たしていることが認められています。
また、契約当事者が電子証明書を添付する必要がなく、手間や時間、コストが抑えられることに加え、受信者側が同一の電子契約システムを利用していなくても契約締結ができるので近年急速に普及しています。


●電子署名法

最後に電子署名が成立する法的根拠となる「電子署名法」を確認しておきましょう。一般的に電子署名法と呼ばれる法律は、正式には「電子署名及び認証業務に関する法律」といいます。
その目的は

「電子署名に関し、電磁的記録の真正な成立の推定、特定認証業務に関する認定の制度その他必要な事項を定めることにより、電子署名の円滑な利用の確保による情報の電磁的方式による流通及び情報処理の促進を図り、もって国民生活の向上及び国民経済の健全な発展に寄与すること」

引用:(デジタル庁)電子署名及び認証業務に関する法律(電子署名法)及び関係法令
https://www.digital.go.jp/policies/digitalsign_law/
となっています。

電子署名法では、第二章「電磁的記録の真正な成立の推定」における第三条で

「電磁的記録であって情報を表すために作成されたもの(公務員が職務上作成したものを除く。)は、当該電磁的記録に記録された情報について本人による電子署名(これを行うために必要な符号及び物件を適正に管理することにより、本人だけが行うことができることとなるものに限る。)が行われているときは、真正に成立したものと推定する」

引用:(e-GOV)平成十二年法律第百二号 電子署名及び認証業務に関する法律
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=412AC0000000102

と規定されています。この規定により、当事者型高度電子署名と事業者署名型(立会人型)電子署名は法的効力を持っていると判断されているのです。


■電子契約と紙の契約書との違い




電子契約と紙の契約(書面契約)には、紙とデータという違いや証拠力を担保する方法以外にも異なっていることがあります。
それは収入印紙です。書面契約では、契約の内容や契約金額によって定められた金額の収入印紙を使い分けねばなりませんが、電子契約には収入印紙の貼付による印紙税の納付が必要ありません。電子契約では紙代、印刷代、郵送代、保管代などの削減だけでなく、印紙税のコスト削減も大きなメリットです。


■電子契約のメリット




では最後に、電子契約のメリットをまとめておきましょう。

●契約業務の効率化

電子契約は、インターネット上で契約が進みます。時間や場所の制約を受けず郵送などの手間もかからないため、契約のリードタイムを短縮することができます。またデータが電子化されているので、承認行為なども社内のネットワークで進めることができ、より効率的に契約業務を進めることができます。

●働き方改革への対応

書面契約のように印刷や袋とじ、押印といった作業が必要ないので、このためにわざわざ出社する必要がありません。立会人型電子署名であれば、コストもあまりかからずに契約書以外の書類にも使いやすいので、テレワークでの運用に最適です。

●コスト削減

電子契約は紙代、印刷代、印紙代、郵送代、保管代など、物理的なコストの削減につながります。また業務効率の向上による人件費コスト削減にも大きな効果があります。

●安全性

電子署名と電子証明書による真正性の確保、タイムスタンプによる完全性確保など、電子契約は高い安全性を誇っています。

●セキュリティ

電子契約システムには不正アクセスを防止するファイアーウォールや、通信の暗号化などのセキュリティが保たれています。
ユーザーがシステムを利用する際にも、ログイン制限やアクセス権限を設定することで、より安全に利用することが可能です。


■まとめ


さまざまなメリットを持つ電子契約は、すでに多くの企業で取引先との業務委託契約書や秘密保持契約書などの締結に用いられています。郵送費などのコストや契約書の送付から締結までの時間を削減できるなど、大企業だけでなく中小企業やフリーランスにも向いている契約方式といえるでしょう。

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契約大臣電子署名



<参考サイト>
電子契約とは
https://www.gmosign.com/about/

電子署名とは?わかりやすく解説します。
https://www.wanbishi.co.jp/blog/what-is-digital-signature.html

電子契約導入のポイント
https://digitalstorage.jp/e-contract/certificate/

【電子契約とは?】書面契約との違いやメリット、証拠力について
https://www.gmosign.com/media/electronic-contract/post-0023/

電子署名及び認証業務に関する法律
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=412AC0000000102

医療情報システムの安全管理に関するガイドライン
https://www.mhlw.go.jp/shingi/2008/12/dl/s1219-6b_0003.pdf


※本記事の内容は2021年9月時点の情報を基に執筆し、2023年7月に更新されています。

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