【インボイス制度】2023年10月から変わる消費税の計算・支払いなど対応方法を解説

更新: 2022-07-07 18:59

申請を受け付けているインボイス制度。消費税の計算方法が変わると聞いて、気になっている方も多いと思います。インボイス制度が適用された消費税の計算法と納付額の算出、請求書の対応について解説します。

  • 目次

インボイス制度がスタートすると、消費税の計算方法などが変わるケースがあります。

なかには、消費税の計算方法などが変わることへの対応が必要となる事業者の方もいるでしょう。

この記事では、インボイス制度開始を前に、消費税の計算方法などに関連する情報を細かくご紹介します。

この機会にインボイス制度について知識を深め、制度が始まる前に必要な対策を講じておきましょう。


そもそもインボイス制度とは?

2023年10月にスタートするインボイス制度は、請求書や領収書などの交付や保存に関する制度です。


インボイス制度が導入される理由

現在、消費税率は10%のものと軽減税率に該当する8%のものが混在していることから、各取引においての消費税率と消費税額を正確に把握するためにインボイス制度が導入されます。

どの商品に対して、どの税率でどれだけの消費税がかかっているのかを把握するために、それらの情報を記載したインボイス(適格請求書)が発行・保存されることになるのです。

これにより、不正やミスを防ぎ正確なデータを残すことができます。


また、インボイス制度を適用して仕入税額控除を受けるためには、売手から商品の税率を知らせてもらう必要が出てきます。

今まで税率がわかりにくくミスが起こりやすかった仕入税額控除の金額も、これにより正確に算出できるようになります。

 


インボイス制度の対象事業者は?

インボイス制度の対象となるのは、基準期間(一般的には2年前)の売上が1,000万円超の事業者または売上は1,000万円以下であるが自ら消費税の納税を選択している事業者です。

これに該当する事業者は、インボイス制度への対応をする必要があります。

基準期間の売上が1,000万円以下である等、上記に該当しない事業者については、インボイス制度の対象外です。

ただし、免税事業者の売上先が課税事業者の場合、インボイス制度への対応を求められる可能性があります。

このケースについては、後ほど詳しく解説します。



インボイス制度による影響は?

インボイス制度の導入により、実際にどのような影響が出てくるのでしょうか。

請求書や領収書等の税率計算と項目追加

インボイス制度がスタートしたら、請求書や領収書などに追加しなければならない項目があります。

税率ごとに商品の合計金額を算出し記載する項目と、消費税額を記載する項目です。

また、適格請求書発行事業者の登録番号を記載する必要も出てきます。

ただし、インボイスの様式に定めはないため、現在利用している請求書などのフォーマットに項目を追加するのみの対応で問題ありません。

これと合わせて、現在利用している会計システムがインボイス制度に対応しているか確認しておくといいでしょう。

 


フリーランスや個人事業主への影響(免税事業者の場合)

課税事業者が仕入税額控除を利用する場合には、仕入れ先などの売手からインボイスを交付してもらう必要があります。

インボイスを交付できるのは、適格請求書発行事業者の登録をしている事業者のみです。

そのため、買手から適格請求書発行事業者への登録を依頼される可能性が考えられます。

2年前の売上が1,000万円以下で納税が免除されている免税事業者はインボイス制度の対象外ですが、必要に応じて登録することも可能です。

ただし、適格請求書発行事業者として登録すると、課税事業者になるため消費税の申告が必要になります。


免税事業者が適格請求書発行事業者に登録するのには、手間も時間もかかるうえに、消費税の納税による負担が増えてしまいます。

しかし、登録しなかった場合、取引先が仕入税額控除を受けられないという理由で、契約を打ち切られてしまう可能性が出てくるのです。

そうなると事業を続けること自体が危ぶまれてしまうケースも考えられるため、登録については取引先の状況などを踏まえたうえで慎重に検討してみましょう。

特に課税事業者と取引をしている場合は、適格請求書発行事業者への登録を依頼される可能性が高いことも視野に入れておくべきです。



消費税の計算方法はどう変わる?

消費税の計算方法について、詳しく見てみましょう。

消費税と仕入税額控除

まずは、消費税と仕入税額控除についてご紹介します。


消費税率について

消費税率の計算方法については、今まで通りです。

消費税率は、商品やサービスの品目により標準税率(10%)と軽減税率(8%)に分かれています。

飲食料品の提供は軽減税率の適用対象ですが、食事の提供やケータリングは対象外となるなど細かい規定があるので注意しましょう。

 

仕入税額控除

仕入税額控除では、下記の式で算出された金額のみが納付税額となります。


「商品やサービスを売り上げた際に受け取った消費税(売上税額)」-「その商品やサービスの原料などを仕入れる際に払った消費税(仕入税額)」=納付する消費税(納付税額)


たとえば、消費税10%分の2,000円が含まれた22,000円で商品を仕入れたとします。

この商品を、消費税10%分の2,500円が含まれる27,500円で販売しました。

このケースでは、下記の式が成り立ちます。


2,500円(売上税額)-2,000円(仕入税額)=500円(納付税額)


インボイス制度では、インボイスを交付しなければ仕入税額控除を受けられません。

控除を受けられない場合は2,500円をそのまま納付しなければならないことから、納付税額に大きな差が出てきます。



請求書・領収書等の消費税計算

請求書や領収書などは、1枚ずつの単位で消費税を計算します。

品目ごとに金額を記載するのは従来通りですが、標準税率(10%)対象と軽減税率(8%)対象のものに分けて記載する必要があります。

このとき、軽減税率対象のものに「※」印を付け、該当部分が「軽減税率対象」である旨を記載するという方法でも問題ありません。

それぞれの税率ごとに金額を合算したら、税率ごとに消費税を計算して記載。

これにより、消費税については2項目記載されることになります。

請求書や領収書のほか、売上先が作成する「仕入明細書」などもインボイスに該当します。

 



インボイス制度に対応するには

インボイス制度に対応するには、会計システムの導入や請求書などの項目追加などの対策が必要です。

インボイス制度に対応した会計システムの導入

インボイス制度に対応するためには、仕入税額控除に対応できるインボイス(適格請求書)を発行しなければなりません。

現在、請求書や領収書の発行に会計システムやソフトを利用している場合には、インボイス制度に対応できるかどうかを確認しておきましょう。

対応していれば、インボイス制度が始まってからも画面の説明に応じて操作していけば問題はないでしょう。

対応していない場合には、インボイス制度に対応した会計システムやソフトの導入を検討するのも1つの手です。


 

請求書や領収書の項目追加

会計システムやソフトを利用していない場合は、手動でインボイス制度に対応していく必要があります。

手書きやExcelなどで請求書や領収書を発行している事業者が、これに該当します。

現在使っている請求書や領収書のフォーマットに必要な項目を追加し、インボイスとして発行できる状態にしておきましょう。

追加すべき項目は、下記です。


  • 登録番号
  • 税率で分けた品目の合計金額と適用税率
  • 税率ごとの消費税額


フォーマットを1から作り直す必要はなく、上記3つの項目を追加していくだけで問題ありません。

品目が多くなるケースでは、請求書には合算金額のみを記載し別途で仕入明細書を発行する場合もあるでしょう。

このような場合は、仕入明細書に品目と税率の詳細を記載することも可能です。


条件に該当する一部の業種の取引では、簡易インボイスの交付も可能。

簡易インボイスの交付ができるのは、「不特定多数の者に対して販売などを行う一定の事業者」です。

小売業や飲食業、タクシー業、旅行業などが、これに該当します。

簡易インボイスの場合は、「書類の交付を受ける事業者の氏名または名称の記載」が必要ありません。

ただし、税率ごとに区分した消費税額または消費税率の記載は、一般的なインボイス同様必須です。

 


適格請求書等発行事業者への登録

税務署長に登録申請書を提出すると、適格請求書発行事業者として登録が可能です。

適格請求書等発行事業者への登録をしなければインボイス制度を適用できないので、利用予定の事業者は早めに手続きをしておきましょう。

登録は、e-Taxでも手続きすることができます。

また、郵送や税理士による代理申請も可能です。

個人事業主ならばスマートフォンからでも申請できます。


 

適格請求書等発行事業者へ登録するときの注意点

免税事業者が適格請求書等発行事業者へ登録すると、免税制度の適用がなくなる点に注意が必要です。

基準期間の売上が1,000万円以下ならば納税を免除される免税制度ですが、インボイス制度に登録をすると基準期間の売上が1,000万円以下でも消費税の申告が必要になります。

現在免税対象の事業者である場合は、登録するかどうか事前にしっかり検討しておきましょう。



電子インボイスとは

電子インボイスとは、インボイス(適格請求書)を電子化する仕組みのこと。

今までは、請求書を含む国税関係帳簿書類を、電子データで保存するのではなく紙に印刷して保存することが認められていました。

しかし2022年1月に施行された改正電子帳簿保存法により、紙に印刷して保存することは認められなくなり、電子データでの保存のみが認められるようになりました。

これを受け、電子データで発行または受領した請求書は電子データのまま保存しなければいけなくなりました。

2023年12月末までは紙に印刷した書類での保存が可能な猶予期間となっていますが、その後のことも考えると、早めに電子データで保存できる環境を整えておく必要があるでしょう。


電子帳簿保存法に則った保存を行うためには、要件を満たしたシステムなどを使って保存しなければならないこともポイントです。

たとえば、タイムスタンプが付与された後に取引情報の授受を行うなどして、真実性の要件を満たしているシステムでなければなりません。

また、保存した取引情報を運用しているシステムについて、仕様概要書と操作マニュアルが備わっていることなどの可視性の要件も満たす必要があります。

インボイス制度の導入とあわせて、電子帳簿保存法に則った保存ができるシステムを用意しておくといいでしょう。



インボイス保存不要の簡易課税制度とは?

簡易課税制度では、売上税額から差し引く仕入税額を「みなし仕入率」として計算できます。

みなし仕入率は、「一定の割合を仕入時に支払った消費税」として計算します。

消費税申告の際に仕入れや経費などの消費税額の実質計算が不要なことや、インボイスの保存が不要なことから、この制度を利用することで事務負担の軽減も可能です。

みなし仕入率は、事業の区分ごとに下記の通り決められています。


  • みなし仕入率:90% 第1種事業(卸売業)
  • みなし仕入率:80% 第2種事業(小売業、農業・林業・漁業(飲食料品の譲渡に係る事業に限る))
  • みなし仕入率:70% 第3種事業(農業・林業・漁業(飲食料品の譲渡に係る事業を除く)、鉱業、建設業、製造業、電気業、ガス業、熱供給業及び水道業)
  • みなし仕入率:60% 第4種事業(第1種事業、第2種事業、第3種事業、第5種事業及び第6種事業以外の事業)
  • みなし仕入率:50% 第5種事業(運輸通信業、金融業及び保険業、サービス業(飲食店業に該当するものを除く))
  • みなし仕入率:40% 第6種事業(不動産業)


・引用元:国税庁

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6505.htm


簡易課税制度は、「基準期間の売上が5,000万円以下」かつ「簡易課税制度の届出を提出済み」の事業者が対象です。



電子インボイスの保存(電子帳簿保存法の対応)にお悩みの方へ

インボイス制度の導入により、発行事業者としての登録や請求書などのフォーマット変更などの対策をする必要が出てきます。

また、電子インボイスの保存については、電子帳簿保存法に則ったシステムを利用する必要があることから、お悩みの方も少なくないでしょう。


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監修者

いまい税理士事務所 

税理士   今井 儀徳


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